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-傾月-〈壹〉ビッチプリンセス 3


 ......




「7番目だね……」


 月璃るりは呟いて、正座になった。


「無様だ、最近の若者はストレス耐性が弱すぎるだろう」


 これは月璃るりから逃げ出した7番目の教師だ。前の6人は全て入信してしまったんそうだ。理由はようやくこの世界で本当に悪魔が存在することを気付いたらしい。


 月璃るりはまだ覚えている、6番目の老女が離れた時、震える指で月璃るりを目指して、呂律が回らない声で

「こいつは老悪魔に取り付かれた小さな悪魔なのじゃ!」と叫んた。


 まずこの言葉の構造の革新を無視しよう。月璃るりは王族だ。このような誹謗を言ったあの老女を三ヶ月間で牢に入れることは容易なことだ。だが月璃るりは何もしなかった。ただ無関心。


 彼女は本当に気にしない。そして彼女も本当に教師など必要ない。執事長はいつもそう言った。今、寒霜城にミサ公爵がいないので、月璃るり日琉ひるるに完璧な教育を与えるのは彼の義務だ。しかし、僅か6歳で一人で公爵の書斎にある全ての本を読んだ月璃るりに、あのつまらない先生たちは何を教えられる?


 彼女は本当は先の女教師が嫌いじゃない。他人の愚かさに怒る人はまたただもう一人の愚かな人に過ぎないってこと、彼女はよく知っている。本当の賢い者なら、他人の愚かさもとっくに考えた。まして、もしただ愚かさの関係で他人のことを嫌いになるなら、彼女はこの世界の99パーセントの人を嫌わなければならない。それはあまりにも疲れる。


 そんなに酷くなくてもいい、彼女も自分によくそう言った。


 しかし、毎回ミサ公爵のことに触れる時、彼女はいつも自分を抑えられなくなる。確かに彼女はもう公爵の顔も忘れしまった。それでも彼女は公爵の娘だ。どしてこの世界のみんなは『私は彼をあなたより知っている』という様子なのか?


 月璃るりは溜息をつき、立ち上がって廊下を歩いて行った。確かに彼女はさっきはやり過ぎだかも。後は護衛の夏涼に任せて、あの若い女教師に謝ろう。自分はそんなに教養がなく、夏涼も責任があるから。女教師は夏涼のような立派な独身男性と出会ったなら、次に会う時、高齢処女と罵ることが出来ないかも知れない。


 まあ、それもいい。夏涼はそんなにかっこいいのに、もし未だ恋の噂が出ないなら、男が好きという噂は本当なんだと思う。


「なぁ、なぁ、お姉さんは何処に行くの?」日琉ひるるは落書き帳を入れたショルダーバッグを背負って、窓から入ってきた彼女のペットー黒い子猫を抱えて、月璃るりの後で付いて来た。


 月璃るりは眉をひそめて、足が速くした。返事は無いけど、日琉ひるるはへこたれない。彼女は子猫を地面に戻して、ショルダーバッグの中から二種類の青い花を取り出して、月璃るりの前に示した。


「お姉さんはどっちが好き?」


 月璃るりは面倒くさそうに立止まって、一目みた。


 右手でもつのは鈴蘭だ、左手でもつのはジャカランダだ。月璃るりはある花言葉を紹介した『智の月財』に見た。鈴蘭の花言葉は『幸福の再来』、ジャカランダの花言は『絶望の中に愛を待っている』。この二つ種類の花は月璃るりの髪色みたい。だから彼女は少し印象がある。


「どっちでもいいよ」


 そう言って、月璃るりは独りで歩いて行く。時々彼女は日琉ひるるが煩いと思った。『姉妹だから仲良くしよう!』みんないつもそう言った。彼女はそういう言葉が嫌いだ。姉妹だから、仲良くしよう?……はあ?どこに前後関係があるのか?ましてや、この異母妹は、たった三年前に知り合ったものだ。


 月璃るりは黙って部屋に入って、ドアを閉めた後、全裸になった。 そしてマットレスの下から前に準備してあった、古ぼけた服を取り出して着た。日琉ひるるはずっと彼女の側にいた。月璃るりは話したくないから日琉ひるるも黙っていた。月璃るりにとってちょうどいい。簡単に日琉ひるるは存在しないようにできる。


 この服は月璃るりが自分で縫って作った服だ。彼女はメイドたちの服を一着盗んで、ばらして自分のサイズに合わせて作ったもの。


 着替えた後、髪をお団子にして、前に用意したファー帽をかぶった。顔に炭を少し擦り付けて、鏡の中の自分は既にみすぼらしい服を着ている男の子になったことを確認して、彼女は部屋を出た。


