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70分●ちょころし! 男3女3

■ちょころし!


バレンタインなんて、胃に悪い――。


■出演

  間宮 慧也  (まみや けいや)ザ★真面目な黒淵眼鏡。男。26歳。

  妃  はじめ (きさき はじめ)ふざけたミニマム大黒柱。男。28歳。

  辰賀 翔   (しんが かける)外見チャラ男。中身は常識人。男。24歳。

  黒田 夢   (くろだ ゆめ)女神天使。茶髪美人。女。24歳。

  如月 れあ  (きさらぎ れあ)可愛らしくも大雑把なアイドル。女。12歳。

  神谷 叶    (かみや かな)黒幕? 売れっ子モデル。女。24歳。


西暦2010年。






[2010年冬。開幕]


空想へ。


間宮:目が覚めた。当たり前だ夕方に寝たんだ俺は。昨日は朝から仕事で、


妃:相当疲れてた。


辰賀:帰ってきて風呂入ってバッタリ。


間宮:いま朝の、4時59分、か。


れあ:今日はお休み。


妃:あったはずの予定も無い。


間宮:彼女とは先週別れた。俺が耐え切れず別れを告げた。酔った勢いで付き合いはじめた、あの最悪な女にはもう、こりごりで。


辰賀:――リビングには、眠る。


れあ:ソファですこやかに眠っていたのは、


間宮:俺達三人が愛しく想っている君。


妃:そしてその側の机の上には、


辰賀:君が作ったのであろう、


間宮:本日バレンタインの為の手作りチョコレートケーキ。


妃:――黒淵眼鏡の黒髪の男!


間宮:俺は彼女と別れた、君がすきだから。


れあ:煙草を吸うのは金髪の男。


辰賀:オレは彼女は作らない、君が好きだから。


間宮:細身で低身長の童顔の男。


妃:僕は彼女が欲しい、君が好きだから。


れあ:リビングのソファで眠るのは、淡いふわりとした茶髪で色白の女の子 君には彼氏が居る。


間宮・辰賀・妃:そう、君には彼氏が居る。


間宮:さあ、どうする?






現実へ。


★間宮


間宮:何故か付き合ってたんだけど。そう、好きでもない女と。三ヶ月も良く持ったな、なんて思いながら。真っ白いふかふかの羽毛布団をゆっくりと剥ぎ、むくりと起きてベッドから足をおろして座る。あいつは勝手でスタイルも良く顔も美人で、外見だけは完璧な、悪魔みたいな女だった。溜め息をひとつ。

顔を両手でぐっと擦り、目が覚めた事を再認識する。上唇をつまむ、これは癖だ。考え事している時にふとやっている気がする。まだぼやけている視界の端に薄らとうつった、殺風景な自分の白い部屋。白い家具。ベッドの脇の低いコンパクトな棚の上に手をのばし黒渕の眼鏡を取り、掛ける。視力は相当悪い。元々悪かったけど二十歳くらいの時から急速に更に悪くなり、二十六の今。裸眼じゃあヘソくらいの位置までしかきちんと見えなくなってしまった。レーシック手術超受けたい。いや、駄目だ今の貯金は俺の野望の為にとっておかなければ。六十万しか無いけど。バイク新調して春に花見行きたい。あんな自分勝手な女じゃなくて、あの子みたいな可憐で可愛らしい女の子を後ろに乗せて。などと、下らない事を色々と考えながら、かなり冴えてきた頭。腹が減った。なんか、あったかな。っつか寒ぃ。そっか、風呂入ってそのまま寝たから俺、裸なのか。タンスから黒いシャツをズリズリ取って羽織り、青いチェック柄のトランクスを履き、あれ――部屋着が無い。床に脱ぎ捨ててあった、スーツの下と目が合い仕方なくそれを履く。左手で頭と耳を掻きながら、右手で部屋のドアノブを掴み、でっかい欠伸をして部屋を出た。寒い。俺の部屋の前には愛用の黒いスリッパが木の床の上に揃えて置いてあった。あの子が揃えてくれたのかな。まあいい。それを履きリビングへと進む。廊下を数歩歩けば曇り硝子つきのこげ茶色の扉があり、その先はリビングだ。何故か灯りがついている。蛍光灯じゃなくて、あのセピア色の灯りって、名前なんつーんだ。まあいいか。誰か起きているのか、こんな夜中に? ガチャリとリビングの扉を開ける。ここには二人の女の子と三人の男が住んでいて、皆他人だ。いわゆるルームシェアってやつ。リビングに入ると俺を出迎えたのは、優しいやんわりとしたあのセピア色の洒落た照明、だ、け。あれ? 何だ、誰も居ないのか。薄暗いから気付かなかったが、食事用の茶色い大きなテーブルの端っこに、何か包みが置いてあったのは気付いたけど、それ程気にはしなかった。五人も他人が暮らしているんだ。どこに何かがいつの間にか置かれていたって不思議じゃない。俺は冷蔵庫があるリビングの端へと歩き、シンク棚の横に無造作に置いてあったピザパンらしきものをそこでペロリとたいらげて。冷蔵庫の中に入っていた小さいペットボトルの、マジックで大きく“きさき”と平仮名で書いてあるポカリを開封し、グビグビ半分飲む。フゥとまた一息吐き。寝直そうと思い、リビングの天井で柔らかく輝くセピア色の照明を直接消そうと歩き出し、黒いレザーのソファを越えてテーブルに手を付き照明の紐に右手をのばす。すると、微かだが俺の耳には寝息が聞こえてきた。背後のソファから、寝息。照明を消すのは止めてソファに横たわるその人物に近付いた。淡いゆるゆるの茶色い腰までの柔らかなウェーブと、白く華奢な身体に小さな整った顔。高い鼻に長いまつげ。真っ白いワンピースから、彼女のふかふかな胸と手と触り心地の良さそうな綺麗な生足がのぞいていて、つい見惚れた。触り、たい。やっぱ、超可愛い。いつも俺と目が合うと、ぱあっと明るく笑うあの栗色の目も今は伏せてあり。気持ちの良いトーンで俺の名を呼んでくれるその唇は少し開いて優しく息が漏れている――。ああ――ホント、可愛い。好きだ、好き、好き、好き。好きだ。

好きだよ、キスしてえ。好き、好き。滅茶苦茶好き――って、おい。風邪っ――ひくぞ、寒くないのか。ってか自分の部屋で寝ろよ。まったく、しょうが無いな。


間宮「ゆめ、ゆめ。風邪ひくよ……」


間宮:――と、そんな俺の呼び掛けに彼女は応えない。右手の甲を、彼女――黒田くろだゆめの頬に少しだけ当てながら、ふわふわのくるりんとした髪をそっとかきあげた。頬はぷにぷにで温かくて。女の子の、匂いがする。ぐっすり眠っているようだ。


