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第2話 国民的女優が家にやって来た 2

 俺は、幻覚を疑い何度も目を擦り続ける。


 しかし、濡れた髪をタオルで拭く天音清華彼女の姿は消えない。


 


 天音清華は誰でも知っている超有名人だ。




 ー天音清華、艶のある長い黒髪にスラリとした手足、ハーフのような大きな瞳で1万年に一人の美少女と呼ばれている。


 


 昨年の大賀ドラマ、本能寺の変では、主人公織田信長の妻、濃姫の怪演で話題になり、瞬く間に日本を代表する国民的女優になった。




 その、天音清華がなぜうちにいるんだ。


 


「な、なに、すんだよ。ツカサ姉。」


「拓人。いつまで見てる気だ?ん?」


「見るって何を?」




 いきなり顔を鷲掴みにされたので、なにごとかと思い、視線を落とすと、天音さんのシャツが透けている。


 そして、その向こう側には真っ白いレースの装飾されたブラジャーとそれに包まれた膨らみが微かに見えた。




「ー白だ。」


「……んっ!」 


「たーくとー。」


「やべっ」




 俺が、無意識に声を漏らすと、天音清華は、顔を赤く、わなわなとさせながら、タオルで体を隠し、ツカサ姉の背中に隠れた。




「このエロガキがぁ!!!」




 ゴンっ!




 顔面に衝撃が走った。


 ツカサ姉の突き出した拳が見事顔にヒットし、俺は宙をまった。




「グハッ」


「たく……。清華ごめんね。うちの弟が……。」


「ううん。大丈夫。」


「濡れた服のまんまじゃ風邪引くかもしれないし、私の部屋に来て。服貸してあげる。」


「……ありがとう。」


「拓人!私の部屋に近づくなよ。もし、着替え覗いたら、あんたを殺すから。」




 そんなこと言われなくても、ツカサ姉の部屋を覗くなんて自殺行為するわけない。




「なんか言った?」


「いえ、なんでもないです。」




 ツカサ姉がぎろりと音がしそうなほどに俺を睨み付けてきた。その整った顔ゆえ、ただでさえ鋭い目にさらに力が込められているため思わず、たじろいでしまう。




「それと、今日は清華も夕飯食べて行くから。特別メニュー二人分ちゃんと用意しなさいよ。」


「……ラジャー。」




 ツカサ姉は倒れる俺にそうつげて、天音清華とともに部屋に行った。


 


 仕方ない。料理するか。


 


 我が家は現在、父さんが海外に出張中、母さんはそれについていったため家にいるのは俺とツカサ姉の二人きりで、家事は二人で分担していて、料理は俺の担当である。


 料理は得意ではなかったが、ツカサ姉はモデルをやっているので体型維持や美しさが必要なため、カロリーや栄養についてかなり細かく、厳しかったのでお陰でかなり、鍛えられた。




 ちなみに今から作る特別メニューとはツカサ姉が撮影で体型を整えるときに作るダイエットメニューのことだ。


 そんなことを考えながら、冷蔵庫を開く。




「エノキと舞茸が結構余っているな。」




 今日は、キノコを使ったスープを作るか。


 まずは、キノコを一口サイズにほぐし、玉ねぎとにんにくをみじん切りにする。


 そして、オリーブオイルとみじん切りしたニンニクを鍋に入れて弱めの中火にする。


 ニンニクの香りがしてきたら中火にして、みじん切りにした玉ねぎを炒める。


 玉ねぎが半透明になったら、キノコ類を全て入れてフタをして2〜3分蒸し煮にする。


 そして、トマト缶を入れて強めの中火で5分間煮込む。


 最後に豆乳とコンソメ顆粒をいれて沸騰直前まで火をつける。


 味見をして、味を少し整える。




「うん。美味しい。」




 料理も完成間近になると、二階までスープの匂いがしたのか、部屋着をきたツカサ姉と、天音清華が降りてきた。 




「……まだできないの?」


「できたよ。あとは盛り付けるだけ。」


「早くしなさいよ。」


「わかってるって。」




 


 スープを盛り付けたら黒コショウ、パセリを乗せ、最後にオリーブオイルをかけたら完成だ。


 盛り付けたスープを、テーブルまで運んでいく。




「どうぞ。今日のダイエットメニューは、キノコたっぷり豆乳トマトスープです。」


「……スープのカロリーは?」


「カロリーはスープ一杯で85キロカロリーでかなり抑えてるけど、キノコたっぷり入れたから満足感はかなりあると思う。」


「……ふーん。」




 ツカサ姉にスープを出すと、スプーンで一口啜る。


 今回のスープはかなり自信作だ。


 これなら、毎回「いつも通りね」って言う一回もツカサ姉も美味しいと言ってくれるはず……。




「いつも通りね。」




 …やっぱりか。


 なんとなく予想はついていたが、今回のスープはかなりの自信作だったからもしかしたらいけるんじゃないかと思っていただけにかなりショックだ。


 


「……いい匂い。美味しそう。」




 ガックリと肩を落としていると、隣から、可憐な声が聞こえた。


 振り向くと、目を輝かせながら料理をみている天音清華がいた。


 抑揚のある弾むような声で、口元が、微かにきらめている。


 料理を見つめるその姿は、さながら夕飯がカレーと聞いた時のわくわくした小学生のようだ。




「天音さんもどうぞ召し上がりください。」


「!?…うん。」


 


 俺は持っていた料理を置く。


 しかし、いくら経っても天音さんは、料理を見つめたまま、動かない。 




「もしかして、嫌いな食べ物でもありましたか?もしよかったら別の料理作りますよ。」




「あ、いや、そうじゃなくて、……むしろ大好物です。」


 


 天音さんは、ブンブンと、首を横に降り必死に否定している。


 


「そうですか!よかったら、冷めないうちに食べてください。スープは、暖かい方が美味しいですからね。」


「えっと、それじゃあ…いただきます。」


 


 そう言って天音清華は、スプーンに並々となったスープを口に運んだ。

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