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第27話 幼なじみとのデート

天音さんとのデートの次の日、俺ほ人力車で浅草観光をしていた。

 もちろん一人で人力車に乗るわけがない。

 俺の隣では、アンリが楽しそうに景色を眺めている。


「どうした?私になにかついてる?」


アンリは体を傾けて、俺の顔を覗いてくる。

白のTシャツに黒のスウェットに黒キャップと、スポーティな格好だ。


「いや、そうじゃなくて。風情がある街並みだなと思って…。」

「ねぇ。ここだけまるで、江戸時代みたい!」

「お二人さんデートですかい?」

「い、いや俺たちは…。」

「そう見えます?実はそうなんですよ。ねぇダーリン?」

「お、おいっ。」



 そう言ってアンリが俺の腕をグイッと寄せて抱きついてきてウリウリと、顔を押し付けてくる。

 こいつの性格を知らなければ、このシチュエーションにドキドキすると思うが、こいつの性格を知っていると、俺を揶揄っているとしか思えない。

 隣を見ると、アンリは照れてるでしょとでも言いたげな顔でこちらを見ていた。

 ほら見ろ。やっぱりそうだった。


「二人とも、人力車は初めてですかい?」

「はい。人力車に乗ったことなかったんですけどいいですね。色々なところ見られるし、ねぇ。拓人。」

「ああ、そうだな。」


なぜ俺とアンリが、人力車に乗っているのか?

話は、清華さんと遊んだ日まで遡る。


「た〜くと。今日、清華さんとデートしてきたでしょ。」


 家に帰ると突然、アンリに背後から話しかけられた。


「な、何のことだ。清華さんとデートなんてしてるわけないだろう。」

「おや〜。今朝まで天音さんだったのに呼び方が変わってるぞ?何かあったのかな?」


帰り道、天音さんって呼んだら、凄いしょげてたからほんのさっきまで清華さんって、呼んでたからつい。

よりにもよってアンリの前で口走るとは迂闊だった。


「ねぇ拓人、私ともデートしてよ?」

「は?」

アンリからのデートの誘いに、

「なによ?清華さんとはデートしたのに私とはデートできないの?」

「そもそも、あれはデートじゃ…。」


俺は必死に、言い訳を考えていたが、アンリは断らないよねとでも言いたげな顔で俺を逃さないように体を寄せてくる。

俺にアンリの誘いを断る気力はなく、今に至る。

決して、腕に当たった胸の感触に気を取られて空返事をしたわけじゃないからな。


それにしても、こいつは俺と清華さんが遊んだことをいつどこで知ったのか?

俺たち以外に知る人がいるわけないだろうし…。

…まさか、あの日俺たちのこと尾けてたんじゃないだろうな?

俺と清華さんが遊んでいるのが何故、バレたのか疑問に思っていると、人力車の速度が遅くなった。



「お二人さん。見てください。正面にあるのが雷門でさ。」


 人力車のお兄さんの声で視線を前に向けると、雷門と書かれた巨大な提灯を吊り上げた大きな赤い門が見える。

 門の左右には守り神の風神像と雷神像が猛々しく鎮座していた。

 


「おお〜。」

 すごい…。雷門の荘厳さに思わず感嘆の声が漏れる。

 雷門をくぐると、提灯の底に龍の

隣をみると時々、アンリも食い入るように眺めていた。

東京に住んでいると、なかなか観光地には、いかないものだが、改めて見てみるといいものだな。

そんなことを考えながら、雷門を抜けていく。

雷門を抜けると、一気に人が増えた。

ここ仲見世通りは、沢山のお土産屋があるため、お土産を買う人でとても混雑していた。

人混みの中をなんとかかき分けて仲見世通りを進んでいく。

すると、正面に浅草寺が見える。左には五重塔があり、こちらも観光客でにぎわっている。

浅草寺はご利益があるからな。お参りでもしておこう。



「それじゃあ、お二人さんデート楽しんで。」


 人力車のお兄さんに別れを告げて、俺たちは境内へと向かう。

宝蔵門の前で、一礼をし、参道にある手水舎で、手と口を洗い、常香炉で煙を体にかけるいつものお参りルーティンをこなした後、お参りをする人たちの列に並ぶ。


「拓人がこういうのに詳しいなんて知らなかった。」

「ツカサ姉が色々な仕事をするたび、願掛けをしてたら、自然と覚えたんだよ。」

「へぇ~。」


そうこうしているうちに、列はどんどん進み気づいたら自分たちの番になっていた。

お金を入れて、鈴を鳴らし、胸の前で手を合わせて願いを心の中で3回唱える。

一礼をして隣をみると、アンリが真剣な顔でお参りをしていた。

アンリがお参りを終えると、俺たちは列を後にした。


「拓人は、何をお願いしたの?」

「んー?清華さんの映画撮影が成功しますようにかな。そっちこそあんな真剣な顔して何願ってたんだよ?」

「私はひ・み・つ♡」

「なんだよそれ。俺は言ったんだぞ。アンリもおしえろよ」 

「だって、他の人に願いを話すと、叶わないってよく言うじゃない。だから、叶うまでは、ひみつなの。」 

 

 確かに、願い事は他の人に話すと、叶わなくなるって聞いたことがある。いつもお参りは、一人だったからそんなこと気にしたことなかった…。  


「すぐ戻るからちょっと待ってて。」 



 俺は、急いで寺に戻ってお参りをしてアンリのところへ戻る。


「ごめん。お待たせ。」

「どこ行ってたの?」

「いや、もう一回お参りしてこようと思って…。」

「えっ、なんで?」

「いや、他人に話すと願いが叶わないって言ってただろ。だから、願いの上書きしないとって思って。もちろん今度は内容は言わないぞ。」


俺がそう言うとアンリが突然吹き出した。


「あはは、バカじゃないの。」

「バカってなんだよ。そりゃあ、これで清華さんの映画がお参りでどうこうなるもんじゃないと思うんだけどさ。神頼みでも不安要素は取り除いてあげたいんだよ。」

「冗談よ。他人に話すと願い事叶わないっていうのはネットでの通説で実際にはそんなことないらしいから。拓人がどういう反応するのかなって思って言っただけだから。」

「お前なぁ……!」

 

アンリを怒鳴ろうとした時、俺のお腹がぐーっと鳴った。

そういえば、朝時間なくて食べてなかったな。

 

「…腹も減ったし、飯にするか?」 

「ふふっ。そうね。そうしましょうか。」


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