間宮「ゆめ、起きて」


間宮:――いや。起きないで。キスしたい。ゆめ、誰にも言えないけど。まだ誰にも言えないけど。俺ずっと君の事好きだった。ずっと前から。


辰賀「顔、緩んでんぞ。間宮」


間宮:ゆめの寝顔に見惚れていた俺の顔が静止し、夢のような感覚から瞬時に現実に引き戻される。その声は俺が入ってきたリビングの入口からは別の、北口からした。バッと振り向きゆめから離れた俺は、まだ顔が少し火照っているが奴にはそんな事気付かれないはずだ。この部屋はセピア色に輝く照明が薄らとついているだけで、人肌の色を確認出来るほど明るいとは言えない。


間宮「何、してんの。何でこんな時間に起きてんの」


間宮:――と俺は平然を装い、突然現れたその金髪の男にさり気無く問いた。

ついでにゆめの脇に落ちていたタオルケットをふわりと彼女に掛ける。


辰賀「お前こそ。オレは連休の中日だから夜更かし中っ。レポート書いてドラクエやんの! つーか何、これ食っていーの? 気合い入ってんなー」


間宮:この超偉そうな男は、辰賀しんがかける。態度はデカく老け顔の為三十路近くに見られたりもするらしいが、二十四歳現役大学院生。二個も下のこいつだが、俺よりも断然要領も良く人柄も良くて無駄に明るい天才肌。そんなこの男に俺は良く嫉妬する。ゆめが悩み事があったり、悲しそうにしている時、俺は話を聞く事しか出来ないのに対して、こいつは必ず笑かしてゆめを安心させてやれる。ごく自然に何でも解決してくれる。撫でたり抱き寄せたりも、する。ゆめとタメだし、どんな会話だって出来る。俺には――出来ない。辰賀と俺は、長机の端っこにあったモノに目を奪われ、ジロジロとそれを見つめた。


辰賀「うまそ」


間宮「何だそれ」

辰賀「見りゃわかんだろ、チョコレートケーキ。間宮が作ったんじゃねーの?」


間宮「俺じゃないけど」


辰賀「じゃあ、ゆめが作ったんかな」


間宮:一瞬ドキッっとしてしまう。ゆめが焼いたケーキ。絶対とびきり美味しいにきまってる。彼女はいつも俺達に、祝い事の時には必ずお菓子を作ってくれる。この間は俺の昇進祝いにミルフィーユを焼いてくれて。辰賀の誕生日には、タルトタタン。


辰賀「あいつにやるのかねえ。クソッあんなデブで低学歴でニートのどーこが良いんだか」


間宮「同感だな」


間宮:本当に。


辰賀「オレのお嫁さんにしたいんだけど、どう思う?」


間宮「は」


間宮:ゆめの傍に近付き、彼女の鼻をつんっと右手の人差し指でつついた辰賀は、真顔で俺にそう言った。暗がりで、余計に奴の顔が格好良く見える。ソファの前に座り込み、ゆめの寝顔をじっと見つめて。ゆめと辰賀は、お似合いだと、思う、けど俺は俺はでもそれでも。彼女への気持ちを抑えられない。辰賀はゆめを本当に好きなんだろう。ゆめを見る時の辰賀は、特別な瞳になる。多分隠してるつもりなんだろうけど。そして多分、あいつも。






★辰賀


辰賀:ハハハ。バカじゃねえのこいつ。ほんっと、間宮は真面目だよなあ。優等生過ぎ! なあ、間宮まみや慧也けいやさんよ。オレは、次生まれ変わったらお前になりてえよ。ゆめの事好きな癖に何だよ、なーに躊躇ってんの。さっきチャンスだったろ。なんでキスしねーの。ぎゅってしちゃえよ! いや、してほしー訳じゃねーけど。こんっなに可愛い寝顔しちゃって。無防備全開。ったく罪な女の子だよな。どうしたら。どうしたらオレのものに、なるかな。なんか、大事過ぎてなんっかよ。ど――――しても手、出せねえんだよな。あれオレこれって間宮と一緒じゃね。あれ。


間宮「辰賀、ゆめの事好きなの?」


辰賀:おっとー? どうした男前。


辰賀「は、はい? なんだ何なんで? どしたの」


辰賀:唐突だな。


間宮「お似合いだなって、思って――」


辰賀:おい、待て。間宮さん。かしこまり過ぎっス! お前今の言って自分で後悔すんな! アア――って、うっかりな顔すんなバカ。ハチュゲンには気をつけろウンコ眼鏡!


辰賀「間宮、頭大丈夫?」


間宮「いや。駄目、かも」


辰賀「ゆめはオレよりお前のが好みだとは思うけどねえ」


辰賀:だってお前の方がゆめと過ごす時間多いじゃん同じ職場なんだし! 断然オトナだし! 良いよなあ。カフェでゆめと毎日二人っきりか襲えるよバカ! 楽園かよ! 二人とも癒し系でさ! いーんじゃないっすか? 昨日なんてオレが外でどーでもいい奴らとどーでもいい合コンして帰ってきたら二人で仲良ーくPOP作ってやがってクッソッ! おうちで仕事すんなし! ははっ。楽しそうで良きかな良きかな。新しいケーキのビラ切って新作マーブルコーシーも切って貼って切って貼って。そんなん大企業のもとなんだから本社の奴らが作ったのがご丁寧に来るんじゃねーのかよ。オリジナルメニューPOPでアットホームな特別あったか店舗ですってか。糊とお二人のお熱でおうちのテーブル溶けちゃいますよ!


辰賀「間宮もさ、何で毎日一緒に居んのに好きの一言も言わねーの。お前それで隠してるつもりなんだろうけど、しゅきしゅきオーラ出てますから! いや、言えないのはオレもだけどね! ゆめ可愛いし、気が利くし良い子だし、たまに出す甘える声とかたまんねえ。すげえ好き。誰にも言った事無いけど。あー、喉渇いた。確か冷蔵庫に妃のポカリがあった気が。お、あったあった。いたらきまーす」


間宮「お、俺はゆめの保護者だから。」


辰賀:は? おっと、ポカリのふた蓋! ゴメン妃、もう全然残って無いけどボトル冷蔵庫戻しとくわ。空だけど許せよ!


辰賀「――何ソレ。うぜえ。ゆめ何歳だと思ってんの? もう子供じゃねえし。いつまでも保護者面して誤魔化してんじゃねえよ、ちっせえな!」


辰賀:あ。やべえ、言い過ぎた。


間宮「っ」

 

