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RIVER-SIDE-CAFE   作者: 麗 未生(うるう みお)
33/40

第33話 誤解

分かってもらえない――(啓介の場合)

「あなたをストーカー規制法違反の容疑で逮捕します」


 今朝、夜勤を終えてアパートに帰ったところ、いきなり現れた刑事らしき男が逮捕状を見せながらそう言った。訳が分からない。まったく身に覚えがない。俺には正真正銘の彼女がいる。いったい誰にストーカーをしたというんだ。


 だが警察は、俺の言い分に耳を貸すことなく、そのまま連行した。これって警察の横暴じゃないか?俺の職業は警備員。常に人を守る仕事をしている。そんな俺が、ストーカーなんて愚かな真似をするはずがない。それなのに、まさか逮捕されるなんて――。何かの間違いだとわかっている。だが、それをどう証明すればいいのか。


 ……どうやら、俺は誤解されやすいらしい。昔、愛した彼女のときもそうだった。俺は仕事が忙しくて、ゆっくりデートする時間がなかった。それでも、ほぼ毎朝顔を合わせていた。でも、朝だけじゃ足りないと彼女は思ったのだろう。怒らせてしまったかもと気づいて、俺はいつもと違う時間に彼女に会いに行った。


 だが彼女は、俺の顔を見るなり逃げようとした。何か、誤解が生じている――そう思った。もしかして俺が浮気でもしていると疑っているのか? 俺は、どれだけ彼女を愛しているかを、ちゃんと伝えなきゃと思った。それがまさか、あんなことになるなんて――。


 本当に、不幸な出来事だった。まさか、あんなに怒っていたなんて。でも、そんな彼女を見て、俺は嬉しくなった。だって、会えないことに怒るってことは、それだけ俺を想ってくれていたってことだろ? そんなに俺に会いたがっていたなんて――。嬉しくて、機嫌を直してもらおうとしただけなのに。どうして、あんなことに……。


 あれは彼女が悪い。俺の伸ばした手を、あんな風に払い除けようとしなければ――落ちることもなかったのに。俺の手を取っていれば、そうしていれば、落ちることも無かったのに。そうしたら今も俺たちは幸せなままだったのに。あんな結果になるなんて、想像もしなかった。目の前で彼女に死なれるなんて、これ以上の悲劇があるだろうか。


 俺はショックで、しばらく誰とも付き合えなかったんだ――。


 そんな俺を慰めてくれたのが、今の彼女だ。彼女はいつも優しい微笑みで、俺を包んでくれた。一目見て、俺のことが好きなんだと分かった。前の彼女と少し雰囲気が似ているが、それは仕方がない。男っていうのは、自然と似たタイプに惹かれてしまうものだから。


 ――ああ、そうだ。彼女に証明してもらおう。俺が誠実な男だってことを。それなら警察だって、俺の人間性を理解してくれるはずだ。


「彼女を呼んでください。俺がそんなことをする人間じゃないって、分かりますから」

「彼女?」

「はい。彼女なら俺のことをよく知っていますから」

「分かった。じゃあ呼んでやる。その“彼女”とやらの身元を教えろ」

「身元って?」

「どこの誰か分からなきゃ、呼べないだろ」

「……嫌だなあ、俺はストーカーじゃないんですよ? そんなの知ってるわけないじゃないですか」

「彼女なんだろ? 付き合ってるなら、普通は知ってるはずだ」

「俺たちは、そういうんじゃないんです。心で繋がってるんです」


そう言った瞬間、刑事たちの眉間にしわが寄った。本当の愛に、身元なんて必要ないのに。そんなことも理解できないなんて、みんな、俗物だ。

 

「だいたいね、ストーカーされてるのは俺のほうなんですよ」

「……は?何を言ってる?」

「最近、ずっと誰かに付きまとわれてるんです。いつも俺の背後に足音がするんですよ。気味の悪い足音が、四六時中ずっとついてくるんです」


そう言った瞬間、不意に冷たい風が身体をすり抜けた。ゾワッとした。


「どうかしたか?」

「なんか……寒気が……」

「お前がストーカーした女の恨みじゃないか?」

「バカなこと言わないでください。俺は本当に……そうだ! あのカフェのマスターなら、俺がどんな人間かよく知っている。俺の話をいつも聞いてくれてた。彼女のことも、マスターには話してたんです!」

「どこのカフェだ?」

「どこの……?」


(あれ? あのカフェって、どこにあったっけ……? 仕事の帰りに寄ってたはずだけど……何だろう、モヤがかかってるみたいだ。確かに通ってたはずなのに……)


 そのとき、目の前に黒い影の“手”が現れ、俺の首に伸びてきた。


――息が……できない……。


「おい、どうした? おい! おい!」


 ――そういえば、あのカフェのマスター、なんか言っていたな。


「もうじき……連れて逝かれますよ」

(ん? 今の声は――あのマスターか?)

 

どこに――連れていかれるんだ……?



                       終


お読みいただきありがとうございます。

こちらは短編連作となります。

こちらのお話しは第5話「彼女」、第20話「疑惑」、第22話「私を殺した男」、第28話「足音」と繋がっています。

また第7話「視線」、第9話「人影」、第14話「罪の意識」、第19話「偶然」、第32話「何もしていない」と関連があります。


合わせてお読みいただければ幸いです。

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今後ともよろしくお願いします。

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