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異世界で嫁に行き遅れました  作者: 白川れもん
本編
4/21

ラン様とイサック

いつもより、たぶん、少し長めです。

 うふ、うふふふふ、うふ。


 部屋の窓から、剣を振るっているイサックが見える。

 はぁ、ラン様がいる、幸せ! 眼の保養だよ。なんて素晴らしい!


 こんなによく見えるなら、太陽も良い働きをする。

 ラン様ー! と叫びたい衝動と、今日も戦っているぞ、私!



 じーっと見つめていると、私の視線が届いてしまったのか、イサックが顔を上げた。

 びくり、と大袈裟に私が反応してしまったので、どうしていいか分からず、瞬きを何度もした。


 イサックは無表情のまま、私を見つめている。この距離では、瞳が見えない。怒っているのか、なんなのか検討もつかない。

 ところで私は、ここから離れて良いのかな? まだ見つめてくるから、このまま見てればいいのかな?

 てか、見すぎじゃない? はっ、まさか、部屋の中が見えてる? ラン様が飛び散らかってますか!


 背後を気にしたり、何やらやって、見えていないことを確認してから、もう一度、イサックに眼を向ける。

 まだ見てた! え、なんなの?

 もしかして、また怒ってる? 毎回視線が飛んできて気分でも害してしまったのかしら。



 すると、何を思ったのか、イサックが手を振ってきた。


 何事!? あの、あのイサックが! 珍しくて、私も振り返してしまう。

 あ、これあれかな? 手を振ってから気づいたけど、もしや私ではない?

 下の階とか、上の階の人に振っているのでは? とか色々考えてしまった。

 見るだけで楽しかったのになあ。



 今も、イサックがよくわからない。



 昼食の知らせに、イサックがやって来た。

 ちょっと照れくさくて、ぎこちない私に比べて、先程の事など、無かったかのように「お時間です」と迎えに来た。あれ、さっき見つめあってたのは、白昼夢?


 私が地図を片手に食堂を目指すと、イサックは後をついてきている。


「先程、シャンリ様は、その、窓辺で何をなさっていたのですか?」


 ぎくっ! あ、あれ、一人時間差かな? まさか、毎回、アニメの主人公に重ねて、舐めるように見てました、とは言えない。


「えっと、剣の、練習の様子? を、ね」


「……騎士が、お好きだとは、知らなかった」


「いや、まあ、騎士、というか、そうね」


 確かに「光りの騎士」は好きだけども! いや、あの、と、もごもご話していたら、前方から見知った顔が。

 さっと、顔が曇るのを、自分でも分かる。


「おや、シャンリではありませんか、奇遇ですね!」


「ええ、そうね、サラン」


 私とかつて婚約を結んでいた、サランだ。リンに会いに来たのだろう、高そうな服に身を包んでいる。


「君にはまだ、言ってなかったか。その節は、申し訳なかったね」


「ああ、気にしないで」


 婚約破棄の件だろう。あれから、ろくに顔を会わせていないから。私は本当に気にしていない。好きだった訳でもないし。が、サランは、どこか楽しそうだ。私を見てニヤニヤしている。


「申し訳ないね、本当に。もう、結構な歳だろう? 僕のせいで行き遅れたと言っても、過言ではないでしょう? 僕は罪な人間なのだよ!」


「いえ、そんな事」


 ニヤニヤとしていた顔が、一転。顔色が少し悪くなった。どうしたのかと眺めていれば、視線は私ではなく、その後ろ、恐らくイサックに向かっている。


「あ、相変わらず目付きの悪い従者だね。僕は男にも、罪を作ってしまうのかな?」


「え、あの?」


 更に顔色が悪くなったサランは、瞬きを物凄いスピードでしている。大丈夫かしら?

