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鏡理世界・裏  作者: 白絹 纏
プロローグ - 手記
1/6

手記

???「なんだろう、このノートは。……【手記】……? 読めばいいのかな…? ……とりあえず開いてみよう」

 何から書いていけばいいのかな。


 職業柄と言うほどでもないけど、こういったモノは少し苦手としてるんだ。


 論文だったらすぐに書けるんだけど。


 ……ゴホン。愚痴はともかくとして。


 えっと、まずは感謝しなければいけないね。


 え? 何について、だって?

 この手記を読んでくれていることに決まっているじゃないか。

 苦手なモノを頑張って書いたんだよ。もう少し優しく扱って欲しいね。


 ガラスより脆いハートを持ってるからね!


 そんなことを書きたかったんじゃない。真面目に行こう。


 君がこれを読んでいる時、僕はまだ生きているはずだから。

 一通り読み終わったら人里にでも行って、僕に会いに来てくれると嬉しいな。

 いろいろと話したいことがあるからね。


 さて、前座はこれくらいにしておいて。

 本題に行こうか。


 いきなりだけど、君は「転生」というものを信じるかい?


 そもそも「転生」というものは世界各地の宗教にあった思想の一つ。

 宗教によって意味合いは異なるけど、大まかに言うなら生まれ変わることを指す。

 現代では人間には「魂」や「霊」といった不死の根源が存在しており、「転生」を繰り返していくことによって「魂」や「霊」的に進化し、やがては神に近い完全な存在になる、または完全な存在による完全な社会が実現されるという説が一般的だね。


 だけれども、実はこの説は十九世紀頃に生まれた新説なんだ。


 「ニューエイジ」という宗教・文化的思想によって生まれたものなんだよ。アメリカの対抗文化の流れを汲む潮流で、十八~十九世紀の秘教的な伝統や近代神智学を受け継いでいると言われている。

 簡単に言ってしまえば宗教ではないけど新興宗教のようなもの。この思想によって新興宗教が生まれたと言っても過言ではないかな。現に「ニューエイジ」の影響を受けた新興宗教は数多く存在するからね。


 そして今君に問うている「転生」の概念はこれじゃない。

 これだけ語っておいて今更みたいな顔をしないで欲しいな。ここからが重要なんだから。


 さて、僕がここで問いたい「転生」は、「輪廻」と呼ばれるもの。

 インドにて生まれた転生観で、生まれ変わりを流転として捉える思想。

 人間を含めた全ての生物は永遠に『(カルマ)』の応報によって、「輪廻」という言葉にもあるように車輪がぐるぐると回転し続けるように繰り返し生まれ変わる考えを意味する思想だね。


 ここで本題に戻るけど、君は「輪廻転生」、または「転生輪廻(てんしょうりんね)」といったものを信じるかい?


 うんうん。

 君のその反応はよくわかるよ。

 僕だって最初はそんな感じだったからね。


 まあでも、君の記憶が確かならば。

 ついさっきぐらいに変な映像を見たような気がしないかい?


 そうだね。

 まるでトラックが自分に向か(・・・・・・・・・・)って突っ(・・・・)込んできているような(・・・・・・・・・・)、そんな感じの記憶は無いかい?


 あ、いや。

 今のは物の例えだからね?

 テンプレを例として挙げてるけども。


 ごほん。

 話を戻そうか。


 老衰?

 事故?

 事件に巻き込まれた?

 戦争でも起きた?


 どれかは解らないけれど。


 ここは死後の世界。

 「向こうの世界」で死んだ人々が行き着く場所。

 「輪廻転生」とは少し違ってくるけど、死者は全員がこの世界を一度経由するんだ。

 日本風に言えば、「黄泉の世界」になるのかな?


 何故行き着くのかはわかっていないけどね。


 今のところ、死亡している人間は皆こちらに来ている。

 君の祖父母や有名な人に会えるかもしれない。


 これから変わっていくかも知れないけどね。


 そんな感じで、君は一度死んで、別な世界で生き返ったと、そういうことだね。うん。


 ああ、勿論僕も死者と言う名の生者の一人だよ。

 だってここは死後の世界。全ての(カルマ)が集まる世界なんだからね。


 自分の現状についてはこれでいいかな?


 それじゃ次。

 君の身の回りのことについて。


 まず、君が今立っている大地は【パンゲア大陸】と言う。

 地球だと、まだ恐竜とかが生きてた時代の、プレートが移動して今の世界地図みたいな形になる前の大陸だね。


 こっちの世界だと、取り合えず世界一広いと思われてる大陸として、そう名付けられてる。

 総面積が地球の表面よりも広い化け物大陸だよ。


 うん。訳が分からないよね。

 でも、これは事実だから。

 そう割り切って行かないと生きていけないよ。


 そんでもって今君の目の前にあるモノだけど。

 君の目が節穴になっていなければ、目の前にあるものは紛れもない現実だということが分かるはずだよ。


 それが一体どういうものか、知りたい?


 ……ふんふん、なるほど。

 「知りたい」ねぇ……。


 んー、残念ながら今は教えられないかな。


 僕から直接教えてあげたいのも、ちょっとあるかな?

 あんまりここで教えるのは【ルール】から外れるからね。


 ……おっと。

 いけないいけない。


 短いけど、今教えられるのはここまで。

 ……なんかすごく短くなってる。おかしいな……。


 まあいいか。所詮これは【手記】だからね。

 これ以上知りたかったら……。



 ネットや本から得ていくんじゃなくて、自分の力で見つけるのもアリだと思わないかい?



 改めて、ようこそ。


 ここが、君がもう一度生きていく世界だ。


 ……この表現は違うね。間違えたよ。


 ここは、君がもう一度「生きていかなければならない」世界だ。


 君が僕のいる場所に近づくことが出来たら、教えてあげるよ。



 この世界を、ね。




                        とある研究者の手記より

???「……これを知ってどうしろと? ……会いに……行けばいいのだろうか……。

   …………良く分からない……」

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