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学校の怪談の怪談  作者: 白陽麗聞
2/2

後編

「次って、何だっけ…?」

「3番目は今回の調査の一番の目玉でもあるトイレの花子さんだよ。」

「ふむ、言わずと知れた学校の怪談の代名詞だな。」

トイレの花子さん、全国各地に存在する学校の怪談の中でも誰もが聞いたことあるであろう有名な話だ。

女子トイレの右から3番目の個室にノックをして「花子さん、遊びましょ」と言う、すると誰も居ないはずの個室から「はぁ~い…」と聞こえ勝手に扉が開いてトイレの中に引きずり込まれるといった流れの話だ。


「着きました、ここですよね噂のトイレは。」

島村くんが指を指し僕らに問いかけた。


「うん、さてどう調査しようか…?」

「どう調査するって? やり方はだいたいみんな聞いたことあるだろう、それやれば良いのではないのか?」

「安藤先輩! そういう問題じゃ無いんですよ!」

先輩のデリカシーの無い発言に対して朱里が一喝入れた、朱里が言うのも分かるそれはいくら調査であっても中学男子が女子トイレに入るって言うのはなんかこっ恥ずかしいというか異性的に罪悪感が沸くというものだ、それをこの熱血単細胞先輩と来たら…。


「…でも羽島、そんなこと言っても実際調べるとしたら北島だけになってしまうよ…? さすがに一人で行かせるのも可哀想じゃないの…?」

「そ、それは仕方ないとしても…! 朱里…? お願いできる……?」

「やっ! やぁーよ!! 一人で行くなんて! なんでこんな怖いところに一人で行かなきゃいけないのよ!?」

あれ、好奇心旺盛な朱里が珍しく嫌がっている…、まぁ僕も夜の明かりもないトイレになんて一人で入るのなんてごめんだけどね…(笑)


「う~む、このままではらちがあかない。 北島ここは妥協して皆で入ろう! それぞれ思う事はあるだろうが我々は遊びに来ているわけではない! あくまで調査! その事を肝に命じ進もうではないか!!」

安藤先輩…! なんかかっこいいこと行ってるけど要は話進まず面倒くさいからとっとと入って調査して終わらせようって事ですよね? 僕的にもこのまま長引くのは御免だったのでまとめてくれてありがとうございます…。


安藤先輩の説得もあり僕ら新聞部一同と島村くんは噂の女子トイレにやっと入ることになった。

「さて…、早速始めますか。」

「なんだか緊張しますね…、もしこれで本当に花子さんが来たら皆さんどうします?」

「なんだ、島村くん怖いのか? 安心したまえ我々は確かにこの学校の怪談の調査ともう一つ、怪談とは所詮我々人間の口から出た根も葉も無いただの噂話だったと証明するための調査でもあるのだよ!」

やっぱり安藤先輩は所々漢らしくかっこいい、僕は今目の前に向かっているこのトイレの右から3番目の個室の扉に正直緊張と不安が募っていたが今の先輩の言葉を聞いたらなんだか不思議と勇気が沸いてきた。


「じゃ、みんな行くよ…!」

全員が揃ってコクりと縦に首を振る。


ー コンッ コンッ コンッ… ー

「はぁ~なこさん、遊びましょ~。」


………………。


「何も起こらないな。」

やり方は間違ってはいないはず、何も変化がなく安藤先輩が呆れたような口調でそう告げるがその言葉に僕は思わず安堵の笑みを浮かべてしまった。


「ねっ、ね~歩そろそろ良いんじゃない次に行っても…。」

朱里が不安そうに僕の表情を覗き込むように言ってきた。

「それもそうだな、先輩次の調査にでも行きましょうか。」

「分かった、確か次は…、」

「次は校庭を走る二宮金次郎像ですよね!」

島村くんが無邪気な子供の目を輝かせる様な眼差しでこちらに問いかけた。


「ん? 島村くんやけに張り切っているではないか、実はこういう怪談物が好きなのかね?」

「じっ、実はそうなんですよねぇ~。」

「とりあえず校庭に向かおうよ…。」

朱里の様子が何やら変だ、まるでこの場所から一刻も早く逃げ出したいかのように僕らに移動うの催促を促した。


「うむ、何も無いと分かった以上ここに長居する必要も無いだろう! では次にっ…」

「 はぁ~い………。 」


!!!

