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俺がアイツでいる理由。  作者: 高瀬 悠
第一章 託された願い
15/71

一、託された願い【14】


 ◆


 長く、真っ直ぐに続く廊下を、ひたすら無表情で歩いていくラフグレ医師。

 行き交う人の姿はない。

 いくつもの同じような造りのドア前を通り過ぎ──

 

 ふと前方から、黒のスーツの上から白衣を羽織った四十代くらいの銀髪の男が歩いてきた。

 

 すれ違い様に、言葉を投げかけられる。

「今日も同じか?」

 ラフグレ医師はぴたりと足を止めた。

 ゆっくりと振り返る。

 長い銀髪を一つに束ね、スラリとした体格のその男は、足を止め、背を向けたままでラフグレ医師に言葉を投げ続ける。

「国王がお怒りだ。もうこれ以上は待てない」

 ラフグレ医師は微笑した。

「珍しいですね、フェイラ宰相。貴方のような階位ある方が、このような辺鄙へんぴな場所へわざわざ足をお運びになるとは」

 男──フェイラ宰相は射殺すように目を細め、厳格な表情をラフグレ医師へと向けた。

「国王の元に、あの事故の報告が届いた。『今すぐアレクを連れ戻して来い』との命令だ」

 ラフグレ医師は人差し指で眼鏡を押し上げ、位置を正す。

「なるほど。国王のご命令、というわけですね」

「こちらの提案した方法をすぐに実行しろ」

 ラフグレ医師は軽蔑するようにフェイラ宰相を睨んだ。

「あんな強引なやり方は、こちらとしてもお引き受けできません」

「一日だけくれてやる」

「彼の心など、どうでもいいと?」

「どうなろうと構わん。国王がお待ちだ」

 フェイラ宰相はきびすを返した。一言残す。

「やれ」



 

 ◆




 意外に今日は早く、ラフグレ医師はこの部屋にやってきた。しかも何だかいつもと様子が違うように思える。

 入っていきなり無言で、今もずっとカイルの隣に腰掛けている。

 

 しばらく様子を見ていたカイルだったが、いつまでもこんな状態が続きそうだったので、仕方なくこちらから声を掛けてみた。

「今日はやらないのか?」

「──え?」

 ラフグレ医師が不意を突かれたような驚いた顔を固めて、カイルを見る。

 カイルは肩を滑らせた。

「いや、『え?』って……。どうしたんだよ、今日は。いつもの質問はしないのか? 『調子はどうですか?』って」

「あぁ、忘れていました」

「わ、『忘れていました』はねぇだろ」

 カイルは首を傾げる。

「何かあったのか?」

 微笑してラフグレ医師。

「こんな僕でも、私情で何かと悩みが多くて……」

 と、重いため息を吐かれる。

 カイルは鼻であざ笑った。

「あんたでも、そんなことがあるんだな」

「一応人間ですから」

「い、一応?」

「えぇ。完璧ではない、という意味で」

「あぁそうかい」

 どうでもいいように流して、

「──で、やらないのか? いつものやつ」

「本当はこんなやり方、好ましくないんですけどね」

「はぁ?」

 カイルは意味を理解できずに数回瞬きをし、ラフグレ医師を見つめた。

 いつになく真剣で真面目な表情をするラフグレ医師。

「カイル、でしたよね? 名前」

 初めて名を呼ばれ、カイルは戸惑った。

「な、なんだよ突然……」

「今まで入院生活の中でずっと、何かおかしな点に気付きませんでしたか?」

 カイルは真顔できっぱりと答えた。

「全部が常に変だと思っている」

「今日は特別に、その全ての疑問にお答えしましょう」

「全ての……疑問?」

 カイルは首を傾げた。



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