辰賀「間宮、あの」


間宮「そのまま――」


辰賀「え」


間宮「あのままの、高校生のゆめだったら俺は 恋せずに済んだのかなって。そう思わないと、思い込まないと一緒に暮らしていけないんだ。これ以上、す……うん。」


辰賀:ああ、そうか。同じか。オレも、間宮とゆめと妃とレアと、五人。この数年間。共に生活してきて。それで、もし――もし明日、一人欠け。また一人欠け、なんて事が起こったら。いやそんな事。絶対に嫌だと思ってる。ありえないと思ってる。なによりゆめが、オレ達を家族として必要としているから。レア以外、オレ達は物心ついた時から身寄りも無い。本当の家族なんてもんは知らない。ゆめが、ずっとこのまま生活して行きたいと、一緒に居続けたいとオレ達に何度も何十回も、泣いて叫んで訴えて倒れたって事があった。一緒に居て、男三人が意見の食い違いで喧嘩した事が何度あったろうか。その度にゆめは泣いて、泣いて。何も食べなくなる。塞ぎ込んで寝たきりになる。ゆめがオレ達三人の誰かのものになるという事は、多分家族の崩壊を意味する。間宮もオレもそれは予想がついていたんだろう。ゆめの為を考えるならば、オレ達は距離を取り続けるべきなんだ。どんなに好きでも。でも本当は、出来る事なら自分のものにしたい。でもゆめはそれを、きっと望んでいない。最近ようやく大人になってきたオレ達は、我慢を覚え。ゆめの為ならと喧嘩っぱやくなくなった。話し合って解決する事の大切さを学んだ。たまについカッとなって間宮や妃に暴言を吐くと、ゆめはいつも どうしてそんな事言うの って、泣く。その気持ちが、オレの全身に響いて。オレも泣きたくなる。だから彼女が泣かなくなるんなら。指を切ったって、胴体切断したって良い。あ、いや。やっぱちょっと嘘。気をそらす為に特定の彼女を作ったりするのは止めた。君が好きだから。一途じゃなきゃ格好付かない。嘘の好きを沢山の女の子に言い返して、あんなに虚しくなるのはもう嫌だ。このとんでもない想いが虚像だと思いたくない。だから。キスもセックスも好きだけど、味がいつもしないのは、本命じゃ無いからって――わかってんだよ。ハハハ。バカだな間宮。オレだって。オレだって“これ以上”想いたくない。今だって十分辛えのに、今以上好きになったら終わりだ。だってゆめを攫ったら泣くだろ。ゆめの事は好きだけど、オレとゆめ二人きりで生活したいとは思わない。キスしたいとは思うけど、結婚したいとは思えない。だってオレだってさ、間宮のさり気ない発言や頭脳に何だかんだ頼ってる。お前にしか言えない事だってある。間宮が居なきゃパソコン起動すらしねえよ。地デジ何ですかソレってなってるなきっと。妃のチャーハン週一で食わなきゃやる気出ねーし。ってか妃居ないと餓死だから。接待だか付き合いか知らんけど、飲み会ばっか行ってないでちゃんと定時で帰ってきて飯作れよ。疲れた顔して帰ってきていーように、ちゃんと毎日風呂釜洗って風呂入れとくから。レアの恐怖プリンと食パンしか晩飯に出ない生活なんて耐えられるか。間宮の和食も良いけど、妃の中華は日本一うまい。レアは、元気だよないつだって。どんなに落ち込んでも、数時間経てば自己回復してケタケタ笑ってる。レアに、おはようって、いってらっしゃい、お帰りなさいって、あのうるせぇ声浴びせらんなきゃ、落ち着かねぇ。一日のはじまりと、終わりのチャイムみたいに。あの明るさは、天性の素質だな。12歳とは思えない程、心も強いなって尊敬する部分もある。無邪気なだけのガキじゃない、ちゃんとオレ達を見てるしフォローがうまい。だから。ゆめだけが、五人での生活を望んでいる訳じゃねえんだ。


妃「なにこれ? ただいま。二人ともはやいね。ってか玄関にあった荷物って誰の? 誰か旅行でも行くの?」


辰賀:おっつ、来ましたな。つかこんなに騒がしくなっても、ゆめは起きない。すやすやと寝息を立てている。この低身長で優しい顔つきの猫っ毛茶髪少年は、きさきはじめ。早速ゆめのケーキに気付いた。オレは煙草煙草煙草っと。あー、しみるなぁ。


辰賀「おや妃くん。お帰りなさいませっと! 朝帰りなんておっとーな。あ、先に謝っとくわ。ワリイ! ってか、荷物? しらねーけどなんかあった?」


間宮「俺もごめん。半分は俺。半分は辰賀だから」


妃「え? なにが? ねえねえ、このケーキ食べて良いの? 明日部下がプレゼンやんだけど、その資料が出来てなくて手伝わされてガチ残業だよー。

あー疲れた。今日休みで良かったー。ねぇ切って取り分けて食べていーのー? 食べようよー。うまそー」

 

辰賀「いやいや食べちゃ駄目だろ。再び解説してやるが、このちいっさい少年は、仕事からようやく帰ってきたのか黒いスーツ姿で、ゆめが作ったと思われるチョコレートケーキをまじまじとのぞき、ヨダレーを垂らしている」


妃「垂らしてないしちいっさいって言うなよー。今年イッセンチ伸びたんだから。凄くね。僕って人類の先端を行ってる気がするんだよねー」


辰賀「それでもまだまだドチビだろ。っつーか妃、まだ成長期かよ!? 人間じゃねえよっ! はははははっ」


辰賀:妃は結構喋るのが好きなんだと思う。で、色々とわきまえてる感はあるけど、たまに暴走するオレと間宮を止められるのは、いつもこいつだけ。突っ込みと称した飛び蹴りはマジで肺に来る。温厚に見えて喧嘩は一番強え。


妃「しっ。しーっ。ゆめが起きちゃうよ。辰賀だまれ。あー、ゆめー。ゆめーっ。ただいまー。お土産の草団子だよ~。今日も可愛いなー天使みたいー」


辰賀「熟睡してるから。っつーかその臭い身体でゆめに触んな変態。風呂入れ」


辰賀:オレの発言に賛同するように、間宮は頷いた。


妃「へいへい。シャワー浴びて寝ようっと」


辰賀:しゅるっと緑色のネクタイを緩めてスーツのジャケットを脱ぎ鞄を背負う妃。何故か、こうしてたまに凄く格好良く見える時があんだよなコイツ。色気ある。チッ。ちっさいくせに。


辰賀「チョコレートケーキ食わねーの?」


辰賀:――と、からかってみるオレ。


妃「んあ? どうせゆめが彼氏にでしょ? 僕達にゆめがバレンタイン作ってくれた事なんて一回も無いじゃんか」


辰賀「わかってらっしゃる妃さん。流石年の功」


妃「うぜ」


辰賀:妃は、見た目は十代だが実年齢は二十八。一番の長。オレ達に合わせてるのか何だか知らないが、言動や行動がいつもやや幼い気がする。肌はぴかぴか目もきらきら、二十八には絶対見えない。ゆめも童顔だけど妃はゆめよりも幼く見える。


間宮「ゆめは義理は絶対に作らないからな」


辰賀:――と囁く間宮、ちょっと寂しそうだ。そりゃそうか、うん。まあこいつも欲しいんだろうな。


辰賀「ゆめの本命チョコ欲しくねーの、妃」


妃「何を聞いてんの。馬鹿辰賀」

辰賀「欲しいのか欲しくねえのか聞いてんだよっ」

妃「欲しいに決まってんでしょ。僕はゆめの事、出会う前から愛ちてんだよ!」

辰賀「ははは! その身長じゃあ無理っすよ妃さん」

妃「うぜっ。漫画の新刊買ってきてやったの貸さないよー」

辰賀「え、うそっ。なんか新刊出てたっけ? ちょおいっ妃っ!」

妃「お風呂行ってくるねー」


辰賀:ったく、相変わらずマイペースだよな。風呂場へと行ってしまった妃の姿が見えなくなると同時に、ゆめが寝返りをうった。可愛い寝顔を覗き込んで、癒されるオレ。可愛いなー可愛いなー。オレの部屋に連れ去って。


間宮「なんか下らない事考えてたらボコボコにするぞ」


辰賀:なんて冷静な暴言ひええええっ!!


