表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
98/164

97話目 ぐだぐだ

 興味本位で尋ねたら存外に深く立ち入ってしまった。そのおかげで何故あのボロスの娘であるリーディアがこんなに人懐っこいのだろうかという疑問の答えが、つまり彼女は単純に人ととの触れ合いに飢えていたのだろうということがわかり、そしてそれと同時にそんな娘をポイとくれてやるんじゃねえよ、という思いが頭を過る。


 話を聞く限りではボロスやリーディアがどっかの貴族の末裔というようでも無さそうであり、彼女がそう振る舞うための教育を受けたということも無いようである。そうなるとよくもまあ知らない男に褒美として与えられる事に抵抗しなかったなあと思うが、あの時の彼女の様子を思い出して『そもそも剣術を教わる事しか頭に無かったんだろう』と俺は納得する。


 それから数ヵ所ほどリーディアに連れられて見て回るが、やはりというべきかそれだけで終わってしまう程に一日は短くない。それぞれの距離が離れていたので多少時間はかかったがそれでもまだ日は高く、時間に直せば凡そ二時にしかなっていない。


「それで、これからどうする」


 元々の目的を早々にどちらも達成してしまったため、やる事が本気で無くなってしまった。ついでに気も抜けてしまっているので俺の頭は働かない。念のためにとどこか観光名所のような場所は無いかとリーディアに尋ねてみるも、『いや、そういった場所に心当たりは無くてな……』と言われてしまう。現地人なのに何故と思わなくもないが、恐らく剣術と自分だけの秘密の場所を探すのにしか興味がなかったのだろう。


「大きくなってからそういった場所には行かなかったの?」

「手伝えるようになってからはずっと父の手伝いをしていたからな、すまない」


 いつまでもそれだけしかしないという事も無いだろうと考えたのか、シャルがリーディアに尋ねるも返事はご覧の通りである。加えてリーディアが申し訳なさそうにして深々と頭を下げてしまったので謝られたシャルの方がわたわたと慌ててしまっている。


 もう何度か繰り返しているがこれ帰宅していいんじゃないかなあ。日本に居た時もこんな風にぐだぐだになったら解散しているし、そういった流れとか空気とかはこっちの世界でも同じだと思うし。


 俺が一人頭の中で帰ったら何をしようか考えている間、彼女らはあれこれと意見を出し合って如何に時間を潰すかを議論している。やれ何処かの飲食店を見て回るだの聞き込みをして観光名所を探すだのといった意見が出るものの、決定打と言えるものは出てこないようである。


 大体の意見が出尽くしたのか二人とも腕を組んで『うーん』と唸りながら首を捻っている。俺はそろそろ頃合いだろうと思い口を開こうとしたその時、リーディアは何かを思いついたようで『あっ!』と言って顔を上げた。


「そうだ! 二人も城に来てはどうだろうか?!」


 彼女は名案を思い付いたとばかりに何度も『うんうん』と頷いているが、それはこの街に来た時に遠慮させてもらうって言わなかったっけ?


「いやあ、俺が行くと城の人達が怯えちゃうだろうし……」


 ただの住人ならばともかく、城で働いている人間ともなれば俺の顔を知っていてもおかしくない。そして知っていた場合どういった反応をされるかは……、ガイウスとかいう男の反応を思い出せば簡単に予想できる。そのため俺は彼女の意見をやんわりと断ろうとしたのだが……。


「何を言っているのだリョウ殿。先程使っていた魔法を使えば良いではないか」

「あ、それもそうだね!」


 そこら辺は彼女もちゃんと考えていたらしく具体的な案で返されてしまう。確かにそうすれば城の人達が騒ぐことも無いためシャルもその意見に同意してしまい、『それじゃ師匠、行こ?』なんて言いながら腕を組んでくるし、リーディアはといえばもう城に向かって歩き始めている。


 ふええ……、二人ともすっかりその気になっちゃってるよぉ。なんていうかね、面倒なことになりそうだから城に行きたくない、というよりもぶっちゃけボロスの野郎に会いたくないんだよぉ。


 シャルに引っ張られて城へと向かいながら俺は彼女らに水を差さないような言い訳を必死で考えるも、口をもごもごとさせるばかりで何も言えないままとうとう城の前にまで来てしまったのであった……。

あと割烹にちょっとだけ書いてる「筋肉学園」がすげえ書きたい。

でも出オチだから長編にはなり得ないし、そっち書く気力をこっちに回すべきと理性が訴える。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
※話の大筋は変えませんが、最初から150話くらいまでの改稿予定(2019/12/7)  改稿、ってか見やすさも考慮して複数話を一つに纏める作業にした方がいい感じかな?  ただし予定は未定です。「過去編」「シャル編」「名無し編」は今は触りません。触ったら大火傷間違いなしなので。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