能力
部屋に入り部屋を見渡した。とても大きい部屋だが、そこには誰もいなかった。特徴をあえて言うとすれば、部屋の真ん中に大きな立方体の石があったことだ。
天使と名乗るものが大きな声で言った。
「神様、連れて参りました。」
「よろしい」
頭の中にまで響き渡る声がした。これが神様の声なのだろうか?
「では、能力の解放を君にしよう。部屋の真ん中にある石に手を触れたまえ。」
ここまで来たことだし、言われるままに石に手を触れてみた。特に何も起きないなと思いながら10秒くらいしたときだった。ふいに頭痛がして、石から手を離してしまった。
天使が俺を支えてくれながらこう言った。
「能力の解放は終わったようですね。私があなたの能力の詳細をお伝えしましょう。」
天使が俺の能力を調べているのか、長い沈黙が訪れた。
「能力の診断が終わりました。あなたの能力は目視できる物体と物体の位置を変える能力です。どうやら、少しでも見えていたら、その対象に含まれるそうです。」
「その能力はもう使えるのか?」
「はい、またあなたの能力は生物にも適用されます。」
「えっと、なんか呪文みたいなのは必要か?」
「あら、言い忘れてましたね。これといって決まった言葉はないのですが、あなたが念じたとともにあなたが何かしらの言葉を言う必要があります。」
「分かった、じゃあ、そのまま、テレポーションと唱えるとするか。」
ふーと息を整え、目の前にある石と自分の位置が変わるように念じ
「テレポーション!」
と唱えた。
一瞬目の前が白くなったかと思うと気がつけば、自分と石の場所が変わっていた。
「すげぇ…」
思わず、言葉が口から溢れてきた。
「これで、私の言ったことを信じて貰えるでしょうか?」
「あぁ、信じるしかないだろ、すげぇよ!」
「ありがとうございます。」
「これで、えっと、俺は今から冒険に出る感じなのか?」
「いえ、冒険に行くのは選抜に勝ち残った人たちだけです。」
「選抜?誰と戦うのだ?」
「同じ、残り香を持つ人たちとです。数日したら、またあなたを呼びます。そして、そこで選抜の詳しいルールを伝え、選抜を始めます。今日はもう疲れたでしょう?家でゆっくり休んでください。」
その言葉を最後に次第に意識が消えていった。そして、目覚まし時計が鳴るのと共に目が覚めると俺は自分のベッドの中にいた。
「朝か。昨日のは夢だったのか…?」
とても不思議な気持ちで迎えた朝だった。