第二話 これが僕たちの波乱万丈な友情の始まりなんだな
エンディングが始まった。
今回の作品はびっくりするぐらい面白くなかった。
地底人と宇宙人の白熱するようなバトルものかと思いきや、どちらが多くの人参を育てられるかというわけのわからない争いをしていた。
海は今すぐにでもこの不快な気持ちを誰かにぶつけたかった。
「ものすごくつまらなかったわね」
「え?」
「だから、この映画ものすごくつまらなかったわねって言ったの。地底人と宇宙人の白熱するようなバトルものを見られるかと期待していたのに、なによ、『どちらが人参を多く育てられるかー』なんて、ばかばかしいにもほどがあるわ」
彼女はすごく不満げに言った。
「そうですよね!?題名詐欺にもほどがあると思います。特に、終盤の宇宙人側が人参コピー機を使って人参増産しすぎて惑星が人参まみれになるとか、わけがわからないですよ!」
急に話しかけられたのもびっくりしたが、自分と同じような感性を持っていることに驚きを隠せなかった。
海は興奮のあまり、自分が思ったことを彼女にぶつけてしまった。
「私も、同じこと思った!さすがに設定とかが雑すぎる」
「そうそう!」
こんな風に映画について語り合える相手がいるのはうれしかった。
「でも、ひとつだけほめれるとしたら、、、」
「「CGのクオリティー!!」」
二人の息はぴったりだった。
そこからしばらく今日見た映画について語り合った。
B級映画について語り合える相手が少なかった海にとってこの時間はとても有意義なものであった。
エンディングロールが終わりルーム内が一気に明るくなった。
ここで初めて彼女の顔が見えた。
美人だ
海は一言そう思った。
少し中性的な顔であるが、にじみ出るオーラが海の心を激しく揺さぶった。
それだけじゃない。
海は彼女のことを知っていたのだ。
「平手川さん?」
「私のこと知ってくれてるの?もしかして私のファン?」
彼女は微笑みながら言った。
そう。
彼女は今の映画業界をかける売れっ子女優なのだ。
映画をよく見る海は知っていて当然であった。
そんな彼女がこんなとこにいるだけでなく、B級映画を見る趣味があったなんて海は驚きを隠せなかった。
しばらく海は茫然としていたがすぐに我に戻った。
「なんで、こんなところに、、、?」
それは単純な疑問だった。
もっと他に聞くべきことがあったはずなのに、急な出会いに困惑している海の脳は考えることができなくなっていた。
「なんでって、私女優だもの。勉強しに来てるの。いつもは別のところに行ってるんだけど、熱狂的なファンの方にばれちゃってね」
彼女はよく笑う人だった。
ファンサービスのつもりなのかもしれないが彼女は微笑みかけながら話した。
そんな彼女の微笑みは海の心魅了するのに時間はかからなかった。
「でも、ここももうだめかー。」
「え?」
「だって君、私のファンでしょ?ふつうはファンにばれないようにしないといけないのにばれちゃったから。」
「いやいやいやいや!誤解してると思うので行っときますが俺は別にファンでも何でもないですって!」
海は必死だった。
ファンではないことは嘘ではない。
つい5分前ぐらいまでは、、、
「そうなの?それはそれで悲しいな、、、」
「あ、いや、そういうわけではなくて、、、」
「ふふふ、冗談よ」
(からかわれた、、、)
「でもどちらにしろここにはもうこれない。」
彼女が言いたいことはわかってる。
週刊誌やマスコミにばれるとろくなことがないからだ。
「あの!」
「ん?」
「俺、マスコミとか週刊誌とかほかの人に誰にも言いませんから、また来てください!こんな風に映画について語り合えたの久々でうれしかったんです。」
彼女は一瞬戸惑った顔をしたすぐにいつも通りの表情に戻った。
「ありがとう。じゃあ、また来ようかな」
まさか承諾されるとは思ってなかったので海は驚きとうれしさが混在した。
こういうことは言ってみるものだな。
「正直新しい映画館探すの面倒だったからそうしてくれるとありがたいわ。誰にも言わないって約束。二人だけの秘密ね」
「はい!」
海は食い気味に答えた。
絶対に約束を破らないという誓いの意味も込めて。
「じゃあ、私もういかないと。じゃあね、えーと、、、」
「海。乙川海です」
「じゃあね、海君。約束守ってね」
そういうと彼女はシアタールームを後にした。
扉のきしむ音が響き渡る。
(あ、連絡先聞いとけばよかった、、、)
海はまだ間に合うと思い彼女のあとを追いかけたが、扉を開けた先には彼女の姿はもう見えなかった。
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