辰賀「い、イヤだなあ間宮さん。ゆめをゆめの部屋に連れてってやろーかなと思っただけだよ! ほら、ちゃんとベッドで寝た方が良いだろ?!」

間宮「お前の手がいやらしいから駄目だ。俺が運ぶ」

辰賀「いやいやいやいや。お仕事でお疲れの間宮様のお体にご負担かけますぞ! ここはオレが、」

間宮「いや俺がやる」

辰賀「いやいやいやいや!」


辰賀:ざけんな間宮! お前どーせ仕事中うっかりちゃっかりボディタッチしてんだろ! 腕とか肩とか腰とか胸とか! いやそんな度胸こいつには無い、か?


れあ「うるっさいなー。朝っぱらからこんなに騒がしくしてて、良くゆめ先輩は目の前で起きずにグウスカ寝てられますねー?」


辰賀「あ、レア」


れあ「いま何時ですかあ?」


辰賀(いつの間にかリビングに居た細身で赤い髪のちっこい少女。目を擦りながらオレ達に近付いてきてゆめの寝顔を確認した)






★れあ


れあ:あたしは如月 れあ。十二歳超乙女! 乙女座だし! 超華奢で瞳うるるんっきゃるんと可愛い中学一年生。妃先輩と若干苗字かぶってるけど、きさきじゃなくて“き・さ・ら・ぎ”ね! 如月 れあです。よろしくねっ。現在、孤児院をやっていた両親が、幼いあたしを無理矢理間宮先輩達に押し付けて数年前突然海外に放浪に行っちゃって。パパとママの旅費を稼ぐ為、あたしは何故か芸能事務所に入れさせられて、アイドルやってます。まあ、毎日楽しいからいいんですけどっ! あはっ。

優しくて女神さまみたいなゆめ先輩と、私が今通う渋谷中学の伝説の風神雷神と呼ばれ恐れられた辰賀先輩と間宮先輩。パパより少しだけ年下で、物知りで、何でも出来る妃先輩。四人はあたしの憧れ。いつも目標。何よりいつだってこの四人に守られているっていう事が、あたしは嬉しかった。

んひー。暖房つけっぱで寝ちゃったから喉がらっがら。なんか飲もうっとー。えっとー、お茶お茶。あれ、ポカリ? なんで空なのに冷蔵庫入ってんだろ。

捨てていいのこれ。むお、奥に缶のQOOのオレンジ発見~。これでいいや。あれ、“きさき”って書いてある。妃先輩の? あ、こっちも。これも、このコーラも。んー、まあいっか。飲んじゃおーっと。いただきますっ。


れあ「あっ、辰賀せんぱいー、こないだくれた林檎ジンジャーエールってどこに売ってますか? 超~美味しかったからレア、買いだめしたいんですっ! んでもー林檎よりミカン派のレアは、やっぱー蜜柑ジンジャエールもイケると思うんですよぶっちゃけ! ねえどう思います?」

辰賀「あー、あれは間宮に貰ったんだよ。間宮が西口の自販機でお茶買ったら出てきたんだよな確か。ってかレアそのあたまどーしたメルヘンじゃね。なんで赤いの。そしてそのちっさい左右の縦ロール無理無いか。蜜柑絞ってジンジャエール入れれば良いじゃん。オリジナル生産しちまえよレア。印税暮らし、しようぜ!」


れあ「げひんげひひひんっ! 分かってないですねっ。辰賀先輩っ!」


れあ「こーれーはっ。恋の赤ですよっ! ふふふふふっ! 可愛いでしょ!」

辰賀「恋はピンクじゃねーの?」

れあ「今度舞台のお仕事で、赤毛のアン役なのですよっ! あーんーあーんーっ!」

辰賀「学校で苛められても知らねえぞ」

れあ「大丈夫ですよー。髪染めるのなんてイマドキ普通普通っ! 辰賀先輩だって金に染めてるじゃないですかーっ」

辰賀「オレは学生最後だからちょっとヤンチャ色にしたくてやっちゃったの。大人だからいーの。内定貰ってるし。バイト再開したら黒に戻すけどな」

れあ「あーっひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!」

辰賀「あーっひゃひゃひゃって、もうちょっと女子中学生っぽくおしとやかに笑えねえのか、レア。うふふとかオホホとかな?」

れあ「あのねーっ。こないだなんか、隣のクラスの男子がモヒカンにして! レインボーで! 

   なのにせんせーったらMPが怖くってなんにも言わなかったらしいですよーっ」

辰賀「MPってなに?」

れあ「モンスターペアレントですっ!」

辰賀「ああ、噂のな」

れあ「そうですー。今の大人って悲しいですよねぇ、子供叱って叩くと体罰になっちゃうから面倒なんじゃないかなー」

辰賀「またお前は二十代みたいな発言して。気持ち悪い。どうよ間宮。これが妹だったら泣くわ。」


れあ:ふんっ。れあはお利口だから叩かれたりするような事なんもしないですけどねっ。成績だって良いしっ。優秀な間宮・妃・辰賀お兄様がたがいっつも家庭教師して下さるから、レアはタダで東大学力手に入れられちゃうのでーすっ! それに、あたしが悪い事したら、きっとゆめ先輩泣いちゃうから。そしたら三人共、絶対辛いもん。いつも家族には笑ってて欲しいもん。三人がゆめ先輩の事を特別大切にしてるのは知ってるし。超好きって、目に書いてあるもんね。でも、レアだって。


れあ「間宮せんっぱーいっ!」


間宮「んー」


れあ:だーいすきっ! あーん、超すきすきすきすきすき! スキスキ大好き超あいしてる! いつもの後ろからハグっ! うーんっ、やっぱ凄い隠れ腹筋。ごつごつ。朝早く起きて筋トレしてるのは知ってたけど、あんまり鍛え過ぎちゃうのもレアの好みを越えちゃうってゆーか。程々にしてほしーってゆーかなんつか。まあそれは置いとい、てっ。ううーっ、このいつもほんのり香る石鹸っぽいスフレの匂い。落ち着くーっ。ハァハァ。


間宮「レア、ゆめが寝てるんだから静かにしろ。」

れあ「間宮せんぱいっ。レアの処女っ。もらってく・だ・さ・いっ!!」


れあ:くるりんきゅぴーんっ。決まったっ!


間宮「……………………」

辰賀「つ、通報しようか? 間宮」


れあ:なっ!? なんとー!?


