第13話 教室の騒ぎ
「来週は小テストをやるので皆さん。今日やった範囲復習しておくように。それと…新庄は今日やったプリントを全員分集めて職員室に持ってくるように。いいね。」
「……はい。」
授業が終わり、先生が教室を出ると、教室は一気に賑やかになる。
「これは、完全に目つけられたなぁ。」
教室が賑やかな中、俺はブルーな気分でいっぱいだった。
ペダルをぶん回して家から全速力で自転車をかっ飛ばしたが結局遅刻してしまったためだ。
しかもよりにもよって学年一厳しい先生の授業で。
おかげで、罰として、プリント回収をして先生に提出しなければならないし、届けに行ったら説教されるのも間違いないだろう。
俺は、ため息を着きながら、クラスメイトのプリントを回収していく。
「よお、社長。随分遅いご登場で。」
「俺でも、遅刻常習犯の俺でもサトセンの授業だけは、必ず授業開始前に席にいるのに。拓人は勇者だね~。」
「うるせえ。いいからお前ら、早くプリントよこせよ。」
遅刻して先生に怒られたここぞとばかりにいじってくる卓球部と野球部を軽くあしらい、手に持っているプリントをぶんどる。
「そんなに怒んなよ。そんで、何で遅刻したの?」
「寝坊だよ。」
「へぇ〜。お前が寝坊で遅刻なんて珍しいな。」
「昨日、姉の友達が来てたんだ。それで、夜遅くまで、起きてたんだよ。」
「姉ちゃんがいたのか!?なんで紹介してくれないんだよ。」
「それで、拓人のお姉さんってどんな人なんだ?美人なのか!?」
「いや、どんなって言われてもな…。」
実は俺の姉はモデルのTUKASAだって言っても、虚言癖だと思われて相手にされないのは間違いないし、俺としてもめんどくさいことになるので言うつもりもない。
ただ、それ以外で、ツカサ姉のことを他の人に説明するのは難しいので、俺は、思わず考え込んでしまう。
「……うーん。そうだな。顔は別に普通だと思うけど、一言で言えば傍若無人なやつだな。」
「傍若無人?」
「そう!俺に対して、あれやれ、これやれって。まるで自分の道具か何か見たいに命令してきやがる。俺は、あんたの召使いじゃないっての。」
「へぇー。私のことそんな風に思っていたんだ?」
「は?」
ここにはいないはずの人の声が聞こえてくる。
いやいやまさか、そんなはずはない幻聴だ。
そう思ったが、嫌な予感がしたので、声の聞こえた方にそおっと顔を向ける。
すると、眉間に顔に怒りマークを浮かべながらツカサ姉が腕を組んで仁王立ちしていた。
「ツカサ姉!?」
なぜここにツカサ姉がいるのか、俺が困惑していると、突然、教室から歓声が上がる。
「おい!あれってモデルのツカサじゃね!!」
「嘘!!本物!?」
「うちのガッコーの制服着てるんだけど。同じ学校だったの!?」
「はぅ、生ツカサ様、マジで尊すぎ!」
突然教室に現れたツカサ姉に阿鼻叫喚のクラスメイトたち。しかも、悲鳴で他のクラスからもゾロゾロと人が集まってくる。卓球部のやつなんて、驚きすぎて、灰になっている。
「ツカサ姉。なんで、俺のクラスに来たの?仕事は?」
状況を整理するためにツカサ姉に質問するも、ツカサ姉から返事はない。
そして、わけがわからないまま首根っこを捕まれ、引っ張られ、連れて行かれそうになる。
「ちょっと!?これからまだ授業あるんだけど!!」
「担任の先生には、もう許可もらったから。いいから着いてきなさい。」
「はぁ!?」
助けを求めて、卓球部と野球部に目線で合図を送るも、TUKASAと一体どういう関係なんだという目線だけが帰ってくるだけである。
「俺たちは友達じゃなかったのか。この薄情者ども!」
俺は、クラスメイトの顔を見て、後々の説明がめんどくさいことになるだろうなと憂鬱になりながら、教室を後にした。