「…お、おいっ今の悪ふざけは誰だよ…、羽島…」

「しっ、知らないよ! 朱里お前怖がっているくせに変な冗談はやめろよっ、」

「私じゃなぁい!!!」


僕らはこの女子トイレを後にしようとしたまさにそのタイミングで聞こえた得たいの知れない声の持ち主に一瞬で錯乱状態に陥ってしまった。


「案ずるな!! ひとまず校内に我々以外の不審人物が入り込んだ可能性がある! 慌てず校内から速やかに出るぞ!!」

「……あっ…あれっ…なっ、何なんですか先輩っ!!」

冷静に今の状況が危険だと判断し、僕らの安全を優先的に考え行動しようとする安藤先輩の声かけとは裏腹に島村くんが涙目になりながらトイレの方に指を指した。


ー ギィィィィィ… ー

するとなぜかトイレの扉がひとりでに開きだしそこからなにかが黒い人影のようなものが出てきた。


「花子さんだぁぁぁぁ!!!」

いつもは生気を感じさせずどこかクールな鈴木が滅多に見たこと無い形相と大きな声を上げ一目散に逃げ出した。


俺と島村くんは何が起こっているのか分からずその場でただじっと見ていて、朱里は恐怖のあまり腰が抜けたのかそのまま後ろに尻餅をついて倒れて立てない状況だった。


「皆っ!! 案ずるな!! 今は冷静にここから立ち去るんだ!!!」

こんな状況でもさすが安藤先輩! 今でこそ、その熱い漢気が少なくとも俺の意識を取り戻せた瞬間だった。


「先輩っ!」

「羽島ッ! 今は北島を連れて過ぎに避難するんだ! 島村くんもしっかりするんだ突っ立ていないでっ!」

「「はいっ!」」

俺は恐怖のあまり動けなくなった朱里を必死に立たせて女子トイレから逃げ出した。


「はぁ、はぁはっ!」

女子トイレから決死の思いで逃げ出した俺たちはなんとか玄関口まで逃げてこれた。入ってきた体育館の入り口はあそこから少しばかり距離があり裏から回って校門まで向かうには遠回りという事もあり学校玄関の鍵を開けそこからまっすぐに外に出た方が早いと判断した安藤先輩が俺たちを率いて外からの脱出を図った。


「よしっ! 開いたぞ! ここから直ぐに出るんだっ!!」

そうして外に出た俺たち、これでこの恐怖から逃れられる…その時だった。


ーざっ、ざっざっざっ!!ー

!?何かが俺たちに向かって進んでくるっ!!?


「先輩っ…あっ、あれ!」

島村くんが俺たちに知らせる時には気づいていた、俺たちに向かってきていたものは七不思議4番目の校庭を走る二宮金次郎像だ!!


「うわぁぁぁあぁぁー!! 噂は本当だったんだぁぁぁぁ!!」

混乱する島村くん、その声に改めて気づかされた俺たちの好奇心から生まれた絶望感

二宮金次郎像は俺たちに向かってまっすぐ走ってきていた、よく見ると二宮金次郎像は元々あった穏やかな表情をしておらず、怒りを纏った鬼の形相でこちらに向かってきていた。

これは絶対に遭遇してはいけないやつだ俺の本能がそう判断した。


「何かまずい気がする急いで回り込んで校門まで向かうぞ!!」

時同じく安藤先輩が今起きている危機的状況を察し俺たちに呼び掛けた。


俺は未だに体制が整っていない朱里を抱え安蔵先輩を筆頭に校舎に沿って回り込むような感じで入り口まで向かった。

くっ、思った以上に金次郎像の走るスピードが早い!このままでは追い着かれてしまう!!


