三、あの頃にはもう戻れない【17】
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『聖魔騎士という称号は与えられて成立するのではなく、あなたが正式にそれを受諾して初めて成立するものなの。
もしあなたに、本当に守るべき王ができた時──。
その時は王の前で片膝をつき、王の手の甲に唇を当て、そして忠誠を誓いなさい。
それが聖魔騎士として認められた者の証になるから』
※
(俺が守るべき王、か……)
浴室にもうもうと湯気が立ち込める。
シャワーを垂れ流した状態の中、その湯気で体を温めながらカイルは絞った制服を振り扇いで乾かしていた。
大きなクシャミを一つ。
鼻をすする。
「やばいなぁ。風邪ひいたかも……」
窓の外は今だ激しい雨が降っており、外気がひんやりとしているせいか窓ガラスが真っ白に曇っていた。
雨に濡れた体はまだ冷たく、一向に温まる気配はない。
体がものすごく気だるい。まるで体のあちこちに重石がくっついているようだ。頭もぼぅっとして、なんだか熱っぽい気がする。
「なんか俺、何かを間違ってねぇか? これ」
まだ乾かぬ制服を懸命に振り扇ぎ。
そして、力尽きる……。
全ての動きを停止して、カイルはがっくりと項垂れて呟いた。
「ほんと。俺、いったい何がしたいんだろう」
墓地でのことを思い出し、ため息をつく。
あれから本降りの中でしばらく泣いていたステイル教師だったが、こちらのことを心配してか早々に離れた。
そしてステイル教師所有のお抱え馬車で墓地を後にし、学校の手前で降ろしてもらったのだった。
学校から寮まで、ずぶ濡れで歩いて帰ってきたカイル。
その入り口で待ち伏せていたのが寮母だった。
忘れていた。
休日の外出時間の管理は寮母だ。
あっちの寮母は融通が利いて大目に見てくれていたが、こっちの寮母は時間に厳しい。
もう少し外出時間を延ばしておくべきだったと今更ながら後悔した。
寮母の説教がとても長かったことだけは覚えている。
でもまぁ、そのお陰で日用品のタオルを一枚ゲットできた。
大きなクシャミを二つ。
鼻をすする。
「あーもうダメだ。早くシャワー浴びて寝よう」
生乾きの制服を脱衣所に放り出し、カイルはすぐにシャワーを浴びた。
(俺、明日風邪かもな……)
──そして案の定。
カイルは翌日、見事に風邪をひいた。