間宮「その場合痴女としてレアが捕まるのか?」

辰賀「いや~年少者は保護されるんじゃないかー? まあ、反省させるっつー意味では良いかも。なあレア。お前、つかYOU一回保護されちゃいなよ」

れあ「えぇ~っ?! いやです!」


れあ:何を言うのよ辰賀先輩はっ! レアの恋の応援してくれるっつってたのは嘘なのかっ。リビングの一番大きな机の端をバーン! っと叩き。木の椅子の上に乗っかって大袈裟に振りかざしたレアの右手が柔らかな色を放つペンダント照明にバンッ!! っと当たったの!! イッター!! いってっ、痛ってえ-っ! ひいーっ。


間宮「レア、静かにしろ」


れあ:うひん、間宮先輩の困った顔もだいすき。


れあ「静かにしたら、キスしてくれますか?」

間宮「しない。俺、ロリはちょっと」

れあ「そんな~十四歳差なんて芸能人じゃ普通ですようーっ! それにレアだって、そのうちセクシイな女になるんですからっ」

間宮「残念。俺は一般人だ。」

れあ「一般人って、なーに言ってるんですかっ。またモデルのお仕事再開したらどうです? レア、応援しますよっ」

間宮「いや、カメラ嫌いだし。フラッシュが特に無理。誰かにジロジロ見られるのも、街歩いてて指さされるのも落ち着かない。俺には向いてない」


れあ:んーっ、ホントに素敵。今日も眼鏡似合い過ぎだなー。左目の目尻の涙ほくろも大好き! 何より誰より格好良いようっ。真っ直ぐ一途な瞳も、メッチャクチャ好き。いつか間宮先輩の、お嫁さんになりたいな。


れあ「レアと結婚してくださいッ!」

間宮「まだ十二歳だろ」

れあ「十六歳になったら、キラキラな白浜に囲まれた教会で、挙式をしましょ! こないだグラビア撮りに行ったサイパンとか、超ー綺麗でしたよっ! ねっ? 間宮先輩っ」


間宮「う~ん」


れあ:まじで超ロマンチック! レア、お色直しは沢山したーいっ! バージンロードの先にはー、神父様とタキシード姿の間宮先輩が待ってるの。ふふ、ふふふふふーっ。


辰賀「レアが十六だと間宮さん三十ですよ。大台っすよ!」

間宮「三十、か。悪夢みたいな話だな。レア、俺二十九までには結婚したいんだけど」

れあ「えぇ~っ!? レアが十六歳になるまで待ってくださいよおーっ」

間宮「あと髪ももっと長い子がいい。女優の水川あさみ位長いのがいい」

れあ「じゃあ伸ばすから待ってくださいーっ! むきゃん!」

間宮「目もぱちくりしてる子がいい。上野樹里みたいな」

れあ「アイプチします!」

間宮「うん。レアは普通に可愛いとは思うけど、俺のタイプじゃない」

れあ「っがーん! うっわーん!」

辰賀「おお、よちよちよち。間宮ハッキリ言い過ぎじゃね」

間宮「ハッキリ言ったってどう言ったっていつも聞いてないだろこいつ」


れあ:酷いのよ。こうやっていつもレアの気持ちをもてあそぶんです。いつもこうして、間宮先輩は意地っぱりなのです。毎日毎日ふられるレアは、このように辰賀先輩に撫でられて慰められて。でもね、何を言われたって。レアは間宮先輩が好きなんです。間宮先輩がどんなにゆめ先輩を好きでも、レアはいい。そう、正直両想いになりたいとは思っていないのです。今のままで十分。ゆめ先輩を好きで、仲間思いで、家族思いで。いつも格好良いのに、なのに好きな人には少し弱気で勇気が出ないあなたが大好きなのです。


間宮「まったく、処女なんて言葉一体どこで覚えたんだか。辰賀、お前だったら本当に殴るぞ」

辰賀「いやいやいやいやオレな訳無いっしょ! 変な事教えて問題になったら、ダンカンさんに顔握り潰されるって! こう、グシャーッって!」


れあ:ダンカンさんってゆーのは、あたしのパパの事。元プロレスラー。数年前まで、孤児院の院長もやっていました。顔がメッチャ恐い。レアはまあ慣れてるけど、なんて言うのかな。ギャング顔? 背中の刺青を見て、間宮先輩も辰賀先輩もいつも小さい時泣いていたらしいです。


れあ「こないだお休みの日にみんなのお部屋を掃除機かけてた時に~。妃先輩の部屋のベッドんとこにあった漫画に書いてありましたっ!」

間宮・辰賀「「 奴 か 」」


れあ:ん? なんか先輩達顔こわい。 ど、どうして? えっちな事って、恋人同士がする大切な事なんでしょ? 恋人はみんな、キスしたらその後にぎゅってして――。


れあ「ッ間宮先輩! レア、ホテル代くらい払えます! だって働いてるもんっ!」


間宮・辰賀「ブッ」


れあ:あ、あれっー!? 二人とも白目向いたっ!


妃「あー、さっぱりしたーっ。やっぱ我が家って良いねーっ。ってゆーかお腹すいたー。なんかない?」


れあ「あ、妃先輩。おかえりなさい。って言うか、親父じゃないんですからトランクス姿に裸でパーカー羽織るのはちょっと変態なんじゃ」


辰賀「――キイイ!! 来なすったなこの害虫めが! 間宮ぁっ! 塩撒け塩ーっ!!」

間宮「土下座しろ妃」

妃「えええーっ。なに? どうしたの~」


れあ「妃先輩は、リビングの絨毯の上にとりあえず正座して。いつものようにホケラッと笑っておりました」

妃「ホケラーッ」

辰賀「ホケラーッじゃねえ!! お前ええ~~っ! 無断で性・教・育を行わないッ!! ダンカンさんへの誓いを忘れたのかこのチャラポめが! オラ、間宮もなんか言ってやれよ!」

間宮「妃、何故家に持ち込んだ。その類は家には持ち込まないと約束しただろう。お前何度かゆめにも発見されてて、恥ずかしさであいつが失神したの覚えていないのか。家に性の類は持ち込まない。連れ込まない。与えない。お前には理性が無いのか。最年長だろ、しっかりしろ」


れあ:お、お二人共とっても怖いですっ! 流石、渋谷中学で風神雷神と呼ばれ恐れられた辰賀間宮コンビっ! きゅんきゅんです!


妃「え、ああ~。だってさ~~」


れあ「に、にこにこしてるっ! こ、このお二人にこんなに睨まれていつまでも笑ってられるのって、妃先輩だけなんじゃ!?」


妃「枕元にあった方が、便利じゃんっ」


れあ:コオオッ! なんて素敵で輝いた笑顔っ! まぶしっ。ふおっ。ま、またお二人が白目になりおったあっ!


辰賀「そーゆー……!! 問題じゃねえだろうがああああああああああクソあああああああああっ!!」


れあ:ああっ!? 辰賀先輩が怒りに身を任せ、椅子をガタガタ揺らしてもう狂喜乱舞っ! ってか、こんなんなってもどうしてゆめ先輩は起きないの!? むにゃむにゃ寝てるーっ。寝てはるーっ。同じ女のあたしから見ても、凄く可愛いゆめ先輩! 寝顔、超可愛い! ゆめ先輩っ! つーーかうるさいでしょ!? 絶対もうこのいっこ下の階の人ゼッタイ起きたっしょ! ごめんなさいマンションの皆さんごめんなさいっ! うるさくしてごめんなさあいーっ! 十二階建ての、九階だなんて一番微妙で影響ある場所に陣取っててすみませええんーっ! 間宮先輩は、頭を抱えて俯いちゃってるしっ。うつむいちゃってるっていうか、欝状態!? あーもうっ、レアが悪いの!?


