表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/29

第20話 料理撮影

 まずは、薄力粉、ベーキングパウダー、コーンスターチをふるい器に入れて、粉が完全に混ざるまで振るう。


 パンケーキでは色々なレシピで小麦粉がよく使われているが、俺はコーンスターチをよく使う。


 コーンスターチを使ったほうが、固くなりすぎずフワッと焼けて弾力も出て美味しくなるからな。




 粉を満遍なく混ぜ終えたら、続けて卵を卵黄と卵白に分ける。


 卵黄の方には、牛乳とさっき混ぜ合わせた粉を滑らかになってトロッとするまでしっかり混ぜ合わせる。


 卵白の方には砂糖を入れて、レモン汁を入れたら腕を限界までぶん回して高速で泡立ててふわっふわっのメレンゲを作る。


 ちょっとやそっとの振動じゃ動かないくらいの固さにが目安になる。


 メレンゲをヘラで少量すくったら、卵黄クリームに入れてしっかり混ぜる。


 こうして卵黄クリームとメレンゲの固さを揃えておいて2つのクリームが混ざりやすくする。


 2つのクリームを混ぜ合わせたものをふわっとした状態が崩れないようにそーっと絞り袋に入れる。




 ここまで来たら後は焼くだけ。


 サラダ油を入れたフライパンを温めたら、一度粗熱を取り、冷ました後でフライパンを弱火で熱しながら高さが出るように絞り袋に入れたクリームを絞り出す。


 少量の水を入れて蓋をして弱火で両面蒸し焼きにする。


 生地はどんどん平らに自然に広がっていくのでフワフワの生地が台無しにならないように、生地を押さえつけないように気をつける。


 後は生地が綺麗な狐色に色づいたら出来上がりだ。




 スフレパンケーキに冷蔵庫に入っていたフルーツで作った、特製のフルーツソースを仕上げに添えて、皿に盛る。


 ドラマで使うからな、盛り付けも綺麗にしないと。


 見栄えのいいように、ミントでも添えておこう。


 冷蔵庫にあったミントを添えたら…。




「これで完成と…。」




 うーむ。このパンケーキ。これは、過去一の出来栄えではないだろうか。俺が自分で作った料理を自画自賛していると、カチンコの音がスタジオに響いた。




「ハイ!オッケー!」




 監督の大声に思わず、俺の肩は、ビクンと跳ねる。


 振り返り周りを見ると、カメラがこちらを捉えていた。料理に集中していて気が付かなかったが、どうやら俺が調理している所を撮影していたみたいだ。




「拓人くん素晴らしい調理の手際だね。料理シーンのいい参考になったよ。」


「あ、ありがとうございます。」




「いやーそれにしても凄く美味しそうだ。見た目もいいし、何よりカメラ越しでも分かるほどの生地のフワフワ感。とっても美味しそうだ。このスイーツなら、主人公の調理技術に説得力が持たせられる。本当にありがとう。」




 監督は俺の手をガッチリ掴み、両腕をぶんぶん激しく振った。その勢いに俺の身体が上下に揺れる。


 天音さんも右腕をこちらに向かって突き出し、Vサインをしている。


 どうやら、みなさんの期待には、応えられたみたいだ。


 緊張から解放されて、身体の力が抜けたのか俺はその場にしゃがみ込んだ。全身ほっと一息ついていると、こちらにつかつかと近づいてきた天音さんが耳元でささやいた。




「ねー!拓人くん。これ食べてもいい?」


「いや!これこの後の撮影で使うし、食べないでくださいよ!」


「えー?駄目なの?こんなに美味しそうなものが目の前にあるのに?」


「我慢してください。家に帰ったら作るので我慢してください。」


「うーっ!わかった…。我慢する。」




 折角、これ以上ないほど完璧なスフレパンケーキが出来たんだ。正直、これほどのパンケーキは、もう一回作れと言われても作れそうにない。なんとか、阻止しないと。




「それ、食べてもいいよ。」


「は!?」


「いいの!?」


「ああ。撮影が何時間も経てば流石に生地も萎むだろうし、ソースかけるシーンも撮らないといけないから。どちらにしても別のスフレパンケーキ使って撮影するから。」


「やったー!いっただきま〜すっ!」




 結局、まだ何回か作らないといけないのね。


 がっくりと肩を落としている俺の隣で天音さんが満面の笑みで、パンケーキを頬張っていた。




「んーっ!美味しっ。」




 …美味しかったなら何よりです。




 その後、順調に撮影は進行していった。その間、何度か作ったが、どれも形が崩れる事なくふわふわなスフレパンケーキに仕上がったのでよかった。


 この撮影の間、何回も集中して調理したことにより、常に最初に作ったスフレパンケーキのと同じくらいの水準で作れるようになった。


 始める前より、調理スピードが格段に上がり、手際が段違いに良くなった。


 今まで調理が難しかった食材も扱えそうだし、天音さんのダイエットメニューにもいかせるだろう。


 そう思えば、この緊張感のある中での調理も、悪くないのではないかと思えてくるから不思議だ。


 まあ、とはいえカメラに囲まれての撮影は二度と御免被りたい所だな。


 こうして、ちょっとしたトラブルはあったが、撮影は、無事予定通り撮り終わった。撮影後、スタッフの方たちのリクエストで俺は皆にスフレパンケーキを振る舞った。


 出演者の方の差し入れで紅茶を持ってきたおかげで、ちょっとしたアフタヌーンティーみたいになり、撮影は和やかに終わった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