表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
殺人命令書  作者: YJ
32/40

32 消失

 「奈保さんも同じような事を言うてたみたいや。若い女が背中を刺して逃げていったと。ただ証拠がありまへんわ。真奈さんのことにしてもそうですわ。駅のホームにも同様に何台かの監視カメラがあんねん。そこに映っとるのは、大勢の人の中からピョイと電車に飛び込む若い女性の姿だけや。彼女を押してはるような人は解析の結果おらんのや。逃げる人影もありまへん。偶然見つけたのは京子さんの姿や。彼女は見てはった。娘さんが飛び込むのを少し離れた位置で見てはったん。せやから、京子さんは犯人ではありまへん。現状証拠からは真奈さんは自殺したとしか思えまへん。当然、奈保さんの『若い女性が彼女を押した』なんていうのも信憑性に欠けるものや」


 「犯人は最初からいないと?」


 親父の問いかけに刑事は苦い表情で肯いた。


 「一応、事件は解決ですわ」


 俺も親父も訝しい表情で刑事を見た。なにも解決などしていない。気持ち悪いどろどろとした物が心を染められていくような気分だった。


 「これで、捜査は打ち切りですか?」


 「大方、そんなようなもんですわ」


 沈んだ声で刑事はそう言った。彼もまた事件の後味の悪さを感じている風情だった。


 「補足としてよろしいですか。隆君の家の事で」


 マルボが俺の顔を見てそう言ったので、どうぞと俺は答えた。


 「松岡京子さんと池田一(いけだかず)()という記者は繋がりを持っています。今日の昼間に京子さんと池田さんが隆君の家へ行っています。池田がドアを破り、写真を探していたようですね。でも彼は持って行ってはいないようです。『写真がない。ない。松岡と写っている写真がない』なんてことを言っておりましたので、松岡さんと何かが写っていた写真が欲しかったのでしょう。その後にすぐ部屋を出て行ったようです」


 「なんでそんなことがわかるんですか」


 俺はマルボの顔を見返した。マルボの口元が緩み、薄く笑った。


 「半年前から隆君の部屋に私が盗聴器を仕掛けてあります。一応、隆君の部屋にあった写真を全て持ってきました。確認していただけますか」


 俺は驚いた表情のままマルボから渡される写真に目を通していった。そこには、あるはずのものが写っていなかった。 



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