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殺人命令書  作者: YJ
36/40

36 接触

 夜が明けていた。あっという間だったのか、むしろ長い夜を過ごしたのか。そんなことはどうでも良くなっていた。十二時過ぎに家へ戻り、ソファに腰掛けた。色々な事を考えていた。親父の事、母親の事、姉の事、奈保さんの事、そして愛子のこと。タバコに火を点けて白い煙を目で追った。ゆらゆらと白い煙は上へ上がり消えていく。時間はゆっくりとか、もしくは素早くか、気付けば六時間の時間が流れていた。徹夜の疲れはなかったと思っていたが、体を横にしたとたんに、まぶたが重くなり眠ってしまった。次に目を開けたのはその三時間後の九時だった。奈保さんの所へ行こう。きっと何かを知る事が出来るだろう。眠気眼のまま洗面所に千鳥足で行き、水道の蛇口をひねった。水に触れると思いのほか冷たかったが、思い切って顔に持っていった。しかし期待を裏切り、冷たい水が眠気を殺してくれることはなかった。俺は服を着替える事もせずにそのままの格好で外へ出た。大山家までは最寄りの駅から二駅、そこから歩いて自分のアパートからは一時間ほどの道のり。ふらふらとした足取りで向かった。道中の記憶はあまり残っていなかった。まだ眠っているような感覚があり、人々の話し声もあまり耳には入ってこなかった。不思議なほど体が軽く、まるで何かに誘導され引っ張られているようだった。気付けば俺の目に『大山』の表札が目に入った。すっと右手が動き、呼び出しベルを押す。ドアの向こうで女性の声が聞こえ、ドアが開かれた。


 「はい。どちら様……」


 四十台ぐらいの女性が顔を覗かせた。どことなく目線に落ち着きがなく戸惑いを思わせたが、すぐに俺の目を見つめてきた。俺はその目を見つめ返した。綺麗な人だ。きっとこの人が奈保さんだろう。その目、鼻、口、骨格、顔立ちは愛子を感じる事が出来る。愛子が歳を重ねるとこんな感じになるんじゃないかと思う。それと同時に奈保さんも俺の顔を見て、親父の顔を重ねたのかもしれなかった。


 「あなた、もしかして…… 隆君でしょ」


 おどけた感じの明るい声だった。俺は、はいと答えた。すると奈保さんは俺の右手を引っ張って、さあ入ってと中へ誘導した。俺は戸惑いながらも、ばたばたと靴を脱ぎ捨てて奈保さんの案内について行き、客間に通された。室内は簡素なもので、膝の高さのテーブルを囲むようにソファが三方向から配置されていた。残る一方向の先には大きめのテレビが置いてある。俺は奈保さんに促されるままにソファに腰掛けた。



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