大きな木の下で
見上げるほどの、大きい幹の下で私は来ていた。苔むしたふかふかの絨毯のような緑のベットの上。木に歩み寄る。
「大きい……」
私は思わずつぶやいた。今まで何回か来たのに、神聖な雰囲気に押されて感情が高ぶってしまう。しかし、その木の静謐さに同時に心は穏やかだった。
誰も来ない場所。森の奥深く。私は一人で木に寄り掛かって座る。自然とため息がほぅっとでた。誰も来ないからこそ、空気は透明だ。
澄んだ空気の中で大きく吸い込む。そして、吐き出す。あたりは木に覆われた、それでいて少し開けた空間。少し青みがかった湧き水のような空気。きらきらと照らされて光る透き通った黄緑色の葉っぱ。コケたちは、照らされて金と黄緑を合わさせた色に光っている。
話す言葉は何もない。話す必要は何もない。縛るものは何もない。