朱里を抱えている分俺の走るスピードは他の二人に比べて遅かった。このままでは追い着かれてしまう!

そんな焦りから思わず俺は体勢を崩してしまい転んでしまった。


ーもうダメだ…ー

諦めていた、あんな形相の追っ手に追い着かれた時点で終わりだと察した、その時だった。


ーざっ!ー

「羽島ぁ! 北島を連れて早く逃げろっ!!!」

安藤先輩が俺らの壁となり身を呈して守ってくれた。


「先輩っ!!!!!」

俺のどうしようもない絶望的な状況に道を切り開いてくれた先輩に対して瞳は熱く込み上がった涙が溢れだした。


「うあぁぁぁぁぁぁあああぁぁぁあ!!!!!!!!」

やがて金次郎像は安藤先輩と接触し校庭には先輩のこの世とも思えない断末魔が響き渡った。


先輩の犠牲を無駄にするわけにはいかない俺たちはその場から一旦身を退くことにした。


校庭の金次郎像に恐れ考える余裕がなかった俺たちはあろうことか再び校内に戻ってしまっていた。

「あっ、あの…先輩方これからどうするんですか?」

焦ってここまで走り抜いた疲労感と今後自分達に何が起こるのか一寸先も予想のつかないこの状況に島村くんから不安としか言わないような口調でこちらに問いかけてきた。


「そんなことあたしが知りたいわよぉ…なんなのよぉこれ…先輩っ…」

「とにかく今は先輩が踏ん張った分、俺らがちゃんと生きてここから出ることが今の俺たちに出きることなんじゃないのか?」

島村くんの不安な気持ちも分かる、朱里の恐怖心も分かるだけどここで俺も心が砕けたらそれこそこの状況を打開する術はない。

やるしかないんだ…、そう何度も自分に言い聞かせるように心の中で呟いた。


ーぴーん ぽーん ぱーん ぽーんー

!?


「おいっ!羽島!聞こえているか!? 俺だ!! 今放送室にいる、聞こえてたらこっちまで来れるか!?」

この声は鈴木!! そういえばあいつトイレの時我先にと、逃亡しててすっかり忘れてしまっていた…それより無事だったのは何よりだ!!


「おい、今の放送聞いたか? 鈴木だ! 鈴木のやつ無事だったんだ!! 向かいに行こう!」

ここにいても何も起きるわけではない、そう説得を交えつつ俺は朱里と島村くんを放送室へと誘導した。


今俺たちがいる地点から放送室はちょうど同じ一階にあるので2分足らずで比較的早くたどり着くことができた。


ー ガラッ ー


「鈴木ぃ! 着いたぞ! 無事だったんだな!!」


ー シーン… ー

ん? 様子がおかしいぞ…返事がない…?


「おい…、鈴木?」

その時だった


ー ぴーん ぽーん ぱーん ぽーん ー


!?


「そっ、そんな今誰も機材になんて触って…あっ!!?」

俺はなんて間抜けなのだろう、ほんの少しの希望に目が眩み今自分が踏み込んでしまった危機的状態に気づくのがあまりにも遅すぎた、そうこれが七不思議5番目の『あの世からの校内放送』だ。


「まずいっ! 今すぐここから出るぞ!」


ー バァンッ!! ー


とっさの判断だったが時すでに遅し、俺がドアを開こうと手を伸ばした時に全開だったはずの扉は目の前で思いっきり閉じたのだった。 何度こちらから扉を開けようとしてもビクともしない。 


