終章、君が想う聖魔騎士【3】
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闘技場内に降り注ぐ太陽の光。
その光を受けながら、カイルは中心地へと歩き続けた。
観客席から沸き立つ興奮と熱気。
各方角の入場口から六人の候補生が姿を現す。
防具は一切身に付けない。制服姿のまま魔剣のみで勝負するのだ。
誰一人雰囲気に気圧されることなく、カイルを含む七人は真っ直ぐ、闘技場の中心地へと歩き続けた。
ある程度の距離を置いた円形を作り、一斉に立ち止まる。
場内に響き渡るアナウンス。
「始めてください!」
サイレンが響き渡り、七人は同時に魔剣を出現させた。
構える。
──が、カイルだけはくるりと背後へ向きを変え、すぐさま魔剣の攻撃を放った。
カイルの放った【水】の攻撃は、みるみるその姿を【氷】へと固め、やがて鋭利な氷柱となって観客席を襲った。
その観客席にいた候補生たちが一斉に魔剣を出現させ、防御体勢に入る。
しかし氷柱の向かった先は候補生たちではなく、その上──二階の来賓席に座る国王を襲った。
王を守っていた二人の聖魔騎士が反応する。
サッと二人同時に進み出て、魔剣を出現し、構える。
ある程度まで引きつけ【土】の攻撃でそれを迎え撃つ。
渦巻く二つの【土】が一つに重なり、石柱となる。
空中で、氷柱と石柱が激しく衝突する。
忘れられた歓声。
予期せぬ事態にアナウンスも実況を忘れている。
静まり返った闘技場に、ぶつかりあった二つの攻撃の硝煙が広がっていった。
攻撃が相殺して姿を消し、硝煙が晴れていく。
何が起こったか分からない観客席、そして出場者六人は唖然としたまま声を失い固まっていた。
そんな中、カイルは残り三本の魔剣を手中に出現させた。
大きく息を吸い込み、場内に響き渡るよう声を張り上げて叫ぶ。
「俺はシン聖魔騎士の息子だ!」
場内がどよめく。
動き出す、二つの国の聖魔騎士。
一つはラドラフ国。そしてもう一つこそが、恐らくエバリング国。
カイルは場内の全員に向け、叫び続ける。
「俺は将来、お前らの天敵となる存在だ!」
カイルは思った。
『有名なのは僕の父で、僕は有名じゃない』
『存在価値ってわかりますか?
シン聖魔騎士の息子。
それを保持し続けることが、エバリング国が大国でいられる理由なんです』
もしかしたらアイツもこの答えを探していたんじゃないか、と──
「潰しておきたいと思う奴は、今すぐ俺を潰しに来い!」
だから俺に命を託したんじゃないか、と。
各国の聖魔騎士達が王命を受け、動き出す。
一人。
また一人と。
戦意を帯びた目で聖魔騎士たちがカイルのいる場所へと向かって歩き始める。
場内の中心にいた六人の候補生はただならぬ殺気に巻き込まれまいと慌てて逃げ出していく。
次々に魔剣を構えて下りてくる聖魔騎士。
ゾク、っと。
カイルの背中に戦慄が走った。
前触れなく背後から飛んできた【水】の攻撃に、手中の魔剣が勝手に反応する。
持ち手が後ろにぐんと強く引っ張られ、魔剣がカイルの盾となる。
攻撃はカイルに触れる寸前で消滅した。
息つく間もなく連続して三方から【火】【風】【土】の攻撃が来る。
手に持つ三本それぞれの魔剣が反応し、盾となって攻撃を消し去ってくれた。
たしかに全ての攻撃を防ぐ魔剣は揃っている。揃っているのだが──。
何も無くなった空中を呆然と見つめ、
「…………」
もう一つ思ったこと。
それは、シン聖魔騎士の魔剣には謎が多いということ。
『魔剣はモノじゃない、生きモノだ』
この六日間の自主トレで、ようやく魔剣から攻撃を出せるコツを掴んだのだが、今こうして勝手に反応されると本当にこの魔剣が生きているようで、なんだか怖いものを感じてくる。
周囲を取り囲むように場内へと下りてきた聖魔騎士達は、一斉に魔剣を構える。皆で攻撃すれば勝てるかもしれないと考えたのだろう。
円陣型集中攻撃となって、様々な魔剣の攻撃がカイルに襲いかかった。