過ぎゆく夏の日
なんか・・・。
9月のある日。
憧れの妄想選手権県大会決勝戦。
俺は額の汗を拭い、あいつのサインを見る。
違うと首を振る 。
わかってるだろう。
俺が投げたいのは本気のアレだ。
だからわかってるだろうって。
もう10回目のサイン、俺は縦に首を振らない。
俺を信じろ。
そうだ それでいい。
俺はこくりと頷くと、大きく振りかぶって全力のソレを投げた。
「ぶーん」
俺の右手に握りしめられてるのはト◯カのパトカー。
そしてあいつは・・・・。
「しょうぼうしゃだとう!」
あいつはにやりと笑い、憎いあんちきしょう(消防車)を出してきやがった。
俺は走りながら、あいつの◯ミカ立体駐車場へと近づく。
(このままでは終われない)
俺は U ターンしてマウンド(おもちゃ箱)へと戻る。
こいつに賭ける。
両手に握りしめた 俺の必殺の一撃。
それはボーイング707。
「びゅーん」
俺はあいつの元へ向かう。
ニヤリ、まさか、それはっ!
「すっ、スペースシャトルっ!」
さすが決勝戦だ。
そう来なくっちゃ。
俺は直前に立ち止まり、再びマウンドへと戻った。
こんなに俺をアツくさせるライバルははじめてだ。
俺はマウンドからとっておきのやつを取り出した。
「これでもくらえっ!びゅーん!」
俺はトミ◯の図鑑を抱きしめ突撃する。
あいつはそんなもんかと首を振る。
(まさか・・・)
アン◯ンマンの絵本だとう!
トー◯ス、トーマ◯はどうした?
一足飛びか。
くそっ!
くそっ!
俺はCOOのアップル味で喉を潤し、落ち着きを取り戻す。
「ならばこれでどうだ!あにきの・・・」
俺はドラ◯もんのコミックスを突き出し駆ける。
「これでおれのかち・・・・」
凉しい顔のあいつがだしたのは鬼◯の刃だとう。
怖くて一度も読んだことがない。
あの禁書を・・・ヤツは読んだというのか。
この年で、あの恐怖に打ち勝つなど狂気の沙汰ではない。
俺は◯ラえもんコミックスで目を隠して、表紙を見ないようにして安全地帯へと戻った。
ちきしょう、とんでもない化け物にでくわしたものだ。
(だが・・・・)
「まだ、おわっとらんよ」
俺は数日前、お兄ちゃんから譲って貰ったRX78初代ガン◯ム(ガンプラ)を最終兵器としては投下した。
「◯ンダムいきまーす」
(なんだ・・・と)
あいつのリュックから出されたものは、
「ジークア◯スっ!」
あの深夜の時間帯に放映されていた初見殺しかつ、オールドガノタが偉そうにウンチクを述べる率80%、おこちゃまは置いてけぼりのエブァンダム・・・もう、潔く負けを認め・・・まだ、まだ、舞えるっ!
俺は冷蔵庫へと猛ダッシュし、扉を開けると禁忌の飲み物を取り出した。
「あいふぃーるこーくっ!」
シュワシュワの喉イガイガ、ちょっと大人な飲み物でどうだ!これなら勝てる。
「なん・・・だと」
あいつの手には、翼を授けるあの魔法水。
「・・・レッドブル」
俺は力なく跪く。
圧倒的敗北感。
エナドリはないだろ。
絶対領域に足を踏み入れやがって。
夜寝られなくなるから、飲んじゃ駄目って言われなかったのか。
ギンギンになるからイケナイって。
どこがギンギンになるのだろう。
ま、いっか。
・・・思えば。
どうして野球ごっこからこうなった。
そっと差し出される手。
はにかむあいつは、
「ノーサイドだ」
その手を繫いだ。
挫折。
はじめて知った9月のある暑い夏の日。
これが4歳児のゾーン(世界)に入った遊びである(嘘)。
こうして妄想選手権大会は幕を閉じた。
俺の苦い記憶の思い出を残して・・・。
こんなの書いちゃった(笑)。




