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第25話 ヨシトは人気者になる

性的なことを、そこそこ真面目な視点で書いてます。

不快に思われる方は、流し読みしていただいた方がいいと思います。



 ヨシトがマキシム医術専門院に入学した後、ほとんどの講義や実習に顔を出す関係で自然に交友関係も増えいった。


 入学から約一月経った頃、最初に仲良くなった獣人族の狐人ミコン君に彼の苦手教科を教えていたのだが、それを見ていた何人かの学友達も、負けじとヨシトに質問してきた。

ミコン君が「それならいっそ、寮に集まって、勉強会を開かないか」と提案し、ヨシトも了解したため実現する運びとなった。


 休みの日に集まった参加希望者は、まずは材料を持ち寄って料理を作り、一日勉強漬けの体制を整える。

その後勉強会が開かれ、ヨシトが主に教師役に回った事が更に彼の評価を高めた。

その際にふるまったヨシトの得意料理は好評で、今も週に一度のその習慣は続いている。


 学科はほとんど完璧なヨシトは勉強会の中心メンバーで、学生寮には地方出身者がほとんど住んでいるため、結果的に多くの獣人達とも仲良くなった。

そしてヨシトは、地方出身の人間族の学生達の間でも有名になっていった。

まあ、そこまでは大した問題ではないだろう。

なぜなら、評判の悪い学院の中の多くても500人程度が知る有名人に過ぎないのだから。


 入学から3カ月程経った5月の中頃。

講義が終わったヨシトは、上級生に呼び出され学院近くの喫茶店に来ていた。

待っている相手は人間族で、ラーミアさんという名の講義で知り合った友人の女性であった。

気さくな彼女とはよく話をし、ヨシトにとっては数少ない人間族で同世代の友人の一人である。

(もしかして告白されるとか。日本と違って、女性から申し込む事も多いもんな)

そんな事を考えていると、ラーミアさんが店に現れた。


「御免ね、待たせたかしら」

「いえ、本を読んでましたので。それに待つのも楽しいもんです」

「相変わらず、面白い事を言うのね」


 彼女が飲み物を注文し、二人の周りに誰もいなくなると、彼女は要件を切り出す。

「ヨシト、あなたパートナーはいる?」


 ヨシトは困った。

いまいち意味が解らないが、恋人のようなものだろうか。

「多分いませんけど」

「何で疑問形か解らないけど、それなら定期的にプレイしない? 私のパートナーになってよ」

さすがにヨシトは聞いてみることにした。

「すいません、何をプレイするんですか? 最近はやりのリバーシなら相手出来ますけど」

彼女は、すこし怪訝けげんな表情を浮かべたが、急に思い当たったかのように逆にヨシトに質問する。

「ヨシト、あなたまだ魔力体が安定してないの」

どうして解ったのか知らないが、事実なので「はい」と答える。

「御免、今の話は無しにして。安定したらいつでも誘ってね」

そういって彼女は、飲み物が来るのも待たずに去っていってしまった。


 これはおかしい、とは思ったが、彼女の恥になる事かもしれないと思い誰にも言わず黙っておいた。

それからは特になにも無く、ラーミアさんとも以前と変わらず話をしてた為

(大した事じゃなさそうだな)と思い放置していた。


 しかし、それから一月もたたない6月の始め頃、誰もいない廊下で人間族の女性に同じように声をかけられたのだ。

「ヨシトくんは、パートナーはいるの?」

彼女も講義で一緒になる上級生だ。

「いえ、まだ魔力体が安定していないのでいません」

今度は慎重に答えたつもりだ。

「そう、残念ね。よかったら誘ってね」

「考えておきます」


 さすがにまずいと思い、次の講義でたまたま一緒だった親友であるレミル=ブラットに聞いてみる。

「なあレミル、プレイって何だ? さっきパートナーにって誘われたんだが」

レミルは驚いた表情で

「まさか、知らなかったの。で、何て答えたの」と聞いたので

「魔力体が安定していない、と答えた」と言うと

「なんだ、知っているんじゃないか。からかわないでよ」と、ほっとしたように答える。

何だか話が噛み合わない。


「実は、誘われたのは初めてじゃない。ただ魔力体が安定していないと言うと、とりあえず問題なくおさまるから言っただけだ。何より事実だし。だから、本当にプレイが何の事か解らない」

