第25話 天音さんとのデート
放課後、俺は電車に乗って、横浜に、やってきた。
駅を出て数分後、赤レンガ倉庫に到着した。
写真はこの辺だったから、ここらへんにいるはずだけど…。
天音さんを探して赤レンガ倉庫周辺をぶらぶらしていると、三つ編みおさげの美少女がこちらに近づいてきた。
「お~い!拓人くん!」
三つ編みを揺らして、女優の天音清華が満面の笑顔で近づいてくる。
「すみません。おまたせしました。」
「大丈夫だよ。私も少し散歩してたところだったし。」
白のブラウスに、カーキ色のスカート。
黒のベレー帽に丸メガネを掛けていて、いつもと少し雰囲気が違う。
「その格好、もしかして変装ですか?」
「そうなの。マネージャーに行くなら変装していけって。これなら、地味で目立たないし、私ってバレないでしょ。」
確かに、天音さんには見えないし、色彩も落ち着いた色をしていて地味な格好といえばそうだが…。
地味な服装で隠していても伝わる圧倒的なビジュの良さ。すれ違うたびに男女とわず、振り返るほど、目立っている。
しかし、天音さんは一切気付いていない。だが、ドラマや映画で忙しい天音さんの折角の休みだ。楽しんでもらうためにも俺が気をつけて慎重に行動しなければならないと心に誓った。
「ほら、早く行こ!折角のデートの時間がなくなっちゃうよ。」
天音さんは俺の手をとって、歩き出す。
手…つないでる!?
突然、手を握られて、思わずドキッとする。
つないだ手の平から天音さんに伝わるのではないかってほどに鼓動が速い。
ていうか…。
「これってデートだったんですか!?」
「男女が二人で出かけるんだから、デートに決まってるでしょ。…あっ!もしかして、照れてるの?」
そう言って俺をからかう天音さんの手のひらは熱く、頬はリンゴのように赤かった。
てっきり、こういうの《デート》慣れてると思ってたけど、天音さんも緊張してたのか。
そんなことを考えながら、俺たちは赤レンガ倉庫へと、向かう。
赤レンガ倉庫の中に入ると、おしゃれな雑貨屋や古着屋が所狭しと並んでいた。
その中で、ファンタジーな雑貨がおいてある店が気になったので入ることにした。
店には、中世のような街並みに魚の形した飛行船の描かれた異世界のような不思議な絵が描かれているおしゃれなトートバッグ。
他にも、おしゃれなデザインの栞やキーケースなどが置いてある。
「このトートバックかわいい!…どう?似合うかな?」
天音さんはトートバッグを肩にかけて、クルッと一周回って上目遣いでこちらを見てくる。
「もちろん!とっても可愛いですよ。」
「そう?それじゃあ、これ買って来るね。」
天音さんは、トートバックを肩に掛けたまま、レジへと向かった。
買い物を終えて、天音さんが駆け足で戻ってきた。
「お待たせ。それじゃあ、次行こっか。」
その後、古着屋や、雑貨屋など、色々な店を回り、色々なものを買い歩いた。
たくさん歩いて疲れたので、少し休憩しようということになり、俺と天音さんは、カフェに入った。
「いやー。いっぱい買ったね。」
「はい…。つい、買いすぎちゃいました。」
最初は、天音さんの付き添いだけで特に何を買うつもりもなかったのに、おしゃれなガラスのグラスや、皮のエプロンなど、料理関係のものでいいものがたくさんあって、つい買ってしまった。
「けど、久しぶりに、いっぱい買い物して楽しかったー!」
「そうですね。」
次の料理の時に今日買ったもの使うの楽しみだし、結果的には買ってよかったかもしれない。
「んー何にしようか。」
メニューを開くと、メニューには、紅茶や、コーヒー、チャイラテ、ほうじ茶ラテなどのオシャレな飲み物やケーキやドーナツなどのスイーツやホットドックやハッシュドビーフなどの軽食など、幅広い種類のものがのっていて、何を頼もうか悩んでしまう。
…帰ったら夕ご飯の時間だし、今ここで何か食べたら、食べられなくなりそうだから飲み物だけにしよう。
「俺は、何を頼むかもう決めましたけど、天音さんはもう決めましたか?」
「ねぇ、拓人くん。これ食べてもいい?」
そう言って天音さんはこちらにメニューを見せてくる。天音さんが指差したメニューには、キャラメルソースにバニラアイス、生クリームを添えたワッフルが写っている。
全く、この食欲大魔神は…。
自分が、肉体改造しなければいけないの忘れたのか。
このワッフルなんて、一個で、700キロカロリー超えるんだぞ。
「夕食なしでも良ければ、食べてもいいですよ。」
「えーっ!どっちもはダメ?」
「ダメです。」
「わかった。我慢する…。」
天音さんの肉体改造のために突き放したが、俯いてしょげてる天音さんに屈してつい、頼んでもいいよと言いそうになった。
なんとかそこをグッと堪えて、俺は「そうしてください。」と言った後、俺は店員を呼んで、飲み物を注文した。