「くっ! 閉じ込められたのか!?」


「ザッ…ザッ、ザッっVすYCぐGDヴぉR… ザッ、GぁはおヴHFVLザッ…」

スピーカーからは何を言っているのかが全く分からない言語が流れその理解不能な言葉一つ一つに怒り、憎しみ、苦しさのような感情が俺の体の中になぜか伝わってきた、辛い…立っているのも苦しいぃ…なんなんだこれは? この放送を聞く度に体がだんだん重くなってくる…。


「先輩っ! どうするんですか!?」

「いややぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!!」


慌てひしめく島村くん、恐怖に陥る朱里

なんて事だ、安藤先輩を失った俺たちはここで鈴木と合流することで少しは平常心を取り戻せると思ったのにこれじゃあ逆効果だ…俺には安藤先輩のようにみんなを導くどころか絶望に突き落とすことしかできないのか…。


「羽島っ…、」

えっ、安藤先輩の声!?


何がどう起きているのかわからないがスピーカーから今度は安藤先輩の声が聞こえてきたのだった。


「ザッザッ、はっ…ぃま ザッ 羽島、気を確かに持て。」

間違いない、この声は安藤先輩の声だ!


「せっ、先輩っ!!」

「お前なら他のやつらも無事に連れていけると俺は思っているんだ。そんなお前がここで諦めてどうするんだ?」


……だけど、今の俺に一体何ができるっていうんだ?


「迷った時こそ一旦止まって周りを見ろ、道が無ければ自分で切り開くんだっ…ザッ…」


先輩からの最後の励ましかのような言葉を俺に残し先輩の声は聞こえなくなった。


そうだ、さっきも自分に言い聞かせたじゃないか!!

俺がここで挫けている場合じゃない! やるんだ! 今この状況を打開する決め手を!!


迷った時こそ、一旦止まって周りを見ろ…重い体を起こしながら俺は冷静に放送室を全体的に見た。


道が無ければ自分で切り開く…、!?

そういう事ですか先輩…!


俺は力を振り絞りその場から立ち上がり扉近くに設置されていた消火栓を持ち上げた。

常識なんて知らねぇ、みんなが震えて困ってんだ! もうなりふりかまっていられねぇ!!


「俺が切り開くっ!!!」


ー ガッシャーン!! ー


見事放送室の扉を破壊した俺は一目散にここから逃げ出した。

これで明日問題になったら正直に先生に謝ろう、なんて説明すれば良いか分からないけど…。


ー たっ たっ たっ ー

よし! あと少しで体育館だ! 校庭には二宮金次郎像がまだいると思うから校庭には出ない方が良いと判断した俺は当初入ってきた体育館裏玄関からの脱出を図った。


体育館の渡り廊下まで来たところだ、そう世の中上手く行くはずも無かった…。


!? 渡り廊下の先に誰か立っているのが見えた俺は瞬時にその場に止まった。


こっちに明らかに近づいてくる…、

ー コツッ コツッ コツ ー


やがて暗がりから薄々見えてきたその姿に俺は驚愕したのだった。


「もぉー、歩たち帰ったのかと思ったけど裏口開いていたから入ったのに全然携帯にも繋がらないのよね~、なにやってんのかしらあたしだけ置いて?」


えっ、朱里?! なんでこれまで一緒に行動していた朱里がここにいるのに今目の前に朱里が立っているんだ? なんだこの状況!? 待て、そしたら俺の後ろに居るのは…??


意を決し後ろを振り返った、


「ひっひっひ、やっと気づいたんだね…。」 不気味な笑い声を出して島村くんがこちらに語りかけた。


俺の右手が掴んでいた確かにそこにあったはずの朱里の手が2番目の不思議で語られていたじゃんけん河童のミイラの手になっていた。


「なっ、何なんだよぉこれぇ!!!?」

慌てて手を離した俺にはもう何がなんだかわからなくなってしまった。


「お前さんたちはあのじゃんけん河童に遭遇してからずっと俺の手の上で遊ばれていたんだよ!」

彼は何を言っているんだ!? ますます俺の頭が事の状況を把握できずに混乱されていく。


「しっ…島村くんっ…き、君は一体っ……。」


「この学校の8番目の不思議、知ってるかい…?」

!? 俺が今回一番調査したかった事だ、なぜ今それを?