 イサックが背後にいるため、私は分からないが、そんなに怖い眼をしたりはしないはずだけど。

 振り返りたいけども、サランと話しているのに従者を見るのは失礼だと、押しとどまる。



 イサックが背後から低い声を出した。


「……お話は以上みたいですので、行きましょう、シャンリ様」


「え?」


 言うや否や、有無を言わさず、私の手を取り、歩き出したイサック。

 イサックは苛立っているのか、歩調がいつもより早い。


 私の脳裏には、ある光景が浮かぶ。


 こ、これは! アニメの、ラン様だ! 燃え盛る炎の中、逃げようとしないアシュレイの手を取って、出口まで引っ張るんだよね! あのシーン羨ましい! なんて思っていたけど、まさか、ラン様がいたなんて。

 イサックはやはりラン様だったんだ! 


 手も大きいし、温かいし……恥ずかしい! 落ち着け、私! 鏡の自分を思い出せ。他意は無い。そうだ、私みたいなのに、仕事以外じゃ、近づかないから!

 深呼吸をしていると、イサックが不意に足を止めた。


「ぶっ!」


 前を見ずに深呼吸をしていたから、思いっきりイサックの背中にぶつかった。


「大丈夫ですか!」


 距離が近くて、至近距離から顔を覗かれる。恥ずかしい! 私の見苦しい顔を、見てもらうなんて。イサックからしたら罰ゲームに違いない。


「だ、大丈夫よ!」


 手を棒にして距離を取ろうかと思ったが、手を握り締められたままだった。

 んん? やばくない?

 至近距離で見るイサックは、とても綺麗で、睫毛も長い。必然的に見上げる形になるが、イサックに死角はない。どこから見ても、綺麗です。

 でも、近くで見ると、いくら似ていても、やはりラン様ではない。イサックはイサックだった。

 遠目だとラン様だけど、近くだとイサック。「私はどっちも、好きだな」なんて考えてしまった私、死刑!


「あ、あの、シャンリ、様」


 瞬きをバサバサ繰り返したイサックは、ほんのり頬を染めて、私を見つめてきた。

 どこか最初よりも近づいた気がする。


「な、ななな、何かしら!」


 いつになく真剣な表情に、ドキドキする。何だろう、また怒られるのかな?

 さっき怒ってたもんね、サランに。

 それに、興奮しているのか、鼻息も荒い気がする。


「あ、あの、俺」


 俺? イサックが俺? 何だろう、やっぱり何か怒っているのかしら。


 近すぎる距離に、目線が泳いでしまう。うー、恥ずかしいな、早くしてくれないかな! もう!


「あ、あの、イサック? な、なんの様で、」


「お姉様! イサック!」


 突然のリンの声に、びくりっと大きく肩が揺れた。

 やばい、殺される! よりによってリンとは、殺される!


 声からするに、イサックの背後。

 私からは死角になって見えない。かといって、イサックが手を離す様子はない。


 イサックから少し顔をずらし、背伸びする「ちょっとごめん」とイサックの肩に無理矢理離した片手を置いて、肩越しにリンを見た。

 慌てた、必死の様子が見えた。こちらに向かってきてる! ひぃっ! こ、殺される!

 何の反応も見せないイサック。きっと、この場を静める方法を、考えているんだろうな、と静かに元の位置に戻ろうとしたとき。


 イサックが何を血迷ったのか、抱き締めてきた。


「えっ!」

「はぁ?」


 私とリンの声が重なる。それもそうだ。いの間にかほどかれていた手、イサックは両腕で、私を力一杯抱き締めた。

 背中を丸めて抱き締めている為、リンにも理解できたのだろう。


「ちょ、あの?」


 私はパニックだ。腕を回すことも出来ず、ただワタワタと宙を彷徨うだけ。

 あ、良い匂いがする。懐かしいイサックの匂い。そんでもって温かい、逞しい! なんて思っていられたのは、あっという間で、意外と大きかったイサックは、ただ無言で抱き締める力を強めた。