それを聞いたレミルは「もてるんだ、ヨシトくんは」と言った後、説明し始める。


「プレイは性交のこと、子供を作らないSEXのことだよ」

ヨシトは驚く。

「恋人になる、とかじゃなく?」

「プレイと恋人は関係ないよ」

そんな言葉に唖然としつつも、ヨシトは考える。


(女性の事だからルシアさんに相談するか迷ったけど、しなくて良かった。俺の直観力に感謝しよう)

そしてヨシトは、今までの誘いを理解すると同時に疑問に思った事を尋ねる。


「いや、おかしいだろ。誘ってきたのは、ほとんど友達程度の関係の女性だぞ。いきなりSEXしないか、なんて言うのは唐突すぎるだろ」

その言葉に、真剣な顔でレミルは聞く。

「ヨシトくんは、性教育を受けてないの」

「いやいや、当然受けてるよ」

と言うヨシトは、その時の事を思い出しげんなりとする。


―――――――――――――――――――――――――


 あれは神託を受けて間もなくの頃、特別授業があると言う事でクスノキ学院の保健担当医であるミネルバ教官に呼び出され受けたのが、性教育の授業だった。

神託後は子供を作ることが可能なため、必須であるとの説明を受け、二時間に渡りみっちりと授業を受けた。


 ヨシトは知識自体は持っていたが、改めて聞くと地球との違いを興味深く感じた。

その時の説明を要約すると以下の通り。


[子供を作る条件等]

人間族は他人種とも子供が作れるが、生まれてくるのは、ほぼ人間族である。

魔素が一定以上あり、男女二人っきりでなければ子供は出来ない世界のことわりがある。

この条件は本能として感覚で知っており、発情時には解る。

具体的に言うと、人間族は条件が厳しく、半径100mほど周りに誰もいない場所で生殖行為を行い、その後も、ある程度密着した状態で6時間以上過ごす必要がある。

精霊族が相手の場合は、種族差や個体差が激しいので、性交の前に相手によく確認する事。

これらを満たすため、専用の子づくり村があるので、結婚後は利用した方が確実。


[それ以外の性交について]