「この学校はな、昔あるいじめがあったんだよ。 当時入学したばかりのある1年生は小柄で内気なところがあって上級生から狙われていたんだよ。 それは酷いもんだぜ? 最初は言葉による暴力、次第に物が無くなったりクラスメートからも関わらないようにってシカトされたり、やがてそのいじめはエスカレートしていって蹴るは殴るわ直接的な暴力になっていった。」


…俺は今何を聞かされているんだ?


「そしてある時だ、その時も学校の人目つかない場所に連れていかれ激しい暴行の末そいつの体は限界に達しそのまま命を落としたんだ。」


「それって完全に殺人事件じゃないか? この学校の歴史やら噂話には精通していると自負している俺でも聞いたこと無いぞ?」


「それはそうだ、この時死んだやつの死体はある場所に埋められて隠蔽されたんだからな。」


!!?

その言葉を聞いた瞬間俺の背中に寒気が一気に襲いかかった、なぜならその『ある場所』には心当たりあったからだ。


「まっ、まさかその場所って…」

「おっと! もう時間が無いぜ、後ろ見な。」


唐突に言われた言葉にしたがって俺は後ろを振り向いた。

「なっ! なんだ!?」


先程まであった体育館渡り廊下の道が一寸先闇に包まれているではないか!?

それだけじゃない段々こちらまで侵食している!?


「時間、見てごらん?」


すぐさま携帯の時計を見て察した、時刻は『2時19分04秒』そう7番目の不思議、階段踊り場に現れる『もう一人の自分』の時間に近づいていた、しかしなんだこの現象は? 今俺は階段踊り場にいないし周りには鏡なんて無いぞ?


「不思議そうな顔してるな? それはそうか、ここは7番目とは場所関係ないもんな? だけどもし仮にここら辺一帯が関係あるとしたら?」


!?

俺はその言葉の意味を瞬時に理解し今度は校庭に向かって玄関まで急いで走った。


7番目の不思議、これには続きがあり良くある都市伝説『ドッペルゲンガー』に近い話がある。

もしこの時間通りに鏡からもう一人の自分が現れたら本物の自分は鏡の世界に引きずり込まれ現実世界の自分が入れ替わってしまうといった内容だ。


やつの言ってたこと、それはこの今いる学校…いやこの世界はいつの間にか鏡の中の世界に俺たちは迷い込んでしまったんだ!

そして時刻2時22分22秒になり今この場でもう一人の自分と遭遇してしまったら俺はこの世界に取り残されてしまう!!


まずいっ!! 急がなくちゃ!! でも外には二宮金次郎像がっ!!


ー コツ コツ コツッ… ー

階段から誰かが降りてくる足音が聞こえてきた。


「見ぃつけた…」


ヤバイっ!! 振り向くなっ!! 絶対に顔を合わせるな!!! 絶対に足を止めるな!!!


恐怖と、焦りと、上がる息、ここまで走り続けた両足は悲鳴を上げもう感覚が無くなってきた、なんでそれなのに俺は走れているのであろう? 人間とは不思議なもので自分の命に危機感を覚えると極度のアドレナリンを分泌するらしいとある時テレビで見たことある、恐らく今この状況の事を言うのであろう…。


校舎玄関はこちら側では押戸だったため勢いを止めず全身体当たりで外に出た。

あまりにも思いっきり過ぎて正直痛かったが今は痛みを感じている場合ではない。


しかし当たり所が悪かったのか意識が段々薄れていく、あともう少しで学校から出られるのに


あと、もう少し…?


…………………………………



「ん? あれどこここ?」

なんだかとても長い夢を見た気分だ…とても長い、それよりここはどこだ?


