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終末世界の侠盗物語 聖女の呪縛、屈辱の安寧  作者: ?がらくた


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第11話 嵐の前の夜の語らい

作品に目を通していただき、ありがとうございます。

作者のモチベーションと、作品を継続するか否かに関わるため、よろしければ評価、ブックマーク登録、お気に入り等お願いします。

夜になると獣人は宿屋から退出し、フランの自宅へ急ぐ。

彼女にはすぐさま治癒が施され、数日すれば元に戻ると診断されたようだ。

しかし負ったのは、肉体的な傷だけではないだろう。

彼女に寄り添ってやりたい。

家の扉を叩くと


「いいの、ボーガード? 宿屋は」

「……あんな事件があって心配になって。迷惑だったチュ?」

「ホント、事前に連絡してよね……お陰で貴方の分の食事も用意しなくっちゃいけないもの」


柔和に微笑み彼女は台所に立つが、まだ痛むのか時たま頬を抑えた。


「オイラに任せろっチュ。一人旅で自炊してたから大丈夫っチュ」

「そう。ならお願いしようかな。でも毛とか入らない?」

「大丈夫っチュ……たぶん」


啖呵を切ると天井から吊るされた、彩り豊かな具材を手に取って彼は手際良く刻む。

その様子に彼の言葉が、ホラではないのを悟るように呆ける。

切ったものを鍋に入れ、蓋を閉めると


「外で涼みながら話さない? 出来るまで、まだ時間がかかるから」

「うん、何して暇潰しするっチュ?」


促され、獣人が外に連れ出されるや否や


「ねぇ、屋根の上にいかない? 夜空が綺麗だから」


空に散りばめられた輝きを眺め、彼女は云った。

梯子をかけるとこなれたように登り始めた。


「さては何回もこんなことしてるっチュ。悪い聖女っチュ」

「でも今日は君と一緒。手癖の悪い義賊さん」


横に座ったフランは、気恥ずかしさを隠すように髪を掻き上げた。

両親はいないようなので、ずっと独りで星を見てきたのだろう。

今までも今日のような災難に見舞われることは、多々あったはずだ。

彼女の心情を慮るあまり、ボーガードは顔を覗き込む。


「独りは辛いっチュ? オイラの家族は弄ばれて亡くなったっチュ。フランの親ももしかして……」

「……ち、近いよ。私の両親の死因は事故だから。恨む相手なんていないの」


そっぽを向く彼女に、獣人は首を傾げた。

気に障ることでもしたかと。


「そ、それにしてもボーガードは大変だね。貴方にとっての希望は七帝を倒すことなのかな?」

「そうっチュ。フランにはあるっチュ? 生きる希望」


訊ねると彼女は顎に手を当てた。

暫くすると脳内から引っ張り出した文言を、つらつらと吐き出す。


魔物変異恐怖症メタモルフォビア、魔物の飛来、シュプリッター七帝の脅威は問題だけど。何よりも黒の城から唯一生き残った英雄クロード様は、戦意を喪失してしまった……絶望の中にも希望があれば、人は戦えるはず。私が村の人の為に尽くすのも、そんな感情からくるものなのかもしれないわね。ボーガード」

「……まだ若いのに立派だっチュ。オイラは他人なんて考える余裕もないっチュ」


復讐に生きた彼にとって、フランは瞬く星のように眩しかった。

怒りを手放し赦す道を、人々に尽くす道を選ぶ強さが。


「ううん。無力な私なりの七帝への悪足掻きだから。それに―――」


一呼吸置き


「私にしか救えないなんて言葉は烏滸がましいけどね、ボーガード。でも村の一人でも助けられたら、私のやることにも意義があると思うの。そう思わない?」

「一人でも多くを救いたい。だからあの男にも、怒らなかったっチュ?」

「……かもしれないね」


獣人との語らいで、自らの信念を新たにしたのだろう。

彼女は満足気に微笑し、頬を赤らめた。

だが彼は、ふと沸いた疑問をぶつけずにいられない。


「魔物になる奇病の蔓延や七帝の支配。この大陸の未来は暗いかもしれないッチュ。フランがいたら村の人々も安心できる。でもフランはいいっチュか? フランはそれで幸せなんでチュか?」


彼の問いに俯き、フランは黙り込む。

問題がまた起こらないとも限らない。

答えに詰まるということは、悩んでいるではないか。

そこには聖女としての彼女ではなく、等身大の少女がいた。

沈黙が支配した寒空の下で、真剣な話題の最中だというのに彼は尿意を催す。


「これは我慢できそうにないっチュ。ちょっと用を足しにいくっチュ」

「あ、うん」


梯子を降りて彼は彼女の家へと用を足しに戻る―――瞬間


「馬鹿な小娘だ。お飾りの聖女とは、的を射た比喩だなぁ。ワッハッハ!」

「そうですねぇ。まだまだ利用できますよ、あの娘御は」


教会の近くを通り過ぎ、何者かがフランを嘲笑う。


(こ、これは聞き捨てならないっチュ。でもオイラがいくのは悪手っチュ)


今すぐにでも飛び出したい気持ちを理性で押し殺し、ボーガードは聞き耳を立て、会話を盗むのだった。

作品に目を通していただき、ありがとうございます。

作者のモチベーションと、作品を継続するか否かに関わるため、よろしければ評価、ブックマーク登録、お気に入り等お願いします。

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