ローヤルとスウの再会
ローヤルは来たらすぐに部屋に来てくれと言われていたので、ボストンの部屋に急いだ。
ノックして「ローヤルです。」
と言って、中に入る。
「ローヤル!」
女の声に呼びかけられて、ローヤルはびくッとした。
もしかしたら、と思っていたが、やはり、そこにはスウがいた。
「やあ、ローヤル。あい変わらずの活躍ぶりだな」
応接セットに座っていたボストンが席を立って迎えた。
「いや、まあ、」
「さっ、席に着きたまえ。」
ボストンはローヤルをスウの横に座らせた。
「聞いたよ。ステーションで会ったんだって。」
「いえ、会ったと言うほどでは」
スウが軽く否定した。
「そうだな、いきなり、二人でけんかしたんだって。ステーションでうわさになっていたぞ」
「いや、私は別にけんかなど」
ローヤルが慌てて否定すると
「私が全部悪いって言うの!」
スウが噛み付いた。
「はっはっはっ。あいも変わらず仲が良いの」
「どこが良いんですか」
二人がはもった。
思わず二人で見合わせる。
「いやあ、そんな所なんてぴったりだな」
「博士!」
二人がにらみつけた。
「いやあ、キア王子から、息の合うのがいるから、よろしく頼むと、昔、君らの事は良く聞いたんだよ」
「そうですか」
故人の話をしんみりされるとさすがにいつまでも怒っているわけにもいかない。
暗殺されたキア王子は二人の恩師であった。
「いやあ、悪い悪い。嫌なことを思い出させたかな。少し待ってくれ。二人に渡すものがあるから、」
そういうと博士が立ち上がって部屋から出て行った。
「えっ、博士」
ローヤルが声をかけたときは博士は振り返りもせずに部屋から出て行った。
二人の間を沈黙が訪れた。
スウには話したいことがたくさんあった。聞きたいこともたくさんあった。
でも、急に二人きりになるとすぐには何も言えなかった。
「久しぶりのフレクスはいかがですか」
場をもてあましてローヤルが聞いた。
「相変わらず活気があっていいわ。」
スウは初めてフレクスに来た時のことを思い出していた。
「ここでオリオンを受け取ったのよね。その時、ローヤルがなかなか操縦できなくて、こけてばかりいたのを覚え
るわ」
「何言ってるんですか。パルミールでは図書館に突っ込んでくれたのは姫でしょ。そのお転婆は相変わらず治って
いませんね。」
ローヤルはからかった。
「何言ってンのよ。少しはおしとやかになったわよ」
「今回の電波ジャックしても?」
「あれは元々コンドがしたのよ。それを聞かしてくれただけでしょ」
スウは反論した。
「そこで口を出すのがスウらしいよな」
「スタッドが嘘ばかり言うからでしょ」
スウはローヤルを揺らした。
「でも、あの剣幕はすごかったよな」
「何よ、人に黙って出て行ったくせに。自分だけ楽して」
スウの目に少し光るものがあった。
「いや、俺はクリスに首にされたから」
「何言ってるのよ。置き去りにされた身になってよ。気づいたらいきなりいなかったのよ」
話しているうちに涙がぽろぽろとこぼれてきた。
「なんで、なんで、一言も出て行くって言ってくれなかったのよ」
「スウ・・・」
ローヤルは呆然とした。
まさか、スウが泣き出すとは思いもしなかった。
「それも、傭兵なんかになって」
スウは泣くのを止めようとしたが、後から後から涙が出てきた。
「毎日毎日どんなに心配したと思っているのよ」
そして、ローヤルの肩に顔を突っ伏した。
「えっ、」
ローヤルはどぎまぎした。
もう昔のガキではなかった。
スウの丸みを帯びた肩が震えていた。
ローヤルはどうしようかと迷った。