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敷き込んだ手の痺れの様に

作者: 黒楓
掲載日:2025/10/20

 悪い夢に魘されて(うなされて)目が覚めた。


 弄って(いじって)いてそのまま寝落ちしてしまったのか……スマホが首の下あたりに転がっている。

 それを拾い上げようとしたら、右手が体の下に敷き込まれていて……痺れて指が動かせない。


 そう! 右手はビリビリとして感覚が無く、オレの目にはまるで不格好なグローブの様に見えてしまう。

 そんな右手を()()()()()()()()左手の指で……窓の外のネオンの明かりを頼りに……()()()から“型抜き”するかの如く、なぞってみる。


「このまま、指が動かせなくなったらどうしよう?」


「そんな事は無いさ! 少し耐え忍んだら元に戻る」


「でも、そんな保証は無い!」


「保証は無くとも、経験で分かる!」


「でも! こんなにも痺れて感覚が無いんだ!」


「だからどうだと言うんだ?! たかが右手くらいで…… お前、自分の置かれている状況を忘れたのか?!」


 ここまで自問自答して……オレは自分を“取り戻して”しまった。

 どうしようもなく悲惨な自分を……


 オレは親の『借金のカタ』にオレオレ詐欺の“かけ子”にさせられてしまった。


 ()()()()()()()()()債権者から日々突き付けられる恐ろしい額の利息!!

 そこから逃れる唯一無二の方法が……()()()()()が関わっているオレオレ詐欺の“かけ子”をやる事だった。


 オレは……ズラリと“ブース”の並んだ“かけ子”の()()の中で、こう叫んでいた。


「どうしようも無い借金を負ってしまった!! どうかどうか助けて欲しい!!」

 これは真実の叫び!!


 ただ、叫ぶ相手が“非道な”実の親では無く……自分の息子の心配をする“善良”な親達であると言う事だ!

 だからオレは二重三重に泣けてしまって……その“叫び”が相手に届いてしまい、結果的にお金を引き出せた。


 ひょっとしたら……その中の一人くらいは()()()()()()()()()()()()()……騙されてくれたのかもしれない。


 でも、それも……最初だけの事。

 物事の要領を掴むと心は失われる。


 今のオレの心は……この『感覚が失われた右手』と全く同じで……


 このタコ部屋で……いつか死んでいくより先に……


 心の方が完全に死んで無くなってしまうのだろう。



                      

                          <了>



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― 新着の感想 ―
まだそういった罪悪感が心のどこかにあるだけマシだと思えてしまう事が悲しいです。 いつまで経っても無くならない特殊詐欺。 最近ではこの物語のように、特殊詐欺に関わる人たちも首謀者から脅迫されている、言わ…
何とも悲しくやり切れない気持ちになってしまいました……  (´;ω;`)
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