聖水カレー【WEB】
聖水カレー
ついにこの時がやって来てしまった……。
と、言っても何の事だかは分からないでしょうね。
皆様方には……。
これは、わたしと父との闘いなのです。
父は究極のカレーを追い求め、試行錯誤と閃きアウトプットカレーを、毎日毎日御先祖様が残してくれた、莫大なのだろうか分からないけれど、わたしの小さな頃から毎日毎日新作試行錯誤閃きアウトプットカレーを、いや……よく考えてみると? 大量に作られるカレーの残りのアレンジメニューが続いていたような気もするな? 壱皿にするのに、数年またぎの手間のかかるカレーもあったような? でも、なんらかの父のカレーと云う名の資産を食べ続けてきた? 喰い潰してきたわたしである。
そして、掛かり付けの見た目も風貌も、診療所の建物さえも怪しすぎる評判通りのガチ薮医者、父の幼馴染み親友だと言い張ってるらしいけど、父は腐れ縁だと宣うに、余命数年と言われた父は言い放ったのだった!
何を? となるでしょうね。
わかる、わかる、分かりますよ! 勿論ですとも。
へっへんですとも。
何を言い放ったかですよね。
そんなの勿の論、カレーの事に決まってるじゃないですか?
それもわしのおいもとめて来た、終着点に辿り着いた等とね。
生涯、残り弍皿だあ!
どっちを選ぶといわれたのだった。
わたしはふと……終着点に辿り着いたのであれば、残りの順番は決まっているのではと?
尋ねると父は、何時もならばオチャラケおばふたつみっつ等を咬まして、呆れるくらいのテンドンを繰り返すはずなのであるが……あるのだが……父は何の悪びる様子もなく神のみぞ知ると、あの濁りまくっていた瞳は何処までも真っ直ぐに澄みわたり、わたしを静かに見つめている。
本当に到達したかの様な、静かな佇まいでありました。
さあ、どっちだ。
ついに、この時がきてしまった……ごくり。
これって、説明とか聞いてもいいよね?
お前の直感を信じろ!
だよね……。
んん~……。
この聖水って、どこかの神聖な水とか汲みにいくんだよね?
ノーコメントだ! お前の直感を信じろ!
まだ、こっちの方が軽めそうだよな。
よし!
聖水カレーで!
成る程、天はそう示されるのか。
よし! 収集にいくぞ!
父は封印していた納屋の鍵を、斧の刃じゃ無い方でぶっ壊し。
えっ? これいつの間に作ってたのよ?
ホコリだらけのブルーシートを、ふたりで咳き込みながら外し息を合わせて綺麗に畳んだのち。
さあ! 某宇宙関連機関お墨付きの黄金號に乗り込むんだ。
聖水収集にいくぞ!
聖水ってなによ?
何って御小水だろ? そんなの世界の常識だぞ!
そんな常識知らないわよ。御小水でカレー作るってこと? 嫌よ!
この金色號は某宇宙関連お墨付きといっただろ。御小水を聖水へと昇華させられるんだぞ!
さあいくぞ! 聖水溢れる街へと!
半年後、わたしの前に運ばれて来た、父の慢心の笑顔とその壱皿があった。
勿論、御飯も聖水で炊かれている。聖水カレーの横に置かれた聖水もキンキンに冷えている。
いただきま~す。