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150話目 赤毛の

 子供特有の甲高い声で大きな叫び声を上げられるとどうなるか。簡潔に言えば耳にすっごい刺さる。咄嗟に耳を塞いでいなければ『うるせえ!』と拳骨を落としていたかもしれない。現にシャルは顔を顰めて辛そうにしているし、ドラ助は小鳥と一緒に驚いてどっかに飛んで行った。あまりに情けないので『攻撃力45』の称号を与えよう。


「あ……、あ……」


 当の女の子はというと、ふらふらと危なげな足取りでこちらへと近づいてきている。その目だけはしっかりと俺の顔を捉えている。ぶっちゃけ怖い。顔自体は可愛いけど超怖い。


「あああああぁぁぁぁぁぁ…………」


 そして膝から崩れ落ち、この世の終わりを思わせる絶望と失望を混ぜ合わせたようなうめき声を出しながら倒れこんだ。


 なにこの子、めっちゃ情緒不安定なんだけど。俺何もしてないよね? と確認の意味を込めてシャルにアイコンタクトを取ると、『私、分からない』とばかりに顔を横に振った。微妙に通じてないけどシャルが分からないなら、多分俺は何もしてない、はず。


「えーと、初めまして?」


 うめき声をあげるオブジェと化した彼女を放置するわけにもいかないので、何とか言葉を絞り出す。すると彼女は顔をバッと上げて俺をきつく睨みながら吠えた。


「『初めまして』じゃねーよ!!」

「こんにちは?」

「そういうことじゃねえよおおおおおお!!!」


 いかん、彼女の怒りが有頂天になりそうだ。初めましてじゃない、ってことは会ったことあるってことか? いや、でも森の外に知り合いとか居たっけ? ましてや単身でこの森に突撃してくるとか、そんな常識知らずな子知らんぞ?


 やばい、全然思い出せん。そして一向に思い出さない俺に対して余計にイライラを募らせているのが分かる。そのことに焦りを覚えるがやっぱりちっとも思い出せない。え、マジで誰だっけ? そして『プッツン』という音が聞こえた。


「アンだよおおおお!!」

「アン?」


 アン、アン、と何度か呟いてみるがどうにもピーンと来ない。尚も思い出す気配のない俺に対してアンは続けて吠える。


「武器屋! ガンダスの娘! あんたの剣を超えて見せるって宣言した女!」

「ああ! あの店の!」


 そういや居たな! そんなの!

 シャルも合点が行ったのか、『ああ!』と手を叩いている。

 いやー、あれから何年経ったっけ。時が経つのは早いねー。あの時と比べてアンも成長……、成長……?


「顔に出てんぞ。ドワーフの女はこれくらいが普通なんだよ」


 じろり、と目つきを変えたアンがそう言う。種族的特性ならしょうがないね。

 とまあ、それはさておき。ようやく来客の正体が分かったとはいえ、どうしてこの場所が分かったのか、そしてそもそも――


「なんでここに来たの?」


 理由が無ければわざわざこんな場所までやってくるはずがない。こうして悠長に話しているので、まさか俺のことを殺しに来た、なんてことは無いだろうから余程の事で無ければ多少の便宜は図るつもりだが……。


「うっ! そ、それは……」

「それは?」


 先ほどまでの威勢のよさはどこへやら。『あー』とか『うー』とか言葉を濁し、中々言いだそうとしない。とりあえず家に上げようかな、と悩んでいると、彼女は突然土下座を繰り出してきた。


「頼む! あんたのところで修行させてくれ!」

「へあ?!」


 どういうことだってばよ!

久しぶりというのは、彼女の出番のことだったんだってばよ

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※話の大筋は変えませんが、最初から150話くらいまでの改稿予定(2019/12/7)  改稿、ってか見やすさも考慮して複数話を一つに纏める作業にした方がいい感じかな?  ただし予定は未定です。「過去編」「シャル編」「名無し編」は今は触りません。触ったら大火傷間違いなしなので。
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