スウとローヤル
ローヤルらの後ろからゆっくりと近づいている宇宙船はピンク色に輝いていた。
400メートル級高速巡洋艦、ピンクドルフィン。
このように派手な色は軍艦は銀河広といえども、この船しか無かった。
いるかをモチーフにしたそれはフレクスの技術力を結集して昨年に就航したばかりの最新鋭艦で、
親衛隊のフレクス製最新鋭機動歩兵ブルースター10機を搭載していた。
エンジン、主砲の出力ともに戦艦並みのそれは、銀河に広く知れ渡っていた。
その艦橋で、スウは着陸の喧騒の中、スケジュールの中身をミリアと確認していた。
「王女」
親衛隊の一人となっているコンドが、通信端末を持って王女に近づいてきた。
そして、小声で話した。
「何ですって、」
「この船はピンクドルフィン」
スタッドの声を聞いて、ローヤルはずっこけていた。
「そう、ジパングのヒロイン、スウ王女よ」
「ああ、最近人気が出てきた・・・・3年前に、助けてやったことがあるよ」
「へえー、スタッド知り合いなんだ」
リックが驚いて言った。
「知り合いなんてモンじゃないぜ。あの時は私の命があるのはスタッド様のおかげですって、手を取って涙まで流して暮れたんだから」
「よく言うよ」
ボソッとローヤルがつぶやいたが、当然スタッドは無視した。
「そういえばその時、姫はローヤルに首っ丈だったぜ」
「えっ。そうなんですか。ローヤル」
みんなの視線がローヤルに集まる。
「スタッド、何うそばっかり言ってるのよ」
いきなり画面にスウの度アップが割り込んで来た。
「スウ!」
驚いて一同画面を見た。
ピンクドルフィンの艦橋もそれまでの作業を全員手を止めて、
艦橋の真ん中で激怒して立っているスウをみた。
「そもそも人にあいさつもせずに出て行って」
激怒して通信機を握っているスウの腕をコンドは引っ張ったが
「何よ、コンド。そもそもあなた知ってたんでしょ。ローヤルらが出て行くのを」
「姫、盗聴は犯罪です。」
「うるさいわね。そもそもあなたが渡したんじゃない」
「いやあ、それはそうですが」
コンドはしどろもどろで答えた。
「よう、コンド元気?」
助けに船とばかりにスタッドはコンドに話しかけた。
「やあ、そちらも元気?」
コンドも手を振った。
「で、ローヤルは」
「そこで隠れている、出て来いローヤル」
スタッドの声にいらないことをしやがつてという顔でローヤルが画面に現れた。
「コンド、元気? 盗聴なんてウエムラさんに習ったろ。」
「ローヤル!」
きっとしてスウはローヤルを見た。
「これはこれは姫君。お久しぶりでございます。」
最敬礼をして、他人行儀に話す。
「このたびはわざわざフレクスまでお越しいただき、恐縮の極みです。
キア王子の遺言を守られ、日々施政に尽力なさっておられるお姿、影から見守らせていただいております。
私どものような者達にかかわっておられるお暇も無いと存じ上げますので、早急に公務にお戻りいただきますように、お願い申し上げます。」
そして、コンドに合図する。
「何よ、その言い方。ちょっと活躍しているからって、テレビに出ていい気になって。
何が1艦隊でもたたき潰してやるよ」
「いや、それはスタッドが言っただけで・・・・」
ローヤルは言葉に詰まった。
「そのうちに天罰が下るわよ。そんな天狗になっていたら。
そもそもローヤルが教えてくれたんじゃない、実るほど 頭を垂れる稲穂かなって。」
そこでスウは息を切った。
必死に手を引いているミリアとコンドを見て
「判ったわよ。私がわるうございました。」
そしして、スウは画面をぶつ切りした。
「へえ、スウって怒ると怖いんだ」
嵐の去ったララポートの艦橋でここまで黙っていた操縦士のキム・ゴードンがボソリと言った。