紛糾の王室会議2
「確かに、ラッセルには具体的な攻撃命令は誰も与えてはいない。」
「とすると、ラッセルは指揮系統を無視して、独断で動いたと、」
「何ですと、」
思わず叫ぼうとしたラッセルを制して、
「ま、皇太子もラッセルも落ち着いて、聞いて欲しい。
今回、レントからラッセルにある程度の指示が出たのは事実だ」
「えっ、私ですか?」
いきなり振られて、レントは驚いた。
確かにゼーマン少将に情報は流させたが、攻撃していいなどと一言も言っていない。
「レント、それは確かか」
聞いていないと言う顔でジミーはレントを見た。
「いえ、攻撃しろとは言っていませんよ」
レントはあわてて言った。
「出動しさえすれば、後は現場での判断が優先される。」
マルサスは皆を見て言った。
「今回はスウ王女の命を守るために止む終えない行動だったと理解するがいかがかな」
そう言ってマルサスは皆を見た。
「しかし、国王、一王女のために、国家が危うく全面戦争にはいるところだったのですぞ。
ラッセルの行動は余りにも軽率だったのでは無いですか」
皇太子が噛み付いた。
「確かに、私も軽率だったと思いますが、」
第二艦隊司令官のアーサー王子が同調した。
「何だと、日和見をしている誰かと違って、王女はノーザンに対して、はっきりと言われたのだよ。
お前らのわがままもここまでだと」
ラッセルが言う。
「ノーザンはテロ国家と化していたフレクスに蹄鉄を与えただけと言っている」
「どちらがテロ国家かは一目瞭然の所。
更に、わが国の保護国に無断で攻撃を加えるとは言語道断。それとも何ですか。密約でも結んでいたのですか?」
「何だと」
「我々を愚弄するのか」
皇太子と王子が反論する。
「双方ともやめい。今回はけんかをするために集まってもらったのではない。」
マルサスが止めた。
「しかし、姫の行動も軽率と言えますね。」
バレンシア王女が言った。40代のラスカル知事、やり手と評判の王女である。
「何ですと、王女」
「ラッセル、私にまで噛み付くのはやめて。」
きっとしてバレンシアは言った。
「王族なのだから、自らの私情はカットすべきよ」
皇太子とアーサー王子が頷いた。
「王女、しかし、国民は王女の行動を熱狂的に支持しています。」
ハミル・イワン産業大臣が言った。王女とバレンシア王女と同年代。こちらもやり手の若手だ。
「いまさら、謹慎させるわけにも行きますまい。」
「そこがネックなのよ。国民の大多数はジパングのノーザンへの攻撃を期待しているわ」
「馬鹿な。2軍相手に全面戦争して勝てるわけは無い」
「ノーザンの属国と化すのは目に見えています。」
「能無い奴が指揮官だとそうなるのですな」
ラッセルが突っかかる。
「何だと」
アーサーが立ち上がる
「少し善戦したからと言って、図に乗るな」
皇太子がアーサーを援護した。
「まあ待て」
マルサスが止める。