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カワノナリタチ  作者: LLX
9/23

9、ミズ (ウ)

半分水に溶けてたゆたっていると、ただ雨の音だけが死んだ木の板にバタバタと騒音となって降り注ぐ。

ここのところ、ずっと風が強くてユラギカゼの姿を見ない。


さびしい、

さびしい、


僕は彼のおかげで、元に近い姿に戻り、それを維持していた。

ユラギカゼは風の強くない日にしか来られないけど、友達も連れて外の様子を教えてくれる。

僕は彼らが来るときが楽しみで、板の隙間から空を眺めていた。


雨がどんどんひどくなって行く。

僕は1人になってからは、吐き出す水の量をまったく調節しなくなっていた。

水脈の量が増えると、どんどん吐きだして行く。

ハジマリノキミがいた頃は、キミを壊さないように耐えて水を押さえて流していた。


イタミビトは、少しは困っているだろうか?

僕は指を1本水に溶かして水路に送り込んだ。

激しい流れの奥で、水はあふれ、イタミビトはひどく慌てていた。


どうするのか見ていると、イタミビトは、激しく流れる水路を調整し、あろうことか少し離れた隣のハジマリノキミに流しはじめた。

隣のアジロノヤマミズノカミは僕より若く大きくて、水量がただでさえ多い。

ハジマリノキミは沢山の水を強いられ、苦しんでうねり狂う。

水はにごってハジマリノキミの悲鳴が轟き、アジロノヤマミズノカミの怒り狂う声が聞こえる。


ああ、本当に、本当に、狂いそうだった。


僕らはイタミビトにこの地を荒らされ、もう、もう、


狂いそうだった。


ヤマノカミが、あたりを真っ白にして泣き始める。

僕は、僕は、怒りの中で水を吐き出すのをやめて身体の中にため込んだ。


突然流れなくなった水路に、人間たちが慌てはじめる。

アジロノハジマリノキミは身体が壊れて水が八方に流れ、死にかけてアジロノヤマミズノカミは地響きを上げて泣いていた。


もう、僕らは限界だった。

僕らにみんな、言葉はいらない。


アジロノヤマミズノカミも、水を流すのをやめた。

ハジマリノキミを抱きかかえ、怒りで山がメキメキとヒビを入れた。

もう、僕らはそれでいいと思った。


そんなに欲しければくれてやろう。

お前達だけの水を。


水と一緒にここを去れ。


僕らの苦しみを。この苦しみを。


最後に僕らは、この苦しみを耐えよう。


苦しくて、苦しくて、水を、


ためこんで、ためこんで、ためこんで、

山が膨らむほどにためこんで、


そして、


それは一気に崩壊した。

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