妃「なに? 間宮と辰賀も貸してほしいの? いーよー。今日も買ってきたから。読み終わって、一晩たったらねー」

間宮・辰賀「「 燃 え 上 が れ……!! 妃いっ……!」」

れあ「ちょっ、間宮先輩っ、辰賀先輩っ! それじゃあ体育祭の応援フレーズみたいですっ!」

妃「さっきからなんで二人は怒ってんの? あははっ。意味わかんねー。あははっ。お茶淹れるねー」


れあ:マイペース過ぎます、妃先輩。わ、話題を変えなくっちゃ!


れあ「き、妃先輩っ。今度の木曜日、授業参観があるんですっけどー。来てくれます?」

妃「ん、木曜日? あーごめんー。木曜は朝から本社行かなくちゃなんだよ。間宮か辰賀は行けないの?」

間宮「俺も仕事だ。無理。ゆめもその日仕事だし。辰賀が行けよ。どうせ暇だろ」


れあ:えーっ。間宮先輩が来たら、クラスの皆に未来の旦那様ですって紹介出来たのになー。まあいっか。辰賀先輩も結構奥様ウケ良いし! おっとー、よしよーし。妃先輩がちゃっちゃっとお湯を沸かしてちゃっちゃっと作ったココアを飲むあたし達。大乱闘せんと燃え上がっていた雷神風神も、どうやらちょっと落ち着いたようです。


れあ「辰賀先輩、お願いしても良いですか?」

辰賀「ああー、いいよ。どうせ間宮様と違って暇ですから? オレは」

間宮「本当の事だろ」

辰賀「お忙しそうで、良かったですなあ。商売繁盛結構結構。あんまゆめをコキ使うなよな?」

間宮「バカが。ゆめは今日から連休も取らせるし。有給もたっぷり使わせてる」

辰賀「溺愛ですなあ間宮さん」

妃「んでさあ、どーでもいーけど僕お腹空いたんだけどこのチョコレートケーキ食べていいの? もう食べちゃおうよー」

れあ「え、何ソレなんですか? 気付かなかったっ。あ、ケーキだ! うわーっ。美味しそうっ!」

妃「切って食べようよ~レア~お皿とナイフ取って~」

れあ「はあ~いっ。やったーっ。ケーキっ。ケーキっ」


辰賀「こらこらまてまてまてまてえええい!」


れあ:おぐあっ!? 妃先輩がナイフで切れ込みを入れようとした瞬間、辰賀先輩にケーキをブン取られてしまいましたっ。な、何ゆえに?


辰賀「妃、これはゆめが彼氏の為に作ったってお前知ってたろうがっ! 勝手に人のもんを食うな!」


れあ:えっ!? そうなの!?


間宮「そうだぞ妃、いい加減にしろ。辰賀、ゆめのケーキ、死守しろよ」

辰賀「あいあいさっ!」

妃「チッ。あんなやつにゆめのケーキなんか勿体無いと思わないの二人は?」

辰賀「思うけど! 盗みは駄目だろ。しっかりしろよ妃~もうすぐ三十になるんだろ~。オレはさ、ゆめの涙はこりごりなのっ! わ か れ よ!」

妃「あーはいはい。いつまでも片想いは辛いですねー。辰賀。泣くの見たく無いんなら、自分のものにしちゃえばいいじゃん。お前間宮にあーだこーだと言うけど結局、ゆめを好きなのはお前も一緒でしょっ!」

辰賀「そ、そんな事無いけど」


れあ:と言って、黙ってしまう辰賀先輩。間宮先輩も口を開かなかった。どうしてみんな我慢するの? ゆめ先輩の事、みんな好きなら好きって言えば良いのに。どうして駄目なの? みんな自分の気持ち隠そうとして、凄く気持ち悪い。大人になったら、好きな人に好きって言うのはいけないことになっちゃうの?


妃「どうだかねえー。あーレア、お腹空いてる?」

れあ「あ、す、空いてますっ!」

妃「何か作ってあげるね。ラーメンでいい? 一緒にたべよ。それかー雑炊かー」

れあ「あ、はいっ! わーいっ。らーめんらーめん! らーめんがいいですっ」


れあ:妃先輩は、ラーメンを作る為冷蔵庫を開けて。そしてついにポカリとオレンジの空きボトルを肉眼で発見した。


妃「くおらっ! また飲んだな~!?」

れあ「きゃっ! ご、ごめんなさいっ!」

妃「レアはいいよ、まだ子供なんだから。おい、人のもん勝手に飲むな!」

辰賀「だってきさきって書いてあったら飲むだろ普通。なあ間宮」

間宮「ああ、さっき謝っただろ。そんな事でカッカするな最年長。つか自分の部屋にも冷蔵庫あるだろお前。そっちに入れとけよ」


妃「うっさいよっ。なんなのさ! 僕のポカリは飲んで良くて、ゆめのケーキは何で食べちゃいけないの!」

辰賀「気持ちの問題だっつの。それにレアだって同罪だろ。許しちゃうのは公平じゃあなくね? 差別はんたーいっ。セクハラじゃあないですかあ? 妃さーん」


れあ:ううっ、辰賀先輩の言う通りです。レアも同罪なのです。


妃「まあ、別の人間に想い込めて作ったもんなんて、食べたくも無いけどさっ。僕は」


れあ:妃先輩、ちょっと悲しそう。って言うか、みんなさっきから何言ってんの?


れあ「ゆめ先輩って、新しく彼氏が出来たんですか?」

妃・間宮・辰賀「えっ……?」


れあ:あ、あれ? 何この長~い間。え、何そのきょとんとした顔! 嘘。え、え? え。もしかしてみんな、知らないの?


れあ「ゆめ先輩、先月に春日さんと別れてますよ?」

妃・間宮・辰賀「……はい?」


れあ:三人は、一度瞬きしたままずっとかたまってる。やっぱりみんな知らなかったのかな。


れあ「ゆめ先輩、とっくに春日さんに冷めてて。ずっと別れたくて、でも別れさせてくれなくて。悩んでたんですよ?」


れあ:だ、黙って聞かれるとこわい。うわ、三人とも動揺してる。顔暗っ。 やっぱり知らなかったんだ……。そうだよね、言えないよね、女同士ならって――ゆめ先輩はレアにだけ話してくれてたのかな。こ、これも言って良いのかな? ゆめ先輩が眠っているソファに近付いて、綺麗で流れる艶々な髪をあたしはそっと撫でて。その女神のようなお顔を見つめた。


れあ「ゆめ先輩、今は恋人居ないはずです。あーそうだ間宮先輩、カナさんが別れさせるのに一役買ったそうですよ」

間宮「え、カナが?」


れあ:カナというのは、間宮先輩がこないだまで付き合っていた女の人で。

本名は神谷かみや かな。売れっ子のモデルで、あたしの大先輩。真っ黒い長いサラッツヤッな黒髪と、妖艶な雰囲気。

抜群のスタイルでいとも簡単に男を魅了する。黒木メイサみたいな色気の塊で、凄い存在感のある方です。年は辰賀先輩、ゆめ先輩とタメ。

以前、とあるスタジオでレアが雑誌の撮影をしていて。間宮先輩に迎えに来て貰った時に、カナさんが間宮先輩に一目惚れしちゃって。

それで猛烈アタックをしまくり、強制的に間宮先輩をモデルにまでさせてしまった強豪カナさん。

お酒に弱い間宮先輩をグデングデンに酔わせてホテルに連れ込み。フライデーな騒ぎなんてのもあったの! 間宮先輩には黒歴史でしょう。合掌です。カナさんは無断で家に泊まったり。ご馳走を作ってくれたり。

