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殺人命令書  作者: YJ
5/40

5 松岡 勝

 「もしもし、松岡だけど、最近の情報は?」


 「えーっとね……、政治家と新人女優の不倫かな……。決定的な写真が欲しいのだけど……」


 電話の相手は、とある週刊誌の編集者、池田(いけだ)。歳は三十前といったところか、詳しい事には興味はない。この前、会った頃は痩せていて、顔は面長。背が高く、髪は特徴的な天然パーマで、なんだかマッチ棒を連想させた。どこにでも居そうな顔立ちで、少し声が高い。俺がスキャンダル写真を撮るようになってから関係するようになり、高値で写真を買ってくれる商売相手だ。


 「行動傾向は?」


 「不規則だが……、週末に高級料亭へ行き、その後にホテルへ行く感じかな……。時間差で店に入るから……。どちらにせよ……、一緒にいるところを撮るのは難しい」


 池田は時折、歯切れの悪い話し方をする。そんな電話の声はいつも通りだった。


 「政治家を徹底マークするとして、政治家の名前は?」

 

 「松岡(まつおか) (まさる)……。最近注目されるようになった政治家なんだが……、知ってるか?」


 「ああ……。知っている」


 松岡勝は俺の親父だ。家族のことを省みずに政治の世界に全てを捧げた男。日本を改善するのは二の次で、第一には政治の裏側に隠れる汚れた金を手にすることに力を注いでいた。自分の私利私欲に生きる男。俺は良く知っている。


 俺は翌日から政治家が通いそうな料亭を徹底的に調べ上げた。店に聞いたところでプライバシーのこともあり、教えてくれないために、骨が折れる作業になっている。だが、松岡の普段の行動パターンは把握しつつあった。俺は、松岡に張り付き、その日が来るのを待った。


 一旦、家へ戻ると机の上に無造作に置かれた手紙が目に入った。『家族の命は保障できません』と書かれた手紙が届いてから十日ほど経っていたが、俺の周りは何の変化もない。知らないだけなのかもしれないのだが、何かあれば姉から電話が掛かってくるだろうと、軽い気持ちでいた。


 数日後のことだ。松岡の尾行を続けていると、料亭にて変化があった。料亭に松岡が入ったあと、後を追うようにして、タクシーで現れた若い女性が入亭していった。その姿を見るや否や、俺はカメラを取り出して数回シャッターを切った。


 「一緒にいるところを撮らないと意味が無いな……」


 一見さんお断りのこの料亭に、俺は入ることはできない。外から中の様子を覗けるポイントを幾つか見つけておいたのだったが、そのいずれにも松岡の姿はなかった。


 結局、ここでは一緒にいるところの写真を撮ることができなかった。




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