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俺がアイツでいる理由。  作者: 高瀬 悠
第二章 俺の体を返してくれ
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二、俺の体を返してくれ【13】

※ お気に入り登録くださった二名の方、ありがとうございます。

  心からお礼申し上げます。


 馬車は町中のどことも知れぬ場所を走っていた。



 車内は向かい合わせとなっており、カイルは二人の男にそれぞれ腕を掴まれ、身動きが取れない状態だった。

 カイルは向かいにいる相手をただジッと無言で睨み続ける。

 向かいには男が一人と、さきほどの銀髪の男が座っていた。

 銀髪の男はカイルが抵抗しないと分かってか、もう銃を突きつけてくることはなかった。

「誰に『言の葉』を送るつもりでいた?」

 静かに問いかけてくる銀髪の男に、カイルはハッキリと言葉を突っぱねる。

「答えてやる義理はない」

 銀髪の男は鼻で笑う。

「『答えてやる義理はない』か。ずいぶんと大口を叩いてくれるな」

「俺をどこへ連れて行く気だ?」

「これからお前を王宮へと連れて戻り、正式にエバリング国の聖魔騎士とする」

 カイルは笑った。

「残念だが、俺を連れて行ったところで聖魔騎士は名乗れない。聖魔騎士の称号は、あの学校を卒業してからでないと与えられないからな」

 銀髪の男が呆れるように嘆息をつく。

「勘違いしてもらっては困るな」

「なに?」

「聖魔騎士の称号は王が与えるものであって、あの学校を卒業することが聖魔騎士の修了課程ではない。王が選べば、その者は聖魔騎士だ。──私の言っている意味が理解できるか?」

「つまり、卒業なんてどうでもいいと?」

「そういうことだ。我が国王がお前に聖魔騎士の称号を与えれば、お前は正式に聖魔騎士となれる」

「実力も──俺の意思も関係なく、か?」

「学校の寮にある荷物はすでにエバリング国へ運んである。あとはお前だけだ」

 見下されたもんだよな。

 これではまるで置き物扱いである。

(聖魔騎士を何だと思ってやがるんだ、コイツ……)

 カイルは沸々と込み上げてくる当たりようのない苛立ちに拳を握り締めていった。掴まれた両腕に自然と力が入っていく。銀髪の男を鋭く睨みながら、

「なるほどな。だからあの部屋には何も無かったってわけか」

「ようやく理解できたようだな。なら、このまま大人しく──」

 カイルは相手の言葉半ばで薄く口端を引いて笑った。

「それだけわかれば充分だ」

 言ってすぐ、カイルは振り解くように強く両腕を持ち上げ、そのまま両脇にいた二人の男の鳩尾みぞおちに素早く肘を叩き込んだ。

 二人の男は悶絶し、体を『く』の字に折り曲げる。

 間を置くことなくカイルは立ち上がり、速攻で銀髪男の隣に座っていた男に右フックを見舞った。

 油断もあってか、男はあっさりと一撃を受けて気絶する。

 そして流れるように銀髪の男にも拳を振りかざし、そして──振りかざしたまま拳を止める。

 今までの間もあり、銀髪の男は再びカイルへ銃口を突きつけてきた。

 素手と拳銃ではこちらに勝ち目はないのは明らかだ。

 銀髪の男は動じることなく冷静な口調で問いかけてくる。

「私の言葉には素直に従えと言ったはずだが?」

「撃てよ」

 カイルは鼻で笑う。

「──それが出来れば、の話だけどな」

 フッと小馬鹿にするように笑い返して。銀髪の男は突きつけていた銃を下ろし、懐に収めた。

「勘のいい奴だな。たしかにその気があればいつまでもお前を生かしはしない」

「俺が素直に従うとでも思っているのか?」

「どうやらお前を運ぶ時は意識を飛ばすぐらい無抵抗にしなければ無駄のようだな」

「勝手にやってろ。俺は何度でも逃げ出してやる」

 拳を引っ込め、カイルは方向を変えて馬車のドアノブに手をかけた。

 去り際に銀髪の男へと振り返り、言葉を残す。

「つまらないゴタゴタに付き合わされるのはごめんだ。──言っとくが、俺はアレクじゃない。それだけは覚えとけ」

 銀髪の男がククと笑う。

「覚えておこう」

 ふと、別の方向から呻くような声が聞こえてきて目をやれば、さきほど鳩尾に打ち込んでやった男が一人、苦しそうな表情で立ち上がってくる。

 カイルは慌てて馬車のドアを押し開くと、走る馬車から飛び降りた。

 上手く受け身をとって地面に転がり、すぐさま身を起こして馬車の行方を目で追う。


 引き返してくることなく走り去っていく馬車。


 カイルはホッと安堵のため息をついた。

「良かった……。正直、これ以上は逃げ切れる自信がなかったんだよな」

 学校の戦闘実技で習得した数々を心から感謝する。


 ──あ。


 学校という言葉で思い出す。

 時間を知ろうと夜空を見上げる。

 町の明かりで星はあまりよく見えなかったが、月の角度でだいたいの時間を知ることができた。

 カイルは月を眺めたまま頬を引きつらせ、げんなりとした声で呟いた。

「やばいなぁ。まだ反省文も書き上げてなかったのに……どうしよう」

 

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