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第4話 国民的女優が家にやって来た4

「とりあえず、座って話しませんか?」


 俺が椅子を引いて、さりげなく着席を促すと、        天音さんは、椅子にちょこんと座る。




「よかったら、お茶でもいかがですか?」




 俺の問いに天音さんは無言でこくりと頷く。




 俺は、お湯を沸かすために、バルミューダの湯沸かしポットに水を並々と注ぎ、ケツのボタンをかちりと押し入れた。


 お湯が沸くまでの間に、ティーカップと受け皿を用意しておく。




 そして、俺は、キッチンの真横にあるパントリーに向かった。


 パントリーには、お菓子やカッブラーメンなどの日持ちする食品が入っている。


 俺は、棚の一番上にあるとってのついた大きな箱を取り出す。


 箱の中には個包装されたたくさんのティーパックが入っている。


 その時の気分によって選んだお茶を飲むのが俺の食後のルーティーンだ。




「今日は、カモミールにしよう。」




 不安気味の天音さんにはリラックス作用のあるカモミールティーはピッタリだ。


 そうこうしているうちにぽこぽこと水が沸騰して始めるとカチッと音が鳴った。


 


 温めたカップに沸騰したての熱湯を注ぎ、ティーバッグを入れる。


 そして、お茶の旨みや香りを逃さないために受け皿を被せて1〜2分蒸らす。


 これ以上の時間蒸すと、エグ味が出るためこのくらいの時間がベストなのである。


 受け皿をとると、ハーブティーのいい匂いが立ち込めてきた。


 


「どうぞ。」




 俺は、カモミールティーの入ったティーカップを手渡した。




「……美味しい。」


 


 天音さんは、ほっと吐息を漏らす。


 どうやら、カモミールティーを飲んで少し落ち着いたみたいだ。


 これで、落ち着いて、話せるだろう。




「それで、俺に相談ってなんですか?」


 


 俺が天音さんの相談に乗れることなんてあるか?


 …少なくとも演技のことではないだろうが。




「実は今度、新しい映画で主演をやることになったんだけど。」


「凄いじゃないですか!おめでとうございます。」


「あ、ありがとう。それでね、その役が女性ボクサーの役で、そのために肉体改造をしているんだけど、そういう経験って今までなかったから、中々上手くいかなくて。」




 天音さんは、程よく肉付きがある丸みを帯びた女性らしい体つきで、女性なら誰でも憧れる素晴らしい体型だと思うが、確かにアスリートの体型には見えない。





「それで、ツカサちゃんにアドバイスを貰おうと思って今日来たんだ。」


「なるほど。」


 


 ツカサ姉はモデルを初めてから毎日のトレーニングと適切な食事管理を徹底することで体型を維持しているため、天音さんにも参考になると思う。




「ただ、清華の話を聞いてみたら、最近、ボクシングジムに毎日3時間通って鍛えてるみたいだしトレーニングは、十分していると思う。だとしたら考えられる理由は食事しか思い付かないから。…食事に関しては私より、拓人の方が詳しいでしょ。」




 確かに、ツカサ姉の食事の管理は全て俺がしているので、食事に関してのアドバイスは、俺の方が適任だろう。




「天音さん。とりあえず、昨日どんな食事をしたか教えてもらえませんか?」


「昼ご飯の写真だったらあるよ。昨日はドラマの撮影のクランクアップの日で共演者の俳優が差し入れしてくれたんだ。ほら、みて。」




 天音さんからスマホを受け取り、写真をみる。




「これは……。」


「銀座で有名な寿司屋の、人が握ってくれたの!凄くない!」


「へぇ〜。美味しそうですね。…それにしても凄い量ですねみんなで食べたんですか?」


「ううん。私一人で食べたよ。」




 写真には、たくさんの皿に盛り付けられた大漁寿司が写っていた。


 50貫は、あるんじゃないか、これ?


 それを、女性一人で食べるなんてかなりの胃袋だ。


 ていうか、銀座の寿司屋でこんなに食べて…一体いくらしたんだろ?


 


「お昼はこれだけですか?」


「いや?同じくらいの量2回おかわりしたけど……。」




 ……マジですか。半端ないです、天音さん。


 


「もしかして、毎食そのくらい食べるんですか?」


「うん、そうだけど?」


 


 俺は額に手をおき思わず、頭を抱えた。


 確かに、演技や毎日のボクシングトレーニングでで、かなりのカロリーを消費しているためある程度食べても問題ない…。


 むしろ、栄養バランス食べた方がいい。


 だが、それを差し引いてもこれは食べすぎだ。





「こんなに、食べてたら、痩せるもんも痩せませんよ!」


「だ、だよね……。私も気を付けようとは思っているんだけど、演技の後とか、運動した後だと疲れているのもあってつい、食べ過ぎちゃうんだよね。」


「…とりあえず、思い出せるだけ、最近食べた食事を書いてください!」


「わ、わかった。」




 俺は、近くにあったチラシとシャーペンを天音さんに渡すと、天音さんは、チラシの裏にきつらつらと書き始めた。


 天音さんが書き終えると、チラシを受け取り、内容を確認する。


 それを確認して俺は、愕然とした。


 ハンバーガー、唐揚げ、カツ丼、ラーメンなどの高カロリー飯がずらりと並ぶ。


 しかも、デザートもたくさん食べていて間食も多いし、その一回が普通の人に比べて食べる量が多い。


 野菜も多少は、食べているが他の食材に比べて全然足りていない。




「片寄りすぎです。脂質と炭水化物が多すぎる、逆にたんぱく質と、ビタミンは、全然足りてません。」


「拓人くん。どうすればいい?」


「うっ……。」




 天音さんは、おお小首を傾げて、こちらを見つめてくる。


 あまりにもひどい食生活だから、少し注意しようと思ったがそんな顔をされると、とてもじゃないが怒るに怒れない。




「と、とりあえず、カロリーと、量を計算したレシピを教えるので、それ見て、作ってください。」


「わ、わかった!」




 俺は、リビングにあるパソコンで、いつも見ている料理のサイトのレシピをダウンロードして、プリントアウトをする。


 そうしてプリントアウトした、レシピの束を天音さんに手渡す。


 それを見て、天音さんは、目をぱちくりさせる。




「…結構多いね。」


「とりあえず、これだけあれば、2週間なら食べ飽きることもないと思います。やっぱり、料理は、美味しくないと続きませんからね。」


「うん!これ、ありがとう!家に帰ったら早速やってみるよ。」


 


 天音さんは、鼻息を荒く意気込んだ。


 


「それじゃあ時間も遅いし、私、そろそろ帰るね。」


「見送りますよ。」




 玄関を開けると、辺りはすっかり薄暗くなっていた。




「拓人くん、ツカサちゃん今日は本当にありがとう。」


「私は、別になにもしてないよ。」




 ツカサ姉は、照れているのをごまかすため素っ気なけ対応する。


 相変わらず、素直じゃない。


 天音さんも分かっているのか口元に笑みを浮かべて、ツカサ姉を見つめている。




「天音さん頑張ってください!応援しています。」


「うん。頑張るね。」




 国民的女優が我が家に訪れると言うレアイベントは、こうして幕を閉じた。





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