 廊下で、二人のメイドは窓拭きをしていながら、話していた。


「来週は月璃るり殿下の11歳の誕生日だって」


「いいなお、羨ましい、私はまだ覚えているよ。前回のとき、殿下が受け取られたプレゼントだけで、倉庫が満杯になった」


「あ〜あ〜私も試したい……みんなに愛されているその感じ」


「運が違いすぎいぃぃ、ねえ、知ってる?先日、殿下が自分の20枚の最上級のドレスを裏庭で焼き捨てていたよ」


「えええええええ?なんで?」


「自分の誕生日パーティーに参加したくないらしい」


「わがままだね、欲しいものは全て手に入られるから、甘やかされて育ったんだな」


「気を付けて、そういう話が殿下に聞こえたらまずいよ」


「あれ?さっき、誰かが私たちの後ろを通り過ぎなかったっけ?」


 メイドたちの注目を避けて、月璃るりは中庭を通り抜けて、公爵邸の壁の側に立つ大きな木に素早く登った。


 この木に登るのはもう何百回だ。過去、夕日が西に沈む時、彼女はいつもこの木の頂点に登って、あの寒霜城の巨大な城門を眺め想像して、彼女の英雄と呼ばれだ父はいつか五色の駿馬に乗って、この世界に一番威風堂々とした軍隊と一緒に凱旋する、あの時、彼女は木の上で一番早く見ることができる。


 月璃るりとミサ公爵が離れ離れになった時、彼女はまだ1歳だった。普通ならば、彼女は父のことを全て忘れていたはずだ。しかし、どうしてだか分からないが、彼女は少し覚えている。彼女の頭を撫でる大きな手と、あの手首の上、『Ab』の紫の刻み。だから彼女はいつも木の頂点に座って、空想上の遠い嵐の大洋の波を蹴って、想像する、父が戻る時、再びあの大きな手で彼女の頭を撫でる。


 しかし彼女はどれだけ待っても、公爵は帰ってこなかった。みんなはいつも彼女にこう言った。例えパパとママがあなたの側にいなくても、みんなはあなたのパパとママよ。


 そして、彼女はだんだん分かるようになった。


 誰もがあなたを愛していることは、誰もあなたを本当に愛してないのと同じだ。誰もがあなたのパパとママだということは、あなたは実際にパパとママがいないと同じだ。


 彼女にあるのは、呼吸すら媚びを売る顔で褒めてくれる『パパとママ』だけだ。


 これが分かった後、彼女はもう父を待つためにこの木を登るのではなく、別の目的のために登った。


 月璃るりは木の頂点に登って、木に縛ってあった縄を公爵邸の壁の外に投げた。地上で、彼女を眺めている日琉ひるると、日琉ひるるの周りを走り回っている黒い子猫がいる。


「付いて来ないで。それから、もし夏涼に話したら、ぶっ殺すぞ」


 くだらないセリフだが、馬鹿と話し合う時、直接の言い方のほうがいい


 もし『勇気があるもんなら夏涼に言ってみろ』って話したら、多分日琉ひるるは本気で夏涼に密告するかも、彼女はまだ反語がわからない。


 話が終わった後、月璃るりは縄で地面に降りて、振り返って、日琉ひるるは木を登れないことを確認して、彼女は公爵邸を離れた。


 最近日琉ひるるは木を登ることを覚えた。一昨日、日琉ひるるは理由が分からずに裏庭でもっとも高い花樹を登って、その上は最も香りが良い花があると言った。結局、降りることができないで、その上で激しく泣いていた。仕方が無い、月璃るりは夏涼を呼んで、日琉ひるるを助けた。この件が終わた後、夏涼はまた他の人たちに保母と呼ばれた。月璃るりは凄くムカついた。夏涼は彼女の護衛だ、保母ではない。


 彼女は本当に日琉ひるるが嫌いなわけではない、この三年間、日琉ひるるはいつも彼女の側にいた。確かに時々彼女を嫌がらせる。しかし多くの場合は、彼女はただどう日琉ひるるに接していいかわからない。


 どうやっていい姉さんになるのか?誰も教えてくれない。まして彼女も分からない、自分は本当にいい姉さんになりたいのか?


 二人の出会った日は月璃るりの8歳の誕生日だった。あの誕生日の3日前、『誕生日の時、あなたは大切な人と会えます。』執事長は突然彼女に言った。月璃るりはやっと公爵と会えると思った。しかし誕生日当日、執事長は見知らぬ女の子の手を繋いでいて、ぼんやりしている月璃るりに言った、『この子はあなたの妹です』。そして使用人たちはケーキを出した。ケーキの上にはいちごクリームで書いた『仲良くしよう!』の文字がある。


 どうする?決まってるじゃない?心が広い彼女は初めて会った妹にケーキを全部食べてもらった。当然、顔に。


 それからも次々と証明した、彼女とこの異母妹は全然共通点がない。唯一の共通点は二人の父は同じ側にいないこと。あとは二人の母は同じとっくに死んでいることだけ。





 公爵邸を出て、どれくらい時間が経ったのだろう。月璃るりは一人で街と市場をふらふらと歩く。


 彼女は金を持っていない、目的もない。ただ街と市場を散策している、路地の匂いを嗅いで、露店の雑踏の音を聞いて、店の看板を数えて、最後には、街の姿を心の中に立体で写して、想像してみる。もしいつか彼女は寒霜城から逃げ出したら、路線をどう描けばいい?


