スウの決断
スウは暗闇の中を歩いていた。
どこまでもどこまでも続く暗闇だった。
と、遠くに光の点が見えた。
「灯りだ、出られる」
と思ったのもつかの間、
何故かとても不安に思えてきた。
胸騒ぎがしたスウは走った。
そこには、十字架に縛られたローヤルがいた。
そして、ローヤルは今しも処刑されようとしていた。
そこにはニヤニヤ笑って銃で狙いをつけているトム・ベースがいた。
「ローヤル!」
スウは大声を上げて飛び起きた。
「姫、大丈夫ですか」
スウのベッドの横には心配そうに見ているミリア・ハンがいた。
スウは頭に包帯を巻いて、救急室に横たわっていた。
「状況はどうなっているの」
スウは聞いた。
「ハラムの頑張りによって現在艦は中立に。
フレクス自体はノーザンに完全制圧されました。」
「フレクスが、ノーザンに。わが艦の被害は、ローヤルはどうなったの?」
「被害は幸い負傷者5名のみです。」
ミリアはこたえた。
「ローヤルは?」
「ノーザンに捕まったものと思われます。」
「身を挺して守ってくれたのよ。何故引き渡したのよ」
スウはヒステリックに話した。
「我々は王女の命を守るのが精一杯でした。申し訳ありませんがそれ以上のことは力及びませんでした。」
「そうですぞ。姫、あのまま、やり合ってはこの船も沈められていました。」
後ろからハムラが入ってきた。
「しかし、助けてくれたものを見捨てるなど、ジパングの名が廃ります。」
スウは立ち上がろうとした。
「姫、しばらく安静にしていてください。」
慌てて、ミリアが止めた。
医者も入ってくる。
「姫、せっかく助かった命ですぞ。国民のためにも無理はなさらずにしばらくお休み下さい。」
「自分ひとり助かって何故王女なのか?オリオンが嘆いているでしょう」
すさまじい剣幕でスウが言った。
「ご自身の私情でものをお話しめさるな。ここは私情を挟んでいただいては何百という部下が死線をさ迷う
ことになるのですぞ」
負けずとハムラは言い返した。
「ハムラお控えなさい。姫は助けてくれた者の事を考えているのであって、私情は持ち込んではいません。
」
ミリアは言った。
「いいの、ミリア、私も心配してくれた皆の事も考えていなかったわ。ごめんなさい。」
「いや、お分かりいただければよいのです。私も出すぎました。」
ハムラは出て行った。
その出る間際に、姫にした一瞥は 若造め! と言っていた。
スウはため息をついた。
「姫、軽はずみな行動だけは控えてくださいね。」
ミリアは出て行く際に何回も念をおした。
「判っているわよ、ミリア、私も昔の私じゃないわ」
スウは笑って言った。
ミリアが出て行くとスウは考えた。
夢が正夢だとすると、自分はどうしたらよいだろうか。
もし、相手がローヤルでなかったら、ピンクドルフィンの全戦力を叩きつけても、救出に向かったはずだ。
しかし、相手がローヤルとなると、そうする訳には行かない。
私情を持ち込む事になるからだ。
でも、何もしないで、見ているだけなんて事は絶対に出来なかった。
スウは自分のダイニングメッセージを修正し出した。
こうなったら、一人でやれるだけでも、やるしかなかった。