ゆめ先輩とレアを温泉に連れて行ってくれたり。ランドにも行ったし。高級珍味を食べさせてくれたりと、いつも可愛がって貰っていました。

あ、今も、ですけど。 でもカナさんはいつも。嫌がる間宮先輩に強引に迫ってはお酒を飲ませて脱がせて手錠繋いで。そんなんは日常茶飯事。

本当に、間宮先輩は可哀想でした。あの時は心労で相当やつれていましたし。辰賀先輩と妃先輩は、

カナさんの暴挙をゲラゲラ笑って見てるだけでしたけど。


辰賀「ゆめに彼氏が居ないって、じゃあ、このチョコレートケーキは誰に作ったんだよ?」


れあ:そう、それが問題なのです。辰賀先輩。レアもそれが疑問でした。ゆめ先輩は本命チョコレートしか作らない。友チョコも、義理チョコも作らない。

ならばここにあるこのチョコレートケーキは一体なんなのか? 誰も解りませんでした。わかるはずが無いんです。

先輩方は春日さんとゆめ先輩が別れたのも知らない。あたしは、ゆめ先輩に新しく彼氏が出来たかとか、今好きな人がいるとかは聞いて無い。


辰賀「間宮さ、カナとヨリ戻せば。オレはカナと間宮、お似合いだと思うけど」






★妃


妃:そうだね、僕もそれが良いと思う。て言うか、ずっとカナが捕らえておいてくれれば、間宮はゆめを諦められたかも知れないのに。


間宮「は、なんでそんな事言われなくちゃいけないんだ。お前らは面白がってたかも知れないけど、俺はカナの事なんか」


妃:間宮はカナにもレアにも愛されて、良いよね。今年ももう既に、モデル時代の間宮のファンから事務所に来たラブレターとチョコレートが、家にダンボール五箱分も届いた。当日である今日は、これからもっともっと届くんだろう。羨ましい。お前は、僕が持っていないものを全て持っている。どんなに勉強出来たって、何が出来たって、間宮のあの容姿と人柄の良さの前にはゴミみたいなもんだ。特にチビには、絶対間宮に勝つ手段なんか無い。良いじゃんか、もしこのチョコレートケーキが、ゆめから間宮へ贈るものだったら。それはお前、本当にズル過ぎる。ただでさえゆめがいつも時間を共にしているのは間宮だ。何よりも近い、ビジネスパートナーなら尚更。苦楽を共にしてきたはずだ。客とのトラブル、売り上げ、利益の問題。何だってきっと二人は一緒に考えて、乗り越えてきて。だからこそ、同じ道をもっと歩きやすい。だから、ゆめが次に惚れるならきっと。


間宮「好きだ。俺はゆめが好きだ。俺に必要なのはカナじゃない。カナにもそうはっきり言ったら、あいつは俺からすんなり離れて行った。あんなに執着してたのに」

れあ「間宮先輩……」


妃:ゆめの側からレアが離れ、間宮がゆめの顔を覗き込む。好き――なんて、ずっとそんなのは禁句だった。暗黙の。ゆめに好きを言って良いのは、ゆめの恋人の特権だから。でも恋人が居ないと知っても。僕はゆめに好きだとは言えないだろう。どんなに好きでも。ゆめが作ったチョコレートケーキが、ゆめの好きな男の口に入るまで。その後もきっと考えて。いつまでも言える日なんか来ないんだろう。ふられるのがたまらなく怖いから。間宮は、ゆめの頬を愛おしそうに撫でて。おでこにそっとキスをした。僕の胸が、ちくんと鳴る。辰賀も、レアも、誰もが思うだろう。間宮とゆめは特別な関係なんだろうと。好き合っているんだろうって。ゆめが好きになるんなら、間宮しかいないと思う。辰賀とも凄く仲が良いけど、辰賀の事をもし好きならいつもあいつがふざけて抱きついた時なんかに、ゆめだって自分の気持ちをアピール出来たはずだ。だからきっと、このチョコレートケーキは間宮の為に焼いたんだ。それで勇気を振り絞って告白して、間宮はそれを受け止めて。俺もすきだよと言い返す。ゆめと手をつないで。笑い合って。ゆめと……甘いキスをするに決まってる。僕だってゆめが欲しい。ゆめに彼女になってもらいたい。世界で一番可愛い女の子だよ。間宮に敵わないとわかっていても、少しでも希望があるのなら。もし、僕にも。ほんの少しだけ、ゆめに振り向いて貰える要素が、ほんの少しだけでもあるのなら。僕はゆめが焼いたケーキを食べたい。君が好きな人の為に焼いたケーキなら。美味しく無いわけないんだから。君より背の低い僕だけど。ゆめは、この童顔のせいで大人に見られず悩んでいた僕を、はじめから差別も区別も無く一人の人間として接してくれた。年下なのに、いつもその綺麗な可愛い声で「妃くん」と呼んでくれるのも。たまにふざけて、「はじめさん」と呼んでくれたのも、物凄く驚いたけど、物凄く嬉しかった。さり気無く優しい事ばかりしてくれる。いじわるをして、そのソファでゆめに膝枕して貰ってガン寝した時も、僕の髪を撫でて。ずっと黙って、そのままでいさせてくれた。結局間宮と辰賀に頭ブン殴られて蹴り飛ばされて起きたから、なんか全部夢かと思ったんだけど。でも、いつも夢じゃない。君の優しさは。側にいて欲しい。君の特別になりたい。君が笑うと嬉しいから。


れあ「ゆめ先輩のケーキ、三人で三等分して食べちゃったらどうです?」


妃:と、そんなレアの提案を、間宮が頑なに拒む。


間宮「何言ってんだ、そんな事出来る訳無いだろ」

れあ「だってこれを贈るとしたら他に誰が居るって言うんですか! レアの知る限り、ゆめ先輩のまわりにいる若い男は四人だけ! 春日間宮妃辰賀! 春日さんにチョコ渡す訳無いし。残るは三人ですよ!」

