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赤い瞳の冥府の王は白き乙女を手放せない  作者: なかな


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光球と妖魔2



「よしっ!光球の威力も多すぎず少なすぎず、丁度良い感じで作れてたんじゃない?量の調整完璧だったよね、私」

 

 すんなりと思い描いていたような妖魔退治が出来たので自画自賛である。

 これならエンマも文句の付けようが無いだろう。


ーー「力を使う時は、先に一声掛けろと言ったはずだが?!」


 脳内に直接話しかけてくる念話の声は、まさに地獄の底から響いてくるかの如く低い。


「……すいませんっ、エンマ様。妖魔を逃したらいけないと思い急いだら、報告忘れちゃって。あの……でも、妖魔はしっかり仕留めましたし、球も一発しか使っていません」


ーー「そうか……それは良くやったな。だがな?何度も言うが、妖魔に挑む前には必ず私に念話しろっ!短くて良い、一言で良いから何か言えっ!私の気持ちも考えてくれ……」


 え?まさか私の心配をしてくれてるの?

 エンマってあんな感じだけど優しい所もあるから、もしかして……。

 

ーー「いきなり力を抜かれる私の気持ちも、考えてくれ‥‥妙な感覚なんだ、あれは」


「……やっぱり私の心配とかしないですよね、エンマ様は。 はぁーっ、分かりましたよ。これからはエンマ様の為に必ず、どんなに危ない状況だとしても、まずご一報してから力をいただきますから」


ーー「マコモは何を怒っているんだ?」


「怒ってないでしょう?」


 エンマとの会話は何故かいつもケンカ腰になってしまう。一体私は、何にそこまでイラついているのか?


ーー「怒っていない、か……。マコモのその態度は怒っている時のそれだぞ??幼い頃から見てきたから、それくらいは分かっている」



 エンマとは長い付き合いだから、お互いの性格はよく知っている。

 私の意地っ張りな性格だってエンマはお見通しだし、エンマが怒り口調だけど優しいのも私は分かっているのだ。


 でもエンマの優しさは私だけへ向けた特別なものではない。人々への慈悲であり特定の誰かが受け取るものではない。

 どんなに優しくされたとしても、それは私だから向けてもらえたわけではない。


「もう大丈夫、怒ってませんて。あ、でも1つエンマ様に伝えたい事があったんです。私、学校を卒業してもうJKという肩書きもないから、そろそろ就活しないと不味いんですよ」


 私はこの春に高校を卒業して自由の身となった。進学も考えたけど、そもそも何になりたいのかがハッキリしていない私は、選べないままに卒業の時を迎えてしまった。妖魔退治ばかりしてきたから、他への興味が薄れていたのかもしれない。


ーー「JK??あぁ、中等教育のことか。最近マコモが制服を着ていないのはそのせいだったか……。なんだ、制服を着ていたマコモは知らぬ間に見納めになっていたのか」


 エンマがJK好きとは初耳だ。制服を着た私には何度も会っているのに、その時のエンマは顔色も変えず、いつものツンとした表情だったはず。


「制服好きならお貸ししますよ、まだ捨ててないんで」


ーー「そういう趣向は、ない」


 エンマの返事に若干の安堵をしつつ、話を戻す。


「エンマ様、お気づきですか?私もう19歳なんですよ?この国ではもう立派な成人です。それに学生でも無くなったんで就活なんです、就活っ」



 ◇



「私はこの世での生活のために、仕事を見つけなくてはなりません。お分かりですか?エンマ様」


ーー「あ、あぁ、心に留めておこう」


「なので妖魔退治の人員を増やしてください。私1人で請け負うと忙しくなって就活が出来なくなるので」


ーー「私の力を渡して無事でいるのはマコモくらいだ。他に適性のある人間がいるなら言われずともそうしている」


 私だけ無事って……ちょっと複雑。


ーー「それに妖魔退治をしている人間は、私の知る限り他にも居る。マコモだけが戦っている訳では無いから安心しろ。お前1人でやっていたら、現世は今ごろ妖魔だらけだ。フッ、1人で戦っているとでも思っていたのか?」


 脳裏にあの好戦的な赤い瞳で、あざける様に笑うエンマの姿が浮かぶ。


 く、悔しい……。それに恥ずかし過ぎる。

 本当に自分1人で妖魔を倒してると思ってたよ。考えが狭くて幼いのがバレバレじゃない?!

 

「エンマ様、念話をやめますね。何だかどっと疲れてきちゃったので……。他にも妖魔を倒せる人がいるなら良かったですよ、本当に。それでは……」



 しばらくエンマとは、話をしたくない。

 19歳の私は大人で成人だとエンマに主張しようとしたのに、実際は視野の狭いお子さまだとバレてしまった。

 エンマは何歳だか知らないけれど随分と大人なのだろうから、きっと、今の私の気持ちなんて分からない。

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