六踏目『猫かぶり踏んじゃったら、猫とナルがとんでったですわ』
「一体、どういうつもりだ?!」
私の目の前には顔を真っ赤にさせながら怒っているナルシス王子。
「イビリ―はお前の為に色々尽くしてくれたのだぞ!」
普段は私の顔を見もせず鏡ばかり見ているのに今日はしっかりと睨みつけていらっしゃいます。
「それをお前は、裏切りのような真似を!」
……王子、では、あなたの横にいる女性は一体どなたかしら?
「きゃー! 流石王子~! 素敵です~! 流石! かっこいい! 流石!」
王子の隣で、紅茶色のふわりとした髪を二つ結びにした女性は、大声で王子を褒め倒します。
彼女は、ブリッコニー様と仰られ、私や王子の通う学園の同級生ですわ。
「よいか、ブリッコニー。不出来なフミの為に一生懸命指導してくれていたイビリ―を罠に嵌めて恥をかかせたのだ!」
「知らなかった~! それを突き止めた王子、流石です!」
褒め倒すブリッコニー様。
そして、王子は罠に嵌めたなどという見当違いな事を言い出しますわ。
まあ、恥をかかせてしまったのは私ですが。偶然ですが。スッキリしましたが。
「お前のような黒髪の田舎娘に常識を教えてくれたのにも関わらずだ!」
「すご~い!」
とん。
また、黒髪の、田舎、娘と……。
あと、教えてくれてねーですし、あと、仮にも婚約者がいながら、女性を連れているのは、常識知らずだろがですわ。
それと、ブリッコニー、語彙力ねーなですわ。
「お前には、罰を与えねばならんな! そうだ! 追放だ! お前を国外追放にしてやろう!」
「センスある~!」
どん。
いや、センスねーよですわ。普通だろがですわ。あと、ブリッコニーお前ちょっと黙れですわ。
「お前だけでは足りないな! あのメイド共もつけてやろう! そうだ! お前の家族も全員追放してくれよう!」
「そうなんですか~!?」
どんんんん!
私の、大切な人たちも……?
「「は?」」
どん!!!
「ま、待て……フミ、お前、地面が……」
「さ、さっきの振動ってフミ、さんが……? あの、床にヒビが入っているんですが」
びきい!
「「ひいいいい!」」
悲鳴うるっせえですわ。それより言うことあるでしょう? ふん!
どん! どん! どん!
「み、見えないんだが……振り下ろしているんだろう足が……」
「振動と音しか……あれ、足で出しているんですか……あ、風も……!」
ぶわあああ!
「「ふー……! ふー……!」」
何をそんなにビビっているんですわ? ただの地団駄ですわ? ふんが!
どおおん! どおおん! どおおん!
「む、昔見た魔物がな……あんな音出してた。スノーホワイト王国にいた地竜が出してた音に似てるなあ……」
「スノウドラゴンですわね……確か、S級モンスターの……連合軍でなんとか撤退させたという……」
ばきばきばき。
「「へ、へへへへ」」
何を気持ち悪い引き攣り笑顔を浮かべているんですの? い、や、です……わ!!!!! ふんぬ!!
どおおおおおおおおおおおん!!!!
「……目が! 目があああああああ! 砂で目がああああああああ!」
「せ、世界の終わりだくそが!」
どがああああああああん!
「ほげえええええええええええええ!」
ふんぬうううううううううううううう!!!!
「もういやだあああああああ!」
「そうだなああくそおおおおお!」
二人が色々な液体をまき散らしながら落ちていきます。
下は備蓄庫だったのかしら。
粉が詰まっている袋に突っ込んでいましたわ。
よかったですわね。顔が真っ白で醜さが消えましたわ。
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