表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺がアイツでいる理由。  作者: 高瀬 悠
第二章 俺の体を返してくれ
21/71

二、俺の体を返してくれ【2】

※ お気に入り登録してくださった方、ありがとうございます。

  心からお礼申し上げます。


(どう考えても無理だろ。俺が優等生なんてガラじゃねぇ)

 カイルは自嘲した。

「何を笑っている?」

「い、いえ、何でもありません」

 慌てて笑みを噛み殺す。

「アレク。お前は『自分で自分がわからない』と言ったな?」

「はい」

「わからない、か……」

 カルロウ教師は吐き捨てるようにそう言って、机上にペンを投げ置いた。

「まるで隣校舎のカイルとかいう堕落生徒みたいだな」

 ぎくり、とカイルは心臓が止まりそうになるくらい驚いた。

(まさかもう正体がバレたか?)

「これだけ私に迷惑をかけておきながら反省を口にしないその態度。あの堕落生徒にそっくりだ」

 事情を話そう。きっとこの教師なら理解してくれる。

 カイルはアレクと体が入れ替わっていることを説明することにした。

「カルロウ教師。実は俺──」

「悔しくないのか? アレク」

「……え?」

 何が? カイルは首を傾げる。

「あの堕落生徒と比べられて悔しくないのかと訊いているんだ」

「…………」

 カイルはがっくりと項垂れた。言葉を返す。

「はい。悔しいです」

「そうだろう」

 自分の正体に気付いてもらえなくて。と、内心で付け加える。

 カルロウ教師は机上に置いていた分厚いノートを軽くバンバンと叩いた。

「だったら、これだけの反省文が書けないはずがない」

「だから書けませんって。そのノート一冊分なんて」

 ノートはやけに分厚かった。いや、これはノートというより辞書といった方が正しい。

 カルロウ教師は首を振って言葉を続ける。

「いいや、お前なら書けるはずだ。堕落生徒と比べられて本当に悔しいと思っているなら、このくらいは書けるはずだ」

「いえ、書けま──」

「書け」

「はい」

 結局は気圧されてしまった。

 しぶしぶ辞書と言っても過言ではないノートを受け取る。

「提出期限は明日までだ」

「は?」

 何のイジメですか? これは。

 カルロウ教師はさらに眉間にシワを刻ませた。

「聞こえなかったのか? アレク。明日までに提出しろと言っているんだ」

「無理です」

 即答で断る。

 カルロウ教師の片眉がぴくりと吊り上った。

「無理だと?」

「はい」

「今まで出来たことがなぜ出来ない?」

 カイルは首を傾げた。

「今まで?」

「そうだ。今までは次の日にきちんと提出してきたじゃないか」

 どんな化け物だよ、アレク。

「俺には無理です」

「俺?」

「あ、いや、じゃなかった。僕には無理です」

 カイルは慌てて訂正する。もう無理だ、限界だ。頭のレベルが違い過ぎる。優等生なんて、とてもじゃないが演じきれる自信がない。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