第101話
それからの星の行動は早かった。すぐに駆け出した星はまず反対側の窓際まで行き、戸棚の上に置いてある真っ白なボストンバックの中から小さな(ペンライトのような)懐中電灯を取り出して、スイッチを入れ、明かりがつくことを確認して、(明かりはつけたままにしておく)次にバックの横に置いてある白い折りたたみ傘を手に取った。そして、そのまま動きを止めないで星は玄関まで直進する。
星が玄関のドアを開けたのと同時に部屋の奥のドアが開いて、澄くんが慌てた様子で部屋の中に飛び込んできた。(澄くんも来るのが遅い。でも仕方のないことなのだ。周囲にはおそらく海の魔力によって結界のようなものが貼られていたはずだから)
「星! 大丈夫! おっきな音がしたけど、なにかあったの!?」
「澄くん、ごめん! ちょっとだけ、荷物預かっといて!!」
星は止まらず、そのまま雨の中を全速力で駆け出していく。
それはかなりの速度だ。
一度、青猫を追いかけて青色の夜の河原の上を走った経験が星の中にまだ残っていて、(エンジンに熱が残っている)そのおかげで星の体の動きは今までよりも格段に良くなっている。
「星!!」
澄くんの声。(その声は明らかに星のことを心配している)
それでも星は止まらない。
星はそのまま海が消えていった方向にある暗い(雨の降る)冬の森の中に、たった一人で、傘もささずに飛び込んでいった。(星が手に取った傘は自分のためではなく、海のためのものだった)