「こらっ!! このバカ息子!!」

ー ゴスッ!! ー


「痛ってぇー!! 何すんだよ母さん!?」

起き上がってすぐさま俺は母親のげんこつによる制裁が下された。


「あんたねぇ! こっちがビックリしたんだから! 朝方警察から電話来てあんたが学校の前で倒れてるなんて連絡来たときにはあたし心臓止まるかと思ったんだからね!?」


俺が学校の前で倒れていた? ということは昨日深夜俺は七不思議の調査に学校に忍び込んでいた!?


「今何時!?」 「は? もう夕方の1時だよ。」


「学校の方でなんか物壊れたりとか聞いていない?」 「はいっ!? あんたそんな事していたんかい!!?」


「あ、いや実は昨日宿題忘れちゃって取りに行ったんだけど階段でこけて何か物壊したんじゃないかなーって思って…。」 「ちょっとやめてよぉ~、これ以上心配事増やさないでおくれ…。」


とりあえずこの場を納め俺は翌日登校した。 少し気になることが2つほどあったのでそれも確かめるべく学校に向かった。


「……、何も変わっていない…。」

2日前あれほどの騒ぎを起こしたにも関わらず学校の様子はいつもと変わらず平凡な時を刻んでいた。


ー ガラッ ー


「おぉ 羽島、お前学校で倒れたんだってなにやってんだよ(笑)」

クラスの男子が面白半分で俺に声かけてきた。


「あぁなんかな宿題忘れちまって取りに行ったんだけどこけて気絶してたみたいなんだよ(笑)」

その問いに対して俺もあの事を言うわけにはいかないのでごまかした。


ー ガラッ ー


!!

「朱里っ!」 俺より少し後に朱里が登校してきた。

「朱里、お前一昨日いつ帰ったんだよ!!?」


「は? 何言ってんの? 一昨日なんてあたし塾終わってから直ぐに家に帰ったわよ!」


それを聞いた瞬間俺は感づいた、あの時俺たちはあの時間すでにあの不思議で奇っ怪な世界に迷い込んでいたんだと、そしてあの時俺たちと一緒に行動していた朱里は俺が知っている朱里では無かったのだと。


正直いろいろ気持ちが整理つかなかった。

鈴木を訪ねに隣のクラスに行ったが、そもそも鈴木 誠という生徒はいなく

安藤先輩のクラスに訪ねに行ったら先輩は一週間前不慮の事故で命を落としたと…。


なんだこの状況… 俺はとりあえず授業を受け放課後までなんとも言えないモヤモヤ感を抱えたまま過ごしていた。


ー キーン コーン カーン コーン ー


放課後俺はある場所に向かった。 校庭にそびえる桜並木の1本だけ桜の咲かない木の下だ。


ー ザッ ザッ ザッ… カッ! ー


「…そうか、やっぱり君だったんだね…。」

桜の木の下には白骨化した死体が埋まっていた、恐らく彼の物だろう…。


「君は俺たちに探して欲しかったんだろう…島村くん…。」


生前、彼が生きていた当時の事を彼の口から語られていた情景をまぶたを閉じ思い浮かべば、なんとも表現しづらい気持ちが込み上げてくる。


さて、ここで気になる点の1個解決した、しかしもう1つは確かめるには少し難しいというか調べられようのない事だ。

調査決行の昼間、俺と朱里が昼食を済ましている間にしていた会話によるものだ。


そう、あの時意識を失いかけていた俺の目にはちょうど校門前の校長の銅像が見えていた。

そしてその像はなんと怒りの表情を浮かべていたのだった。


「もし校長の像が怒っている顔をしたら学校が消えて無くなるんだって!」



5月から始めたこの物語、やっとの事で完結させました。

少しばかり矛盾する点があるかもしれませんが初めて書き上げたホラー系です!

少しは肌寒くなってくれれば嬉しいです!

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