魔力体が安定すると性欲が定期的に起る。

これを放置すると病気につながる場合があるので、男女共に定期的に生殖器に溜まる、魔力を放出する必要がある。

それを簡単に放出する魔術もあるが、一般的には特定の相手を見つけ性交するべきである。

これには感染症を防いだり、何回か性交を行うと相手との発情時期がリンクするため重要である。

女神様も認めている事であり、性交自体は恥ずかしい事ではない。

もちろん、人前でする事は恥ずかしいことだ。

ちなみに同姓相手の性交や、魔術による生殖器の魔力放出では快感は得られない。


他にも色々と説明があったが割愛する。


 ここまでは良かったのだが、その後、具体的な性交のやり方までレクチャーされる。

もちろん、図解や模型を用いた解説ではあったが、説明するのが鉄の女とも呼ばれるミネルバ教官である。

しかも、狭い部屋でマンツーマンである。

あくまでも、事務的に「こうです、このように腰を動かすのです」とか表情も変えずに言われると「……はい」としか答えられず、本当に拷問の様な時間だった。


―――――――――――――――――――――――――


「ヨシトくん、話聞いてる? どうしたの辛そうな顔して」

その言葉に我に返ったヨシトは、レミルに謝る。

「ごめんごめん、ちょっと嫌な事を思い出してしまって」

「もう、しっかりしてよ。だから何度も言うけど、プレイは体の相性だけで、嫌いじゃなければ友達でも問題ないよ」

「いや、普通恋人同士だろ」

「確かにそれが理想だけど、恋人同士でもプレイしない人も多いよ。重要なのは特定の相手に決めることだよ。駄目ならやめればいいだけだし」

「いや、恋人が納得しないだろ」

「だから、トイレに行くのに恋人にいちいち断らないだろ。それと一緒だよ」


 そのレミルの言葉に強い抵抗感を感じたヨシトは、きつい口調で非難する。

「女を便器扱いか。それは駄目だろ」

それに珍しく気分を害したのか、レミルはとんでもない事を言い出す。

「わかった、そんな風に言うなら他の人に聞いてみたらいいよ。リンダさんちょっといいかい」

「ちょっ! それはまずいだろ」

「何で、こういうのは女性に聞くのが一番いいでしょ」


 (良くない!)と思うヨシトが、あたふたしてる間に、リンダ=ハミルトンが二人の目の前に立ち、話しかけてくる。

「どうしたの? けんか? 珍しいわね」


 レミルが今までの話を事細かく彼女に説明するのを、いたたまれない気持ちで聞いているヨシト。

だが、あっさりとした口調でリンダは話し出す。


「それは、ヨシト君の感覚の方が奇特よ。プレイは生殖器に溜まる魔力を排出する物で、体の相性が大事。恋する気持ちは関係ないわ」

ヨシトは自分の感覚と、この世界の常識とのズレを強く実感する。

ここまで強い物は初めての経験だ。

考えてみれば自分は記憶喪失で、三年弱の人生経験しかない。

恋愛感情とかは、黒部義人クロベヨシトの地球での経験なのだ。

(自分自身で、すり合わせるしかないのか。本当に可能なのか)

辛そうなヨシトの顔を見たリンダは、慰めるように話しかける。


「ヨシトくんの保護者は、確か聖職者だったわよね。彼らの中にはプレイを良しとせずに、恋人や夫婦同士でしか行為をしない方もいらっしゃるわ。きっとあなたは、その影響を受けているのね」

(なるほど、否定できない。確かにナタリーメイ院長はそういうタイプだろう。ルシアさんも、そうかもしれない。タラチナさんは……)と、そこまでで考えることを止めた。

彼女達は、ヨシトの家族と同じだ。

誰が、自分の姉達の性生活など知りたいと思うだろうか。


 ヨシトはリンダに感謝の言葉を言う。

「ありがとう、リンダさん。幸いなことに俺にはまだ時間があるから、自分自身で折り合いを付けてみるよ。それと、御免ね。変な話に巻き込んじゃって」


「もう! その感覚がずれてるの。大人なら当たり前の事よ。なんなら私がパートナーになってもいいわよ」

「ヨシトくんすごい」とつぶやくレミルに「ああ、レミルもすまなかった。きつい事言って」と答えた後、リンダに笑って話しかける。


「ありがとう。でも慰めてくれなくていいよ。俺は、そんなに美男子でもないから」

その言葉に、フッと笑った彼女は、彼の間違いを訂正する。

「それも勘違いよ。推測だけど、あなたに声をかけて来たのは『治癒系』のギフト持ちね。私もそうだから解るけど、ヨシトくんは、すごく魔力値が高いよ思うのよ。治癒系は相手の身体魔素の量をなんとなく理解できるの」


「何でそれがヨシトくんのプレイの人気につながるの?」

ヨシトも疑問に思った事をレミルが聞いてくれる。

彼女は、しまった、という顔をした後でヨシトの顔を見て、まるで観念したような表情を浮かべた。

それから口の横に手を添え、二人だけに聞こえるように告白する。

「その……、実はプレイの時…、相手の魔力値が高い方が快感が強いって言われているの……。女の子の噂だけど……」


 男達は理解すると、微妙な表情で彼女を見つめる。

「もう! 乙女になんて事を言わせるのよ。ヨシトくん! さっきのは、やっぱり無しにして頂戴!!」

真っ赤になって、リンダは離れていってしまった。


(そうか、強い快感を求めるのは、乙女には恥ずかしい事なんだ。そこは日本と変わらないな)

ヨシトは、また一つ新しい事を覚えた。



まずは、ここまで(異世界で孤児になった男)に、付き合ってくれている読者の皆様に御礼申し上げます。


ヨシトが大人扱いされ、いよいよ物語は本筋に入ります。

小難しい設定を理解されている方やお気に入り登録されている方に、少しでも喜んでいただけるよう、今後もがんばりますのでよろしくお願いします。

               pupu


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