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134話目 紅の

「ししょー!ドラ助がー!」

「またかよ!!」


 朝っぱらからシャルのSOSが飛んでくる。別にそれ自体はいいのだが、またしても駄犬(ドラ助)絡みというのがいただけない。おたんこなす(ドラ助)ネタはもういいから、飽きたから、座ってて、どうぞ。といっても流石に放置することはできないので渋々ながら現場へのっそりと向かう。


 やれ歯に肉を詰まらせただの、やれリーディアの剣を……、うん、まぁ、とにかくしょうもないことで無駄に騒ぎ立てているので、今回もどうせどうでもいい騒ぎなんだろうと思っていた。事実、あほんだら(ドラ助)がメソメソと泣いているだけで特に何かがあったようには見受けられない。


「シャル、俺もう戻っていいか?」

「待ってよ師匠! 今来たばっかりでしょ!」


 シャルが大袈裟に引き留めようとするが、どうせ今度は足の指の間にトゲが刺さったとか目に小枝が入って取れないとかそんなんでしょ、アタイ知ってるんだから。


 あからさまにげんなりとした顔をすると、シャルは幾分真剣な顔になり今度は何があったのかを告げた。


「ドラ助が飛べなくなったの」



 その言葉を聞いた時、己の耳を疑った。え? ドラゴンが? 最強の種族が? 空の覇者が? 飛べなくなった? 嘘だろ? 飛べないドラゴンはただのトカゲじゃね? でもドラ助は元々でかいトカゲだ? あれ? 何も変わって無くね?


 いかん、あまりのショックに訳の分からないことばかり頭に浮かんでくる。


 絶句してドラ助を見ていると、泣きながらも翼を羽ばたかせて空を舞おうとするがその巨体は1ミリたりとも浮かんでいない。飛び跳ねて必死に翼を動かすが、数秒と空中にいることは出来ずバランスを崩すだけで、無様にも頭から地面に叩きつけられている。何度がそれを繰り返していたが、ついにはうずくまり、より大きな泣き声だけが辺りに響くようになった。


 いかん、これはマズい。普段は能天気さを遺憾なく発揮している分、その痛ましさが半端ではない。しかもパっと見では原因が分からんというのが余計に不味い。


「なあ、シャル、ドラゴンは成長すると一時的に空を飛べなくなるとか、そういう言い伝えはないか?」

「ごめんなさい師匠、ドラゴンはお伽噺で聞いたくらいで詳しい事は……」


 長命なエルフの間で何か言い伝えが残っていないか期待しての質問だったが、エルフの間でもドラゴンは伝説的な存在なのか詳しい話は無いようだ。ヤバい、何がヤバいって他のドラゴンは俺が全滅させてしまったから、これがドラゴン特有の一時的な症状なのか、致命的な病気なのかすら分からないのがヤバい。


 しかもこういう『調査』や『診察』などに知識魔法はとことん使い勝手が悪い。あくまでもどこかの知識や情報を仕入れてくるに過ぎない魔法なので、生態すらよく知られていないドラゴンの病気など知りようもない。これが人間や、内臓とかはあまり変わらないエルフやドワーフならば知識魔法での情報収集と現代知識の組み合わせでなんとか出来ないこともないが、ドラゴンは流石に無理だ。


 ドラゴンが知識としてこの症状を知っているという、万に一つの可能性に賭けて知識魔法を発動してみるが、よく分からん情報の羅列しか戻ってこなかった。これでは単にドラゴンの知識を俺が理解出来ないだけなのか、それともドラゴンですら分からない事態が起こっているのかすら分からない。


 やべえ、割と本気で手詰まりだ。

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※話の大筋は変えませんが、最初から150話くらいまでの改稿予定(2019/12/7)  改稿、ってか見やすさも考慮して複数話を一つに纏める作業にした方がいい感じかな?  ただし予定は未定です。「過去編」「シャル編」「名無し編」は今は触りません。触ったら大火傷間違いなしなので。
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