 う、苦しい! メキメキと音を立てそう。私とイサックは、このまま融合してしまうのでは? と思うくらい、密着している。


 誰でも良い、助けてくれ、と顔を必死に上げると、驚愕な表情を浮かべるリン。ただ立ち尽くしている。

 くそ、やむを得ない。


「うっぷ! あの、イサック? いたい、くるしい、です!」


 バンバン、と肩や背中を叩けば、少し緩まる腕の力。

 それでも、無言を貫き通すイサック。


 何、この感じ。緩まったのは良いが、離してくれる気配は無い。

 これは、怒ってる? 何かしただろうか、私。



「……イサック?」


 優しく問いかけてみた。

 すると、イサックは額を、私の肩に押し付けてきた。


 イサック、可愛い!! これはもしかして、怒っているのではなく、デレているのでは?

 いつもツンツンしてるから、溜まったデレが来たんだ! そうか、イサックはツンデレだったんだね。可愛いじゃないか!


 頭を撫で回したい衝動に駆られるが、リンが見ているし、下手なことをすれば、とんでもない目に遭う。



「……シャンリ、様」


 ぼそっと少し掠れた声で、吐き出すように呼ばれ、思わず笑みが浮かぶ。可愛い、まるで子供みたいだ。

 心地良いなあ。


「な、何をなさっているの! 昼食に、遅れてしまいますわ!」


 まだ動揺が収まらないのか、リンの声が裏返っている。


 ぴくり、と微かに反応したイサックは、私からゆっくり離れた。

 そして、顔を伏せたまま「申し訳ありませんでした」と吐き出した。


「気にしないで、私は大丈夫よ」


 そっと目の前にある金髪に触れると、肩が微かに揺れ、髪の隙間から見える耳は、赤く染まっている。


「昼食に行きましょう、イサック」


「……はい」


 私がリンに向かって歩き出すと、イサックは大人しく着いてきた。

 皆無言のまま、リンは終始イサックを気にしていたが、待っていた両親と、いつも通り、食事をすることになった。


「……私、混乱しておりますわ」


 主食の鮭のムニエルを食べている時だった。それまで黙っていたリンが、皿を見つめながら呟いた。


 両親も何かを察したのだろう、何も言わない。


 言うべきだろうか、あれは、一種の事故だと。サランの件で、イサックが怒り、彼の中で何かが起こり、混乱していたのだと。そして、落ち着く為の、行為だった、と。


 言うか否か、考えている間。

 リンは、自分に語りかけている様だった。


「私、ずっと、イサックが、好きよ。……でも、イサックの気持ちなんて、考えたこと、無かったわ」


 誰も、何も言わない。ただ、口へ運ぶ手を、止めてリンの言葉を聞いているだけだった。

 私は、何て声をかければ良いのか、分からない。どんな言葉をかけても、プライドが高いリンの事。あの現場を見ては、受け入れてはくれない気がする。それに。


「そうだった、のね。イサックは、最初から、私なんて……」


 リンから、鼻を啜る音が聞こえる。泣いているのだろうか?

 それに、これで、イサックを諦め、私の縁談が消えるかもしれない、と悪魔が隣で囁くものだから、私は耳を傾けるしかない。

 この際、別邸の件は忘れよう! 後で、どうにでもなる。それよりも、縁談が嫌だ!

 


「でも、でも! お姉様は、結婚するべきよ!」


「は?」


 予想と違う! イサックを諦めます、という話になって、私は縁談しません! っていうハッピーエンドじゃなかったのかな?

 あまりの驚きに、弾かれるようにリンを見る。リンは眼を赤くして、私を鋭く見つめていた。

 そして、席を立ち、私に詰め寄った。



「お姉様は、結婚するべきよ! イサックが、私に見向きしなかったとしても、よ! お姉様に負けるなんて、私のプライドが許さないわ! そうよ、お姉様も、イサックも! 私みたいに、なるべきだわ!」


 何、何なの? 私に負けるって何? 勝負した記憶無いですけど?

 リンは鼻息を荒くし、顔も赤く、完全に怒っている。パニックに陥っているのか、いつもより早口だ。


 それよりも、どうして上手くいかない! 嫌よ、私は絶対嫌!

