レントの驚愕
玉座に座り、イズミ・マルサス王は考え事をしていた。
「国王陛下、お呼びですか?」
レント内務大臣が部屋に入ってきた。
「ノーザンの動きが慌しいです。2軍がどこかに作戦行動に出ようとしているようです。」
「フレクスを攻撃するか」
ポツリとマルサスは言った。
「フレクスを攻撃ですか?」
慌てて、レントは聞いた。
「誤魔化さなくても良い。ノーザンから連絡が入っているはずだ」
「陛下!」
冷汗を流して、レントは見た。
「レント、レスターの二の舞になるなよ。オリオンは全てを見越している。」
レントの目を見て
「申し訳ありません。」
真っ青になりながら、レントは頭を下げた。
レスターがオリオンの怒りに触れて処分されたことは、理解していたはずだった。
頭の中では。しかし、オリオンから監視されているとは思っていなかった。
どれだけの力をオリオンが持っているかも。
オリオンシステムで監視されているとなると全てがオリオンに筒抜けになっているはずだ。
レントは冷水を浴びせかけられたように感じた。
「私が辞める時は、お前も辞める時だ。私の足を引っ張るな」
マルサスは言った。
「申し訳ありません。では、直ちにこちらも第二艦隊をフレクスに差し向けます。」
慌てて、レントは言った。
「ノーザンの2軍には第二艦隊では勝てないだろう」
「では、どうしろとオリオンは言っていますか?」
おそるおそるレントは聞いた。
「ノーザンにはお前のルートから撤退を申し入れろ。」
「ノーザンに対してですか。」
レントは聞いた。
「そうだ。もっとも、いまさら後ろには引けないと思うが・・・・」
「はい、私もそう思います。」
レントが頷いた。
「しかし、こまねいているわけには行かない。それとありとあらゆるルートを通じて、フレクスに警戒を呼びかけ
ろ。」
「了解しました。」
「スウがフレクスにいる」
「はい、お忍びで行かれたようです。」
言い訳するようにレントは言った。
「分かったような事を言うな。何故単独で行かせた。1個艦隊くらい護衛でつけろ」
「1個艦隊ですか。しかし、そこまでは・・・」
「レント、今オリオンが一番気にしているのは、姫の動向だ。」
マルサスは諭すように言った。
「お前ら保守派としてはスウがいなくなったら、万々歳と思っていたのだろう」
「いえ、そのようなことは」
慌ててレントは否定した。
「どうだかな。」
怪しむようにマルサスはレントを見た。
「まあ、良い。今後はもう少し、姫の動向を気にするのだ。
もし、姫とローヤルに万が一のことがあった場合は私とお前をオリオンに招待してくれるそうだ」
「えっ、それは、レスター伯と同じということですか」
驚いてレントは言った。
「そうだ。そうならないように全力で当たるのだ。」
「了解しました。」
「自らの取りうる最大の努力を期待する。」
「艦隊は動かさなくて良いので。」
「そこは、私が考える。大臣は大臣の配下で動かせるだけの人員を動かして、最悪の事態を避けるようにしてくれ
。」
「了解しました。直ちに行動を開始します。」
レントは慌てて走るように謁見室から出て行った。
「あの子たちには試練が必要なのよか」
マルサス王はつぶやいた。
「試練で済むかどうか」
ノーザンの攻撃にスウやローヤルが対処出来るとは思えなかった。