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クリス登場

一方ジパング王国の王宮はその中心部、森に囲まれた、豊かな自然の中にあった。


キア王子の暗殺事件があってから3年。それ以来、大きな事件は無かった。

小春日和の良い天気だった。


玉座に座りながらイズミ・マルサス王は午後の紅茶を飲みながら陰謀が張り巡らされているとは何も知らずに至福の時を過ごしていた。


「良い天気だ」

マルサスは思わず独り言を吐いた。


「いい気なものね」

いきなり、マルサスの至福を少女の声が破った。


「お前は・・・クリス?」

マルサスは愕然とした。


後ろに勝気な感じのする少女が立っていた。


「生意気な少女には気をつけろ」

前国王のアザミ国王からの伝言であった。

「そして、彼女が出てきたら、玉座を次のものに渡す準備をした方が良い」

とも言われていた。


その疫病神が出てきたのだ。


この小春日よりの良い時期に何も出てこなくて良いのではないか。


「あなた、ノーザンが侵攻しようとしている事知らないの」

そんなマルサスにクリスは言った。

「ノーザンが侵攻?このジパング王国にですか」

マルサスにとっては寝耳に水だった。

「フレクスによ。ノーザンの内務長官からレントに極秘に連絡があったようよ。そんなことも掴んでいないの」

馬鹿にしたようにクリスは言った。


おのれ、レントの奴、何故すぐに言わないんだ。マルサスは唇を噛んだ。


「ま、キアは自分の暗殺計画を知らなかったし、アザミもそれを防げなかった。皆同じだけどね。」

クリスはあきれて言った。

「直ちに第二艦隊をフレクスに向けます」

マルサスは言った。

「第二艦隊ではノーザンの2軍には勝てないわ」

クリスはあっさりと否定した。

「勝てると思う?」

クリスの問いに、マルサスはすぐには答えられなかった。

確かに歴戦のノーザン2軍に対して、最近戦闘に出ていない第二艦隊では心もとなかった。


「今、ノーザンと全面戦争しても、ジパングには勝てる見込みは?」

「全面戦争ですか」

マルサスは慌てて聞いた。

「そう」

「それはやってみないと」

必死にマルサスは言うが

「何言ってるのよ。勝てるわけないじゃない」

無常にクリスが言った。


「ならばどうしろといわれるのですか」

マルサスは少し頭にきて言った。


「今回はじっくりと見ているだけよ」

自嘲気味にクリスは言った。


「ノーザンなんかに、手も足も出ないなんて、あなた方は何をしてきたの。

今まで。

マルサス。

オリオンは全銀河の叡智を傾けて作られた、国王選抜システムなのよ。

再び、大戦が起こらないようにするためなのに、何故、戦争を仕掛けられる前に、止められないの?」

マルサスはむっとした。

何故、こんな餓鬼に言われ無ければならないんだ。

マルサスとしてもキア暗殺の後の国王就任後できるだけの事はしてきたつもりだ。

スウ皇女の首都パルミール市長兼外交特使就任。

ノーザンの侵攻時に活躍したラッセルには第五艦隊を任せて、戦力の増強を図ってきた。

それを何もしていないなどと小娘に言われる筋合いは無いと。


「不満のようね。私みたいな子供では。次はエーミやマックリンガー、キアとかと一緒に来ましょうか。」

「そのような。勘弁してください。」

マルサスは手を振った。歴代の王が出てきた方が厄介だ。何を言われるか分かったものではない。

気の強かったと言われるマックリンガーなど、どんな罵声を浴びせられるか判ったものではなかった。


「で、私に何をしろと」

マルサスは諦めて聞いた。

「今回は何もしなくて良いわ。」

クリスの言葉は意外だった。

「見ているだけで良いんですか」

驚いて、マルサスは聞く。ひょっとして、もう、首・・・・。マルサスは首周りが寒くなった。


「今回はローヤルとスウの試練なのよ。彼らが自分達できちんとやっていくでしょう。」

遠くを見るようにクリスは言った。

「ローヤルですか。あなたがローヤルをロイヤルファミリーから首にされたと聞きましたが」

「そうよ、あんな生意気な奴。私が助けてやったのに、人を人殺しのように言いやがって。何様のつもりなの」

クリスは憤慨して言った。

「それをエーミやマックリンガーがかばうのよ。」

クリスは言った。


「そうですか」

ローヤルとかスウとか言う若造がオリオンに目をかけられているなら、

これは自分の王位も長くないなとマルサスは思った。


「マルサス。もっと頑張りなさい。今回私が出てきたのはあなたに渇を入れるためよ」

そのマルサスの心を読んだように、クリスが言った。

「私にですか」

マルサスはおどろいた。

「当たり前でしょ。あなたはオリオンに選ばれているのよ。自信を持ちなさい。内務大臣の選択は最悪だけど。何


故、いつもレスターみたいなのを選ぶの?」

「これは私の不覚です。」

「それと私が出てきたもう一つの理由はレントにもう一度だけチャンスを与えるため。

レスターの二の舞は私も困るから。また、あの生意気なローヤルに言われたくないわ」

そして、マルサスの目を見た。

「レントにはこう言って。今回、ローヤルとスウが死んだら、レスターの二の舞になるぞって。

軍を動かす以外で、外交ルートでも、個人ルートでも何でも使って、二人を守りなさいって。」

「分かりました。」

マルサスは頷いた。

「失敗したらオリオンにご招待するから。頼むわよ、マルサス。国王になった限り、3年で引退は早すぎるわ」

そういうとにこっと笑って消えた。

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