妃「間宮、カフェのバイトとか他の社員にゆめと仲良い男いねえの?」

間宮「居ないな。バイトは皆女の子だし、社長と店長とオーナーもスーパーバイザーも、みんな結婚してるから」

れあ「っほら見た事かっ!! ゆめ先輩は、三人の誰かにこれを焼いたんですよ!」

辰賀「ゆめが不倫が趣味とか。ほら、カフェの店長結構イケメンだった気がす……。あ、いや、何でも無いっす。ま間宮さん、そ、そんな目で見ないで」


妃:馬鹿を言った辰賀を睨み殺さんとす間宮。スゲー怖い。少女漫画で言う所の青い棒線が顔にサーって出る位めちゃ怖い顔! 元から間宮は目が悪いから目付き悪いしなー。


妃「間宮は食べたくないの?」


間宮「当たり前だろ。本人から許可も無く勝手にこんな大事なもの食べたら、ゆめに嫌われるぞ妃」

妃「ゆめなら優しいから許してくれるよきっと。本当に食べたくないの? ゆめの愛の味。きっと今までのただのお祝いお菓子とはまったく違う、信じられないくらい美味しいと思うよ。辰賀、食べたら舌の上で溶けるくらいの、ゆめの愛とチョコレートたっぷりのケーキ、なんで我慢して食べないの。手に入るのに、このままもし、ゆめが起きて。僕にくれたら? 僕はここで、みんなの前で食べてあげるよ」


妃:間宮も辰賀も甘いもの、特にチョコレートが好きだ。珈琲ブラックでなんてとても飲めない。だからこのケーキ。喉から手が出る程欲しいはず。まだまだ若い二人にちょっと意地悪を言ってやった。まあそんな歳変わらないけど。


れあ「ど、どうしてそんな意地悪言うんですか! 妃先輩のばかっ! エロ同人誌! チビ若作りいい! 脅すんならもっと男らしく武力で脅せば良いでしょ!」

妃「何その大正みたいな考え方。間宮叩いて殴って倒したらゆめが僕の事好きになるんならもうとっくにやってるよ! 時代はノーモアーノーヒューチャー! 武器を楽器に! エコしたら褒められる世の中に、喧嘩はノーなのここは日本なのっ。お子様は黙ってカレー食って寝てなっ」

れあ「ひどーい! 聞きました?!」


妃「それにレアよりは身長大きいしー」

れあ「うひーっ間宮先輩っ! 間宮先輩も! どかんと当たって砕け散れば良いじゃないですか!

 ゆめ先輩にふられたら、れっレアが脱いで慰めてあげます……からあっ」

間宮「結構だ。砕け散りたくも無いし」

れあ「れ、レアだって一応モデルやってるもん! スタイルには自信ありますよっ!」

間宮「そんな事が問題じゃ無いから。俺はもっとお前には、自分を大事にして欲しい。」

れあ「やっと胸だってふっくらしてきたんですー! まだ小さいけどもっと大きくなります!」

辰賀「レア、間宮は巨乳好きだよ」

れあ「っえー!? ホントですか?!」


妃:ゴッ! っと間宮がグーで辰賀の頭頂を殴った。


間宮「お前次は刺すぞ辰賀」

辰賀「じ、ジョークなのにー」

れあ「巨乳かー……。じゃあやっぱり、ゆめ先輩のおっぱいには勝てないなー。あのふにふに感はヤバイし。こないだ温泉行ったときー、

いっぱい触っちゃったんです」

間宮「レア、辰賀が言ったのはデタラメだか――」

れあ「あ! ゆめ先輩は乳首もおっきいですよっ!」


妃:ゴフッと吹いて倒れ込む間宮。


れあ「どうしたんですか間宮先輩っ!? お腹痛いの!?」

辰賀「コラっ、レア! お盛んな間宮にそんな情報垂れ流すな!」

れあ「そ、そう言ってる辰賀先輩も、鼻血出てますよ頭悪いの?! そ、そんな芸当。今この地デジ元年、リアルに出来るのは辰賀先輩位ですよ!

 妃先輩はいつも通りへら顔なのに!」

妃「あんま僕顔に出ないからねー。でも今日今のだけで一発抜けると思う」

れあ「ぬ、ぬく……?」

間宮「も、もうそれ以上誰も喋るな。頼むからっ! 頼むからーっ!」


妃:間宮は前傾姿勢で泣きそうにしていました。


れあ「は、話戻してゆめ先輩にっ! 直接聞きましょうよっ! 白黒ハッキリつけて、誰が食べて良いのか決めましょう!?」


間宮:頷き合い、ゆめの寝顔を見つめる俺たち。その時玄関の呼び鈴が鳴り響く。玄関では扉が開く音が。妃は気付く、そう言えば自分が帰ってきた時に鍵を閉めなかったな、と。カン高い女の、おはようございまーすという声が玄関から聞こえる。その声の主は、ズカズカと間宮達が居るリビングへとやって来るなりリビングのドアを強引に開け放った。笑顔が素敵な二十代半ばの、真っ黒な毛皮のコートを羽織り黒い長髪をなびかせた女。良く似合う黒淵眼鏡がきらりと光る。レアがその人物の名を呼んだ。驚愕する辰賀達。女はニコリとしたまままたも強引に今度はゆめに大きな怒鳴り声で挨拶をした。そしてようやく目を覚ます、ゆめ。


カナ「おはよー、ゆめちゃん」

ゆめ「あれ、おはようございます。カナちゃん」


辰賀:早口で良く通るカナのしっかりした声と、ゆっくりでか細いゆめの声がなんともアンバランスである。むくりと起き上がり、目を擦りながら天使のような微笑みで受け答えするゆめ。


カナ「まだ着替えてなかったの? 始発の新幹線って言ったでしょう? まったく相変わらず朝弱いんだから。 ほら、荷物は? 車で駅まで行こっ」

ゆめ「あ、玄関に全部まとめてあります。」

カナ「ん? これ何? 美味しそうじゃない! ゆめちゃんが焼いたの? 私にくれるの? あはっ。今日、バレンタインだもんねっ!」

ゆめ「あ、え、っと……」


妃:ゆめは、まわりの気配に気付いて辺りをゆっくりと見渡した。視線が合う。その栗色の美しく輝く瞳で。

間宮と。

辰賀と。

僕と。

目を合わせた。

ちょっと複雑な表情になるゆめは、カナの方を向き直す。

 

カナ「ねえゆめちゃん、私の為に焼いてくれたの?」

ゆめ「……」
























間宮:俺は、俺を選んで欲しかった。


辰賀:オレは、オレを選んで欲しかった。


妃:僕は、僕を選んで欲しかった。













































ゆめ「そうです」

カナ「やったー! ありがとう!」


れあ:カナさんは喜びの余り、ゆめ先輩の額にキスをした。


カナ「後で二人で食べよっ。ほらほら。もう行くよっ。コート着て! くつした履いた!? よしっ。楽しみだね! 北海道っ。あ、

帽子も手袋もちゃんと装備しないと駄目よー」

ゆめ「こっちはまだ暖かいもの。まだ大丈夫ですよ。ごめんなさい皆さん、ちょっと私用で北海道に行って来ます。お土産ちゃんと買ってきますから。

明後日の朝帰ってきます。行って来ますね」

カナ「行こ行こっ!」


間宮:その場から去って行く、ゆめとカナ。


辰賀:去り際に最後、カナはやや振り向き、間宮達に舌を出し。どや顔をした。


妃:うずく心臓。バタン。と閉まったドア。消えたケーキ。そして、ドタン!! と――。


レア「きゃああっ! せんぱいーーっ!!」


間宮:崩れ倒れた男三人。

三人で泣くのって、いつぶりか。

しばらく立ち直れないかも知れないです。










   

END!!

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