 ドン!


「ああっ!」


 月璃るりは市場の織物のエリアを歩ている、後ろから急に何かぶつかった音が聞こえた。振り返ると、目の前に見たのは、子供の物乞いが背の高くて金髪の商人とぶつかって、商人が白いドレスを手から離した姿だった。


 商人は悲鳴をあげって、地上のドレスを素早く拾った。あれはとっても上等なドレスだ。ドレスの腰に精緻な鳳凰の刺繍がある。赤い羽根がきらきらと輝いている。


 けれども、今、精緻な鳳凰は幾つかの真っ黒のしみが付いてしまった。


「お前!」


 商人はすごく怒った。彼はドレスを側の使用人に任せて、両手で地上にいる子供の物乞いを頭の上に持ち上げた。


「お前、何しやがる?この【浴火鳳凰】は最低でも7枚の生命月幣の価値がある。お前みたいの物乞いには、一生稼げない金額だ!」


 月璃るりは興味を失って、もう一度歩き始めた。このような揉め事は市場でよくある。市場をしゃにむに走り回る、これは小さな物乞い自身の問題だ。


「ご、ごめなさい……」泣そうな様子で、子供の物乞いは弱気な声を出した。


 あの声を聞いた後、月璃るりは再び立ち止まって、怪しげな顔で振り返った。想像する人を確認した後、月璃るりは自分の額を押し付けながらため息をついた。


 子供の物乞いの側に黒い子猫がいる。仔の白い耳は立ち、ニャーニャーと短い声で鳴っている。あの仔は主人と同じ愚かなやつだ。自分は犬と思っている愚かな子猫、月璃るりは知っているのはただ一匹しかない。


 よく見ると、この子供の物乞い、それとも日琉ひるるが着ている服は服というより、むしろ数枚の布切れを縫い合わせたものだ。多分月璃るりを学んで、メイドの服を材料にして、自分で縫って作った服だ。


 しかし月璃るりがしたのは、ただ自分のサイズに合わせただけ。日琉ひるるにはこんな技術はない。作ったものは使用人の服より物乞いの服みたいだ。そして白くて柔らかい頬には炭を擦り付けすぎたせいで、月璃るりまでもしばらくわからなかった。


 今、この汚くて小さい頬はぶるぶる震えている。


 日琉ひるるのかわいそうな樣子を見て、月璃るりは少し不愉快になった。もうついてこないでと言ったのに、結局、すぐに事件を引き起こした。


「お前は一体何処から来た?市場に何してる?まさか盗みをするつもり? 」商人は激しく罵りながら、日琉ひるるをどんどん高く挙げた。


「あぁ、あう……私はお姉さんを探している」日琉ひるるは小さい声でいった。目に涙が溢れてきた。


 月璃るりは白目をむいた、日琉ひるるは彼女の後ろに付いてきていたと思っていたが、まさか日琉ひるるはまだ彼女を探していた。月璃るりが今前にいることに全然気つかなかったらしい。


 彼女たちは本当に血縁関係があるのか? 愚かすぎ。


 少し考えて、月璃るりはファー帽のつばを掴んて、密かに離れるつもりだ。日琉ひるるはまだ彼女に気付いてない。そのままほっといて。


 この寒霜城は何処でも公爵の勢力だ。どうせすぐ沢山の人が日琉ひるるを探すだろう。この城にいる限り、日琉ひるるは絶対安全だ。


 パンッ!


 ビンタを張る音が鳴った。


 月璃るりは再び振り返った時、黒い子猫は商人のズボンのすそを引っ掻いている。日琉ひるるの右耳は赤くになり、すすり泣き始めた。


「お前のクソ姉が来ても無駄だ。これは細い銀線を紅の染料で漬けて、一本一本縫ったものだ。もし水で洗ったなら、すぐ艶がなくなる。今この状況、もはやばらして縫い直すしかないさ。お前たちみたいな物乞いに、その金を払うことができるか?あぁ?」日琉ひるるにビンタを張った後、商人は怒りを鎮めず、ますます怒った。


「お姉さん……ごめなさい……」


 月璃るり日琉ひるるの様子を見て、眉をひそめた。


 愚かな、愚かすぎる。怒らせたのは目の前の商人だ、月璃るりではない。どうして月璃るりに謝った? まして彼女は月璃るりが前にいることを知っていない。謝ることは誰が聞くの?どんな状況も、いつもお姉さん、お姉さんと叫んだ。少しは独立できないか?月璃るりが6歳の時、お姉さんもいなかったわ。


 だけとこのような愚かな妹に、月璃るりもビンタを張ったことがない。妹に初めてビンタを張る権力を他人に奪われたなんて。少し考えたら、本当に腹が立つ。だから、彼女は嘆いて、商人に向いて歩いてゆく。


 商人の後ろからきた月璃るりをみて、日琉ひるるは目を大きく見張った。月璃るりは人差し指を口の前に立てた。


「おい」月璃るりは声を低くして、商人の肩をたたいた。

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