ケアル・ナア大統領の野望
青と茶色の入り混じった惑星イスワタは恒星アストンの第四惑星で、ノーザン連邦の主星であった。地球型惑星で、海陸比は5対5。人口は20億を数えた。
ノーザン連邦は13の共和国から成り立っており、その歴史は古い。
宇宙大戦後、オリオンシステムにて、統一されていた400年間の期間を除き、人類の宇宙進出直後には共和国の体制をとっていた。
そして、今は銀河最強の連邦国家として銀河に君臨していた。
産軍一体の強力な軍事力と軍需産業の力により、周辺国家を自らの利益のために支配する強引な政策は、別名ノーザン帝国と恐れられていた。
現在の大統領はケアル・ナアは2年前にキア王子暗殺の汚名をしょったコーネルを破って現在の地位についていた。
そのケアル・ナアは憤慨していた。
「一体どうなっているのだ。2軍の精鋭の特殊部隊3隻が全滅しただと。敵はたった10機とだと言うではないか」
「申し訳ありません。」
ホフマン元帥は頭を下げた。
「悪魔の双子にまたしても、やられたようです。」
「たったの二機なのだろう」
「その二機が手ごわく、3年前のジパング作戦から負けとおしです。」
「3年前の事はコーネルのせいだから良いんだ。ここ最近の話だ」
ケアル・ナアは机を叩いた。
「それ以降もフレクスの奴らに邪魔されとおしだ」
資源惑星のモロア、ゴンザの民主政権転覆失敗、このレンザとノーザンの周辺地区では3連敗していた。当選当時は60パーセントあった支持率が今は30%まで落ちていた。
「近年はフレクスに武器輸出で結構負けていると軍需産業からも苦情が来ています。」
「ふんっ、金の亡者め」
大統領は軽蔑していった。
もっとも、大統領選で勝てたのは軍需産業がコーネルを見捨てて、ケアル・ナアに付いたからだったが・・・・
「大統領。このあたりでフレクスを叩かないと、ノーザンの威光にかかわります」
「それと軍需産業の威光にもな」
ケアル・ナアは皮肉った。
「そこでこのフレクス侵攻作戦です。」
ホフマンは作戦計画書を大統領に見せた。
「しかし、フレクスに侵攻して勝てるのか。これだけ負けているのに」
「二軍、全軍を侵攻にあてます。テロの大本を叩くという大義名分で」
ホフマンは笑って言った。
「いくらフレクスの傭兵部隊が強いと言っても、機動歩兵で100機余り、艦艇も小型艦が50隻くらいです。これに対して2軍は艦艇100隻強、機動歩兵500機、海兵隊5個師団を誇ります。負けるわけはありません。」
「軍需産業も支援を惜しまないといっています。」
スタンリー補佐官も言った。
「奴らは兵器さえ売れれば問題は無いのだろう」
大統領は腕を組んだ。
「ジパングは黙っているのか。いくら2軍でも、ジパングは300隻以上の戦力を持っているぞ」
「内務大臣からは黙認すると内諾を得ています。」
スタンリー補佐官が答えた。
「内務大臣で大丈夫なのか。前回は国王が寝返ったというではないか」
不振そうにケアル・ナアは言った。
「今回はテロの大本を叩くという大義名分があります」
補佐官がしたり顔で言った。
「しかし、奴らはノーザンがテロの輸出元だといっているぞ」
「フレクス内部にも、テロを輸出するのはどうかという、穏健派もおり、今回はその穏健派を担ぎます。」
「ジパングも内政干渉で、兵を出せないという事か」
うれしそうにケアル・ナアは言った。
「これで小うるさいフレクスがなくなってくれれば万々歳だな」