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俺がアイツでいる理由。  作者: 高瀬 悠
第一章 託された願い
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一、託された願い【8】

「俺、だから?」

「そう。久しぶりに『友達』と呼べるべき人に出会えたからなんだと思う」

 寂しそうに笑みを見せるアレク。

「候補生同士だと、なかなか仲良くなり辛いんだよね。いつかどこかで戦わなければならない相手になるんだと思うと、自然と距離が空いたんだ。言葉が悪くなるけど、僕は正直、君達のいる校舎に行きたかった」

 その言葉は嫌味ではなく純粋に、カイルの心に流れ込んできた。

 カイルのいる校舎は、候補生から外れた生徒だけが集まる──いわば、落ちこぼれ校舎。思い出に残るのは楽しかった学校生活と厳しかった教練生活。

 その一方で、候補生達はその思い出が命取りになる。


 王の身を守る聖魔騎士。


 候補生のほとんどは聖魔騎士の称号が約束されている。卒業と同時に各国の王が実力を見て生徒を国に連れて帰り、王宮に配属する。仲良しセットお持ち帰りなんて話は有り得ない。隣の席に座っていた友が明日は敵。王の命を狙えば戦わなければならない相手となるのだ。友と戦うことをためらえば、味方や守るべき王を失う。

 卒業が近づくにつれ、候補席が空いたり、退学者が出たりするのはそれが原因だった。その重圧に耐えられた者こそが、心身強い聖魔騎士になれるのだ。


「あの……」


 カイルは萎縮しながらもそっと、口を開いた。

 機嫌悪そうな顔でアレク。


「普通に話してくれないか? 僕はそんなつもりで君に打ち明けたわけじゃない」


 カイルは戸惑いながらも少し、言葉を変えてみた。


「これから、どこへ?」

「わからない。でも、なるべく遠くに行きたいんだ」

「遠くへ行って、そこでいったい何を?」

「目的なんて無いよ。僕はただ、父の遺した言葉の意味を知りたかっただけなんだ」


 カイルは首を傾げた。


「言葉の、意味?」

「聖魔騎士とはいったい何だろう、と」

「…………」


 どう答えていいかわからず、カイルは俯いて黙り込んだ。


「世間一般で父は『王を守り通した偉大なる聖魔騎士』とうたわれている。でもその影で王は、誰も刃向かうことのできない父の圧倒的な力に怯え、疑心暗鬼から、僕達家族を塔に監禁して人質をとり、父の欲しい物はすべて与えて顔色をうかがっていたんだ」


 カイルは弾かれたように顔を上げた。今にも飛び出しそうに激しく鼓動する心臓。まるで脅しをかけられているようで、聞く度に怖くなってくる。


「な、なんでそんなことまで……俺に話すんだ?」

「君の率直な意見を知りたい」

「率直な意見?」


「僕が思う聖魔騎士は君と同じ、王を守る立派な職業だと思っている。しかし、父が言いたかったのはそんなことじゃないと思うんだ。

 敵国の放つ聖魔騎士と戦い続け、王を守って聖魔騎士に殺される。

 ──これって、何か矛盾していると思わないか?」


 カイルは返答に困り、再び顔を俯けた。

 それでもアレクは自問自答するように会話を続けてくる。


「本来、聖魔騎士は王を守るのが役目のはずだ。いくら王の命令だったからとはいえ、いったいなんで聖魔騎士同士で戦わなければならないんだ? 何がしたい? どうしたい? そうすることに何か意味でもあるというのか?

 こんな疑問の多い気持ちで聖魔騎士になんてなりたくない。だけど息子というだけで、実力も意志も関係なく周囲は勝手に僕を聖魔騎士にしようと祭り上げてくる」


「だから遠くに行きたかった、と。これがその結果だと言うのか?」


 アレクは無言で頷いた。

 あまり理解したくない理由に苛立ちながら、カイルは面倒臭く頭を掻く。


「なぜ俺なんかにそんなことを話すんだ? 別に俺が誰かにどうこう話すわけじゃないが……本当に、俺なんかにこんなこと話しても良かったのか?」


「後悔はしていない」


「俺とはたしか、初対面だったよな?」


 アレクは頷く。


「君が誰かに話せば、僕は殺される」

「脅しているのか?」

「ただの結論だよ。僕はどっちでもいい」

「もっと自分を大切にしようとか思わないのか?」

「思っていない」

「あぁそうかい」


 冷たく答えを返して、カイルはアレクから顔を逸らした。


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