全ての記憶
全ての記憶
私の前世の名前は山瀬鈴蘭。最後の記憶は、高校の体育祭が終わって帰っていているもの。恐らく、事故にあって死んだのだろう。よりによってあの忙しい時に!前世の自分についついイラついてしまう。顔に出ていたようで眉間に皺を寄せて目付きが悪くなる。
「な、なんだその目つきは!なにか文句でもあるのか!」
なんですって?ここまでしておいて文句がないとでもお思いで?
「それはこちらのセリフですわ!なんですか先程からベラベラと!こちらは身に覚えがないと言っているでしょう!だいたい、そちらの女性、ロゼッタ様とおっしゃいましたか?その格好はなんですの?非常識にも程がありますわ!」
自分の名前が呼ばれると思ってなかったのか、急に叫んだ私が怖かったのか、ロゼッタ様はビクリと肩を震わせた。
「王太子様も王太子様ですわ!なぜ私という婚約者がありながら浮気をするのでしょうね。本当にあなたという人は……」
「な、なんだ」
「呆れるほど残念な方ですね」
その瞬間、会場が笑いの渦に飲まれた。
「くそっ。お前ら、自分の立場がわかっていないようだな。全員国外追放にしてやる!」
「自分の立場がわかっていないのはお前の方だ、ザグロス。私のいない所で何をしているのだ」
「ち、父上」
王室専用の扉から会場に入ってきたのは豪華な服に身を包んだ王陛下と王妃様。お二人の後ろには宰相である父と護衛の兵が2人。
「ウルクに呼ばれて来てみれば。何を勝手にアーリア嬢を国外追放にしておるのだ。なんという恥よ」
「なぜ恥なのですか!私はただ愛するロゼッタを守った!この女の罪を断罪していたのです!」
「それがいけないと言っておるのだ。何度言えばわかる」
「ですが父上、私は……!」
王座でザグロスと陛下が喧嘩をしている。両方共に頭に血が上っているようで周りの目も気にしていない。なんてこと隣国の方々もいらっしゃって居られるというのに。
「いい加減に……しなさい!!」
気づいた時には叫んでいた。周りの人々は目を見開いている。王座にいる人達も、動きを止め、愕然としていた。
やってしまった……。まぁでも今更よね。こうなったら全部吐き出してやりましょう。
「さっきから見ていればなんなのです、この状況は!?ここには私共の婚約パーティーのために隣国からお越しになっている方もいらっしゃるのですよ?それをぶち壊したザグロス様もザグロス様ですが、火に油を注ぐ陛下も陛下です!この国の王で在らせられるあなたがさらに問題を大きくしてどうなさるのですか!」
「そ、それは……」
「もういいですわ。やっと決心出来ました。私はこの国から出ていきます。では、私はこれで失礼致しますわ」
ふわりとドレスの裾を翻す。シャンデリアの光がドレスに散りばめられた細かい宝石に反射し、キラキラと幻想的に光る。折角お父様がこの日の為にと用意してくださったのに。勿体ないわ……
「お待ちなさい」
読んでくださりありがとうございます!ぼちぼち書いてますので次話投稿時もよろしくお願い致しますm(*_ _)m