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殺人命令書  作者: YJ
13/40

13 南京錠

 一時間ほど車を走らせると、自宅へ到着した。お世辞にも綺麗とは言えないアパートの階段を上り、愛子を部屋へ招き入れた。


 「しばらくの間は、ここに居れば安全だから」


 「はい!」


 愛子の純真な明るい返事に、俺は呆気に取られてしまった。これだから女ってのは訳が分らない。さっきは俯いていたと思ったら、すぐ明るい表情を見せる。


 「わたし、もう眠いから寝るね」


 つくづく驚かされる。初対面の男の家へ上がって、すぐ寝ようとするとは。掴み所がない。本当に俺のことを救世主だと思っているのだろうか。俺は驚きを隠して、平常に答えた。


 「そのベッド使っていいよ」


 その夜、俺は愛子にベッドを譲り、これからどうするべきかを考え始めた。ソファに深くもたれると、タバコに火を点けて吹かし始めた。時間が静かに流れているように感じた。置時計の秒針がカチッカチッと時を刻み、その音が時折、耳についた。時刻は二時を回っていた。これからどうしようか、思考した。平常を保とうとして、またタバコに手を伸ばした。タバコを吸っては、灰皿で揉み消し、またタバコに火をつける。何日も片付けてない灰皿がいっぱいになり、吸殻が山になっていた。ここで愛子を殺してしまおうか。ベッドに近づいて愛子を覗き込むと、その愛らしい寝顔が、愛おしく思えていた。


 深夜三時、俺は、ある考えを胸に秘めて、家を出ることにした。ベッドで眠りについている愛子の寝顔を尻目に、俺は家を出た。これから愛子殺害のための道具を購入するためだ。殺害と言っても本当に殺すわけではない。犯人に死んだと思わせるだけだ。これから愛子を軟禁する。内側からドアを開けられなくするための簡単な南京錠でもあればいい。俺は車に乗り込むと、街へ車を走らせた。


 買い物は、ものの三十分ほどで戻ってこられた。南京錠にロープ、そしてナイフを購入した。事件にでもなって調べられたら、すぐに足が付きそうな三点セットだが実際に使うのは南京錠だけであってほしいと俺は願う。部屋へ戻り、愛子の姿を確認すると、早速、南京錠を取り付けた。ドアの内側と外側、天井付近に二つ取り付けた。外に目を向けると、空は、うっすらと明るくなり始めていた。日が昇ろうとしている空を感じながら、その夜は内側の南京錠に鍵を掛けて、俺はソファで眠りについた。



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