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第15話 ツカサ姉の仕事

スタジオに着いて、タクシーを降りると時間が押していたためすぐに、撮影が始まった。




「TUKASAちゃん!決まってるネ!いいねぇー。ンービューティフォー!」




 何パターンもの服を着替えながらカメラマンのかけ声に合わせて、次々とポーズを決めていく。




「凄いな。」




 表情や仕草で服の良さを完璧に引き出しているのが素人の俺でもわかる。




「TUKASAさんカッコいいですよね。」


「ほんと、惹き込まれますよね。」




 数多くのモデルを見てきたであろう百戦錬磨のスタッフはたちさえ色めき立っている。


 モデルをやっているときのツカサ姉は本当に華がある。ルックスもさることながら周りを惹きつけるオーラを纏っている。


 ほんと、血の繋がった姉弟とは思えない。




「おつかれ。いやーTUKASAちゃん良かったよ。」


「ありがとうございました。」




 撮影が終わり、俺たちはすぐに次の現場に向かった。


 次の現場は、来シーズンに放送予定の学園ドラマの撮影である。


 タクシーを30分くらい走らせて、都内某所にある撮影スタジオへと向かう。


 到着して中に入り、エレベーターに乗る。


 エレベーターから降りるとドラマのスタッフが迎えに来てくれた。


 スタッフに案内されて控室に向かう。




「すみません。前の撮影が押して、セットの準備にもう少し時間がかかりそうで…。時間になりましたら、およびいたしますので、少々お待ちください。」


「わかりました。」




 部屋の前でスタッフと別れて、俺たちは控室に入った。




「つかれた~。」




 控室に入ると、ツカサ姉は、ソファーに泥のように寝転んだ。


 無理もない。3時間も撮影しっぱなしだったからな。




「次の入り時間まで余裕あるみたいだし…。少し休んだら。」


「ん。そうする。」


「なんか、必要なものある?」


「キンキンに冷えた飲み物。できれば炭酸水で。」




 確か、建物の一階にコンビニがあったはず。


 俺は、楽屋を出て、コンビニに向かった。




 ◇




 一階で降りて、エレベーターから真っ直ぐ進みエントランスを横切ったところにある、某7のコンビニのなかに入る。


 店内に入り、入り口のかごを手に取り、飲み物のコーナーに真っ直ぐ向かう。


 炭酸水を手に取りかごに入れる。




「朝から、撮影で何も食べてないからお腹すいてるだろうし、なんか買っておくか。」




 サラダとおにぎりを数種類かごに入れてレジに並んでいると…。


 入り口の方から俺を名前を呼ぶ声が聞こえる。


 振り返ると、驚いた表情でこっちを指差している美少女がいた。


「拓人くん!?」




 天音さんが丈の長いチェックのスカートをなびかせてこちらに近づいてくる。


 白シャツに、栗色のニットブレザー。首元に青色の大きなリボンをつけていて、落ちついた感じの制服である。私立のお嬢様学校に通っている女子校生という感じで品があるように感じる。


 …でも、確か今日は朝から仕事だったはず。


 なぜ制服を着ているのだろうか?




「天音さんがどうしてここに?」


「こっちのセリフだよ。拓人くんこそどうしてここに?」


「ツカサ姉のマネージャーの代わりにドラマの撮影の付き添いで来たんだ。」


「ほんと?私も同じ現場なんだっ!」  


「もしかして、その制服ドラマで着るやつですか?」


「そうなの。可愛いでしょ?どう?似合うかな?」


「ええ。とても似合ってますよ。」





 感想を述べると、天音さんはふいっと顔を反らした。何かをつぶやいているみたいだが、よく聞こえない。




「…そうだ!よかったら一緒に行かない?」


「もちろん。いいですよ。」


「それじゃあ、待ってるね。」




 前が空いたのでレジで会計を済ませ、店を出て店の前で待っていた天音さんと合流する。




「お待たせしました。それじゃあ、行きましょうか。」




 横並びでエレベーターに向かい、歩き始める。


 


 「…天音さんがなんか近い。」




 近すぎて、手と手がかすかに触れあっている。


 女の子の手って柔らかいんだ。


 何てことを思いながら、エレベーターのボタンを押す。


 すると、天音さんがニヤニヤと緩んだ顔でこっちを見てくる。




「な、なんですか?」


「撮影スタジオで拓人くんに会うなんて、なんか変な感じだね。」


「…確かに。家じゃない場所で会うのは違和感がありますね。」


「でしょー!」




 他愛のない会話をしながら、エレベーターを待っていると、視界の端からスーツの女性が近づいてくるのが見える。




「清華。ここにいたの。探したわよ。」


「ごめんね!マネージャー。友達がいたから挨拶してたの。」


「友達?この子が?」





 この人が天音さんのマネージャー。


 端正な顔立ちでスーツが良く似合っていて、いかにも仕事ができそうな感じのキャリアウーマンだ。


 …それにしても初めて会ったのになんか睨まれてないか俺?




 「そう!拓人くんはね。私の大切な友達なの。」




「…そうですか。はじめまして。天音清華のマネージャーをしています田中です。宜しくお願いします。」


 


 鋭い眼光が飛んできて、がっちりと握られた手はみしみしと音が鳴っている。


 田中さんとは初めて会ったが、よく思われてないのは間違いない…。


 俺なんかしたっけ?


 


 なんてことを思っていると、エレベーターが到着した。




「清華、時間がないわ。急ぎましょう。」


「そうねっ。ほらっ!拓人くんも、早くいこう?」


「あ、ああ。」


「………」




 田中さんは、一緒に乗ってほしくないみたいだけど。俺もツカサ姉のところに早く戻らないといけないし仕方ない。


 俺は、田中さんの視線から目をそらしながら、エレベーターに乗った。


 エレベーターに乗っている間、田中さんからの視線が痛い。一秒でも速く、この空間から逃げ出したい。


 …早くつかないかな。











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