新たな妖魔を倒すには……?3
「私としては常磐君の動きをまず止めたかったんです。陽太さ……浅野様がその時、常盤君の前に居たら、妖魔はチャンスとばかり乗り移ってくるのかと」
「陽太君は名前呼びで大丈夫ですよ、清野さん。名前の方が私もしっくり来ますし。でも人に入り込んでいる妖魔って言うのは、そう簡単には出て来ないんじゃないでしょうか?陽太君の時も、冬賀さんの術は効いていそうだったのに、なかなか出なくて大変でしたから」
やっぱり痛い所を突かれた。妖魔が簡単に魂から離れるというのが、そもそも自分勝手な想像でしか無い。
妖魔を確実に魂から離れさせるには、その為の手段を考えなくてはならない。
「それにだな、妖魔の特性というのは、他にも無視出来ないものがある。妖魔というのは人の『魂』と言われる所にいるんだが、他の人へと移る前には、それを喰らってしまうんだ」
私も冬賀さんも、まだその現場は見た事がないけれど、確かにエンマはそう言っていた。まず寄生をしている魂を喰らってから、次の人の魂へ移動をすると。
「それって、僕の場合も助けてもらえなかったら、いつかは妖魔って奴に喰われていたって事ですよね?喰われたら……僕ってもうお終いでした?」
大変な事をヘラっと笑いながら尋ねる陽太さんに、こんな重たい会話の空気も少し軽くなる。
「そうだな。魂が妖魔に喰われるというのは、取り込まれるという事だ。魂は妖魔の体に取り込まれ、残された肉体は、次第に生命活動を止めてしまう」
「それじゃ、その常盤君の体からも、何らかの方法で妖魔を追い出さないといつかは……」
青木さんには、事態の深刻さがしっかりと伝わったみたいだ。
「そうなんです。だから常磐くんの魂から、何が何でも妖魔を追い出してしまいたいんです」
◇
「とは言え、魂から妖魔を追い出すにはどうするかだ……。俺だって、ああいった人の体に入り込める妖魔なんて、見た事は無かったからな。それなのに、何でこの短期間で2体目まで出て来るんだ?」
「私だって知りませんよっ。若干、私のせいだとか思ってません?」
冬賀さんは私と出会ってから、物事が起きる流れが変わったと言っていた。
本当にそんな事があるのなら、これから冬賀さんの仕事は間違いなく商売繁盛だ。だって私がいると人も集まるし、妖魔絡みのトラブルも多くなるって事だから。是非、私を大事にしてもらいたい。
「それこそ本人にはバレないように、お祓い的な事は出来ないでしょうか?常磐くんのご両親にお話して了承をいただけたら、妖魔に不意打ちで仕掛ける事も可能では?」
青木さんも、行き詰まった現状の中から、どうにか可能性を見つけようとしてくれている。
そうか、お祓いか……。何処まで効果があるのだろうか?
「そうだな。陽太君の時はそこまでの段取りは組めなかったが、今回はご両親の協力さえあれば、その形も考えられるか……。場を整えて、常磐君の体に直接術を仕掛けられたら、妖魔も流石に出てくるかもな」
「行けそうですか?社長っ?」
「まあな。話が通れば、前回よりは整った形で退魔を行えそうだ。ご両親に『お祓い』を依頼してもらえるなら、仕事としても受けられる」
「それじゃあ僕は、常磐くんのご両親と話が出来ないか、塾長に聞いてみます。とりあえず、僕が彼の両親に話があるという体にしておきますけど」
「あぁ、よろしく頼む、陽太君」
「冬賀さん、私も必要であれば『お祓い』の時は撮影で控えます。シャッター切る場所さえ教えてもらえたら、妖魔の姿を写真データに残せますから。万が一逃げられた時に術をかける、足掛かりになるかと」
「あぁ、さすが青木さんは気が回るな。有難い、よろしく頼むよ」
青木さん……頬の色が少し赤くなってるよ。
「アッキー先輩、分かりやすっ。僕もこれからは、冬賀さんっぽい感じを目指そうかな」
「陽太君には似合わないと思う」
青木さんのストレートな言葉に、さすがの陽太さんも驚き顔だ。
「先輩って、僕へは遠慮無いですよね。……でもそういう気安い関係って、ちょっと良くないですか?」
私も陽太さんには、重たい雰囲気は似合わないと思う。是非そのまま、軽い感じでいて欲しい。