 これ以上、心が傷つくくらいなら、この際!


「わ、私は、え、縁談なんて、い、嫌よ……しませんわ!」


 言った、言ってやったわ! 私が反抗なんて、初めてでしょう? どうだ、リンよ、これがお姉様なのよ!


「また、断られるから、かしら? ふふ、お姉様、傷つきやすいものね」


 リンが、笑い、平静さを取り戻した。

 完全に見下されている。どうせ、破談になるわよね! この、ぶす! と言われている気分。泣きたい。

 返す言葉も無いです、と黙っていた。正確には言葉を探していたが、肯定するのも否定するのも、結局は同じでしかない。


 私の代わりに声を発したのは、お父様だった。


「シャンリは、縁談が嫌いか」


 一瞬、その言葉が誰に投げ掛けられているのか、分からなかった。私? お父様が、私に投げ掛けているの?

 リンも、口を閉ざし、自分の席に戻る。


「は、はい」


「結婚は、したくないか」


「そ、それは……えっと」


 縁談は嫌だ。だが、結婚は、と言われてしまえば、結婚事態に嫌悪は感じない。かといって、物凄くしたいわけでも、無い。

 なんと答えるべきか。


「結婚したいと思うなら、すればいい。お前は、自由だ。シャンリ、何かあれば、いつでも言うと良い」


「お父様……でも、私っ」


「良い。お前が気にする事ではない。俺も少し、困惑していたのだ。何も、言わなくて良い」



 優しい。いつになく、優しい。今までが嘘のようだ。縁談や結婚といった話が上がる前、私が十六歳以前の、お父様が、ここにいるわ!

 リンもお母様も、唖然としている。お父様の言葉が、信じられない、といわんばかり。

 私だって、そう。信じられない! デレだわ! イサックといい、お父様といい、今日はとてつもなく珍しい日だわ。


 正直、お父様の事は、破談され続けたときから、苦手だったけれど、今、たった今、全て受け入れたいわ。

 お父様、やっぱり私の事を、考えてくださっていたのね!





 食事も終わり、再び迎えに来たイサックに、リンやお父様、お母様は、何も言わなかった。


 私の後をついてくるだけの、イサック。昨日よりは早く部屋に着くことができた。

 まあ、遠回りになってしまったのだけれど。


「……シャンリ様、改めて、先程は、申し訳ありませんでした」


 振り返ると、イサックは頭を深く下げていた。


「気にしないで、イサック。サランから助けてくれて、ありがとう。サランは、その、少し苦手なの」


「いえ、サランは、私も嫌いですから。それよりも、自分の立場を考えず、あのような行為を、お許しください」


 嫌いとは、言ってないぞ、私は。まあ、口がうるさいし、少し意地悪だから、結婚しなくて良かったと思っている。

 というか従者の言葉では無いぞ。嫌い、なんて。


「いいのよ、イサック。従者とか、関係ないわ。それに、私も嬉しかったもの」


「う、嬉しい?」


「そうよ。身分とか、関係ないわ。こうやって、何年も一緒にいるじゃない!」


 勢いよく顔を上げたイサックは、真っ赤に染まっていた。私は少し眼を見開く。どうしたイサック?

 素早く両腕を伸ばし、私の肩を掴んだ。私は無意識に瞬きを繰り返す。何事!? そして顔近い!


「う、うう、嬉しい、とは? それは、どういう意味でしょうか?」


 また、興奮しているの? 私の肩を掴む力が、少しずつ強まっている。何これ、昼食前の再現?

 イサックは何がスイッチか分からない。

 そして、どういう意味とは? 何の事だかさっぱり。


「え、あの、意味?」


「意味です! まさか、何の意味もなく、俺に、嬉しい、等と?」


 痛い、急に、肩が痛くなってきた! 何? 何に怒っているの? 見れば苦痛を訴える、イサックの眼。痛いのは私だけど?


