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ご覧いただきありがとうございます。短いお話だと思います。
唐突だが、俺には彼女がいない。
産まれて15年、一度だって居た事が無い。
ちょっとデカくて目つきが悪い事を除けば、愛想良くしゃべるし、オシャレにだって気を使ってるんだ。多少なりモテたって罰は当たらないと思っている。最近は、部活が悪いんじゃないかと思っている。どうせならサッカーとかを選べば良かった。体が小さくひ弱だった小学生の頃に、親父に勧められて始めたんだが、どうもイメージが良くない。なんだかんだ好きで続けてはいるが、思春期のモテたい願望とは相性が悪すぎるぜ。
そんな俺にも、一応、気になる女はいる。好きか嫌いかで言えば、まあ、好きなんだが……恋愛的な好きかどうかと言えば、正直まだ分からない。
俺が中野仲高校に進学してから、そろそろ2ヶ月。親友の井上 純太と幼馴染の江藤 有加里と同じクラスだったんだが、どうもジュンタは隣の席になった赤木 文子に惚れてるらしい。波長が合うって言うのか?初めて会った日から速効で仲良くなりやがって、こっちから見るとすでに”井上様ご夫妻”って感じなんだが、ジュンタいわく「は、はあ?つつつ、付き合ってないし!!」だし、ブンコいわく「すすす、好きとか、よ、良く分かんないし!!」らしい。(アカリが聞き出した)
こいつらの会話はすでに夫婦漫才なわけで、さっさと付き合えや……と、クラス中のヤツラが思っている。
まあ、一応の親友で有る所の俺としては、余計な口出しをせずに生温かく見守っているわけだが。
だがしかし、一つ困った事が有った。
ジュンタとブンコが2人の世界を作っていると、必然、俺とアカリが2人であぶれる訳だ。
もともと昔からジュンタ、俺、アカリの三人で良くつるんでいた所にブンコが現れたわけで、3人行動から4人に増えたんだが、ジュンタとブンコはイチャイチャしてやがる。
クラス内の班だの移動教室だのも同じ4人組なので、ジュンタとブンコはイチャイチャしてやがる。
そして今、ジュンタとブンコはイチャイチャしてやがる。
「……なあアカリ……」
「なあにダイキ?」
「あいつら爆発しねえかな」
「何言ってるの? ……今が一番尊いのよ」
もともと、4人で公園によってアイス食って帰ろうぜ!みたいな話だったと思ったのだが、アイツら2人でブランコこぎこぎ、ずっとしゃべってやがる。アカリは何が楽しいのかニヤニヤしながらそんな2人を眺めているんだが、こっちはもう飽きたわ。
「俺、帰るぞ?」
「そうね。 ここは黙って帰る? フフフ……アリだわ」
独り言なのか、俺に向かって言っているのか分からんが、ここは放っておくべきか?
「さ、ダイキ。 帰ろ?」
「お、おう。 マジで黙って帰るのか?」
「それが正解」
「俺、コンビニ寄るけど?」
「待ってるわ」
これである。
二人っきりになるとこっちは緊張するのだ。
アカリは、幼馴染の俺が言うのもなんだがなかなかの美少女なのだ。
化粧気はあまりないが、整った顔。背は女子の中では高い方で165くらい。ちょっと長めの黒髪を頭の上でふんわりしたお団子にしているが、良く似合う。去年3人で行ったプールでは、それなりの胸部装甲を装備していたが、1年たってもう少し成長しているように思う。
そんなアカリが、近いのだ。
アカリの家と俺の家は、目と鼻の先に有る。同じ住宅地の同じ区画内に家が建っているんだから当然だ。それこそお互いに、物心つく前くらいからの付き合いだ。
最近では珍しく隣近所の仲も良好で、何家族かで親戚みたいな感じになってしまっている。同年代も結構いて、兄妹みたいな感じだ。
兄妹みたい
兄妹じゃないのに兄妹の距離感で近づいてくる、女。
つい最近までは、なんとも思っていなかったのに。それこそ姉や妹くらいにしか。
でも、ふとした時に気づいちまった。
あれ?こいつこんなに小さかったっけ?
あれ?こいつ良い匂いしてね?
あれ?こいついつもこんなに近かったっけ?
あれ?こいつ可愛くね?
そんな女が無造作に俺の腕や背中に触ってくるのだ。
これは意識せざるをえない。