タイトルが長い小説ってなんだか地雷臭がするよな
二話目投下!
日曜日。
多くの者たちが休日のこの日、俺とヤスは最寄りの本屋に来ていた。
店に入り俺がまっすぐに向かう先は言うまでもなくライトノベルのコーナーだ。
ライトノベルは素晴らしい。なぜならライトノベルには高校生男子を引き付ける魅力があるかr
「なぁアキラー。流石にここは俺には難易度ヤバいぞ。そしてアレな表紙の本を持ちながらニヤけてるお前もヤバいぞ。ってなんで無言で殴りかかろうとしてんだ、落ち着け」
ふん。ライトノベルの素晴らしさが分からない低能な貴様のほうが頭がヤバいだろう。
しかし、少しはしゃぎ過ぎてしまったかもしれないな。本屋に来るのは二十七時間ぶりだったから仕方ない。
この柔らかな本の匂いが俺の心を惑わしてしまう。罪深い本たちだ。
「うわー。なんだこれ。『小さいころからあなたを見ていましたっ!』だって?もう犯罪臭しかしねえってゆうか、ただのストーカーじゃねえか。しかもタイトルが長すぎてこの本を呼ぶとき大変じゃないか?」
「呼ぶときは略するから無問題。最近だと四十数文字のライトノベルもある」
「既にタイトルじゃなくて文だな、それ」
「しかしタイトルが長い奴は大抵駄作だ」
「へぇ、アキラでもライトノベルに好き嫌いはあるんだな」
最近のライトノベルはタイトルが長いものが多い。タイトルが長くなることによってどんな物語なのかイメージしやすくなった。
「『世界の半分をやるから仲間になれ?だが断……やっぱ考えさせて』ねぇ。なんかどんな物語か想像できるなこれ。テンプレってやつだな」
しかし、タイトルでイメージ出来るのをいいことにタイトルだけ面白いそうでも中身がそうでもないなんてことがよく起きるようになった。
まだ表紙の絵で買ったものは内容が面白くなくてもあくまでも絵で買ったものだから許せる。ああ許容範囲だ。
それなのにタイトル詐欺は酷いものだ。タイトルで純情な男心を鷲掴みにしておきながら全然面白くない期待外れのものだった時の気持ちは月曜日の朝並みの嫌悪感だ。
「『彼女と妹が俺を搾り取ろうとするという修羅場の話』はいアウト!アキラはこんなのも読んでるのか。一体どんな内容なんだ?」
ハズレを引かないように中身を少し読めばいいと思う者もいるだろう。しかし俺は中身を読まずしてタイトル、絵、あらすじだけで買うようにしている。決して中身は見ない主義だ。
「なんだよ、ただ主人公が強気なクラスメイトと妹にお金を取られたり扱き使われる話かよ。タイトルでちょっとドキドキしてたのになんか拍子抜けだな」
「デュンッッ!(ガッ)」
「なんで!?」
俺の拳がヤスの頬目掛けて一直線に飛んで行った。拳は寸分違わず頬に熱いキスをお見舞いしてヤスはダウンする。いくらヤスでも今のキス(渾身の一撃)を喰らって立つことはできないだろう。
「さっきから俺が思いふけっているというのになんだこいつは。しかも色んなところでシンクロしてるし」
しかし、あまりにも俺のエンドオブアース(笑)がクリーンヒットしすぎてヤスが動かなくなってしまった。いや、さっき立つことはできないだろうとか言ってたけどあれはカッコつけただけだし…。いやーどこかの男装執事もびっくりの威力だなエンドオブアース(笑)。
「おーい、ヤス。俺はこの本買って帰るがどうする?」
……返事がない、ただの屍のようだ。
返事がなかったので仕方ないから俺は屍を放置して店をでた。
店を出てすぐに店の中から「よくもやったなぁ!アキラァァァァァァァァァァッッッ!」という絶叫が聞こえてきたが俺はその日もうヤスに会うことはなかった。
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