「ちょ、イサック! いたい、いたいです!」


「どうなんです! ありますよね? 嬉しいって、そういう事ですよね? そういう、意味、では、ないの、ですか?」


 もしかして、イサック、な、泣きそう? 意味の意味は分からないけど、可哀想になってきた。


「そ、そういう、意味? かもしれないわ、わからないけれど」


「……わからない? つまり、無自覚だと、そういう事ですか」


 何のことやら、ブツブツ考え始めたイサック。肩を握り潰さんばかりの力が、弱まる。……助かった。


「とりあえず、イサック、顔が近いわ」


 肩が緩まったことにより、意識が肩から、目の前のイサックに。綺麗な顔を近くで見ると、どこを見ていいか分からない。途端に恥ずかしくなる。右の方にある、壁の装飾でも見てようか。


 顔が暑い。きっと、今の私は真っ赤だろう。

 端から見たら、さぞおかしい。二人して、顔を赤めているのだから。……そう考えると、なんだか、恋をしている、二人、のような……って、何を考えているの! 

 私は、破談を幾度も体験してきた。私には、こんな、物語に出てくるお姫様みたいな、あるわけがない! おこがましいぞ、ぶす!


「い、イサック?」


「…………」



 いつまで経っても、イサックが離してくれる気配は無い。仕方なく、イサックに眼を向けると、こっちを見ていた。

 普通に、びっくりする。え、何? 本当に、何? あまりに真剣に見つめてくるので、逸らすのも失礼な気分。

 だからといって、瞳を見ても、何も分からない。何を考えて、こんなに見つめてくるのか?

 恥ずかしさが増す。


「イサック? あの、恥ずかしいのだけれども」


「シャンリ様は、恥ずかしいのですか」


「イ、イサックは、恥ずかしくないのかしら?」


「恥ずかしいです。物凄く」


 では、何故見る? こんな至近距離で、互いに恥ずかしがりながら、見つめあう。

 カオス。なんだこの、イカれた空間は。世にも奇妙過ぎる。でも、嫌な気がしないのは、何故?


「…………ふふっ」


「な、何故笑うのですか」


 笑えてきた。やばい、一回笑うと、止まらなくなる! おかしい! おかしすぎるよ! 変だよ、二人で馬鹿みたい!


「ふふふっ、くっ、あははっ」


「…………」


 イサックは唖然としている。どうしたんだろ? 笑いながら考えれば。


「はっ! ご、ごめんなさい!」


 私としたことが! 口を開けて笑ってしまった! ああ、最悪だ。こんな至近距離で口を開けてしまうとは! 歯並びの悪い、汚い口を、イサックに見せてしまった! 今まで気を付けてきたのに。手で口を押さえる。

 反射的に、身を引こうとすると、イサックがそれを阻止してきた。肩にあるイサックの手に力が入る。


「平気です! 俺、シャンリ様の笑顔、好きです! だから、謝ったり、隠したり、しないでください!」


 何を言われたのか理解できない。好き? 私の、コンプレックスの一つが? 冗談でしょ?

 前世での中学の時のように、からかっているのだろうか。影で、誰かが笑っているのだろうか?


 イサックを何度見ても、真剣そのもの。本気、なの?


 は、は、ははは、初めて言われた! 恥ずかしくて、照れくさくて、先程よりも顔に熱が集まる。

 動悸も早くなる。い、いい、いいいい、いたたまれない!

 両手で顔を覆った。隠れたい! 恥ずかしい! こんなの、前世合わせても、初だ!


「……あ、あり、ありがとうう、う、ござ、ございますす」


 動揺でよくわからなくなったが、お礼は言えたと思いたい。


「こちらこそ、ありがとうございます」


 何故イサックが私にお礼を? そう思ったが、イサックの両腕が、私から離れた。

 イサックの顔が、羞恥で見れない私は、イサックを見ることなく、静かに部屋に入った。



 直ぐに問題が浮上するとは、知らずに。



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