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時を継ぐ猟犬たち

北斗打撃群の存在が世界に露見し、各国が日本へ凄まじい政治的圧力をかけ始めている中。

 S.O.D.U.(戦略海洋防衛隊)は決して足を止めてはいなかった。いや、むしろ日本の広大なEEZ(排他的経済水域)と領海を完全に掌握するための「次なる手」を、すでに海へ放っていたのである。




 荒れ狂う冬の北海道沖、オホーツク海。

 流氷が浮かぶ過酷な海域を、一隻の異形な艦影が波を切り裂き、音もなく駆け抜けていた。

 船体が三つに分かれた三胴船トリマラン構造。


S.O.D.U.が極秘裏に量産化していた、

のづき型沿海域制圧艦のネームシップ『LCS-X01 のづき(野月)』である。


 かつて帝国海軍において、盾となって味方を逃がし、単艦で敵艦隊に突撃した伝説の駆逐艦「野分」と「初月」。その二隻の魂を掛け合わせ、防空に秀でた秋月型駆逐艦の正統な系譜として名付けられたこの艦は、まさに日本の海を護るために生まれた猟犬だった。


 かつて米海軍が開発したインデペンデンス級沿海域戦闘艦は、アルミ合金の腐食や荒波での船体疲労など多くの欠陥を抱え、「失敗作」の烙印を押された。



 しかし、S.O.D.U.の技術陣はこれを諦めなかった。それを可能にしたのは、

偉大なる礎――テストベッド艦『DDG-X02 ときつかぜ』の存在である。


 彼女が身を削るような限界テストで収集した膨大なデータが、高速航行時の波の抵抗、極限のステルス性を維持したままの装甲材質、そして何より「悲鳴を上げない強靭な船体構造」という、本来なら矛盾する要素を完璧に調和させたのだ。



 北海道、本州、九州、沖縄。

 広大な日本の海をブロック分けし、それぞれの海域に配置された『のづき型』の猟犬たちは、波のノイズに紛れる極限のステルス性と、いかなる不審船にも即座に追いつく機動力で、今日も日本の海を睨みつけていた。





 一方、太平洋のど真ん中。

 旗艦である原子力空母『こうよう』の司令部壕にて、天城少将と如月二佐がホログラム海図を見下ろしていた。

 海図上には、日本周辺を哨戒する『のづき型』たちの光点が、頼もしく瞬いている。


「『ときつかぜ』の残した遺産が、こうして日本中を護っている。我々は彼女に、幾度となく助けられるな」


「ええ。各エリアの『のづき型』部隊から、不審な外国艦船を計4隻、EEZ外へ“丁重に”追い払ったと報告が入っています。世界中が我々に注目し、隙を窺っている今、彼らのような小回りの利く番犬は必要不可欠です」


 如月の報告に深く頷きつつ、天城は海図の別の地点――自分たちのすぐ後方を進む、巨大な影を指差した。


「世界中が我々を血眼になって探している。呉や横須賀の港は、すでに各国のスパイとメディアのカメラで溢れかえっているだろう。もはや、容易には帰港できん」


「問題ありません。我々には、世界一頼もしい『縁の下の力持ち』がついていますから」



 『こうよう』の後方、およそ二海里。

 そこには、レーダー波を乱反射させる鋭角的なステルス装甲で全身を覆われた、異様なまでに巨大な艦が追従していた。


 S.O.D.U.所属、

風早かざはや型特務補給艦『AOE-X01 はやすい(速吸)』。

 通常、補給艦は非武装で鈍足な「弱点」とされる。

 しかし、かつて帝国海軍で唯一武装とカタパルトを持っていた異端の給油艦の名を受け継ぐこの艦は、常識の枠に収まらなかった。単独で敵の対艦ミサイルを無力化する高度なレーザー防空システムと、打撃群の全艦を養って余りある莫大な弾薬・燃料・物資をその腹に抱え込んでいる。

 この「見えざる命綱」が伴走している限り、北斗打撃群は港へ戻ることなく、太平洋上で無限に等しい作戦行動を継続できるのだ。


「全艦、警戒態勢を維持しつつ補給フェーズへ移行。……今日も我々日本の海の為に。」

改インデペンデンス級/のづき型沿海域制圧艦『LCS-X01 のづき』

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